悪魔の嘘
第三試合の相手は魔法使いだった。
俺は始まりと同時に光属性魔法のライトアップを撃ち、目眩ましをする。
うん。めちゃくちゃ眩しい。
もちろん状態異常魔法のフラッシュとは違うので、自分にも喰らう。
目を土の生活魔法で覆ってる俺ですら眩しいのだから、相手にもかなり効くだろう。
予想通り、相手は目をやられ隙だらけだったので、こんらん治しを付加させた突きで勝利する。
うん。楽だな。
観客もフラッシュだと勘違いするだろうし、変な疑問も生まれない。
☆
「優勝者!フロイト!」
この戦法で順調に勝ち進んで、俺は優勝した。
状態異常魔法はかなり有効。
まあ、俺のは状態異常魔法じゃないから自分にも食らうけど。
「おめでとう。フロイトくん。」
闘技場を出ると、イシズさんがいた。
あとで聞いた話だが、どうやら優勝候補だったらしい。相当な実力者だったようだ。
「まさか、状態異常魔法も使えるとはね。なぜ私の時には使わなかったんだ?」
俺は必死で考えた嘘をついた。
「もちろん使いましたよ。イシズさんに放ったのは、まだ使いこなせてない麻痺魔法だけどね。」
「なるほどあれはパラライズか。痺れる感覚はなかったが、そうだったのか。」
どうやら納得してくれたらしい。
チョロいな。
「でもあれほどまでに強いフラッシュが撃てるなら、私の時もフラッシュで良かったのではないか?」
うぐ、なかなかに鋭いな。
「いや、イシズさんは目が見えなくても戦えそうだったから..。」
見え透いた嘘でヨイショする。
「そうか。確かに私は気配を読めるからな!」
やっぱりイシズさんはチョロかった。
てか、気配を読めるのか!
もしかして、ホントはすごい人なんじゃないか?
チョロい人はすごいって誰かが言ってた気がする。
☆
「さて、優勝祝いに私が奢ってやろう!」
「いいんですか!イシズさんありがとうございます!」
イシズさんはとても良い人だった。
美人で性格も良くて剣の腕も強い。
まさに完璧美女だ。
病的にしつこいところはありそうだけど..
俺は鶏肉をかじりながら、気になっていたことを尋ねた。
「なんでイシズさんは、今日の剣闘大会に出たんです?これだけ小さい大会だと実力に合わないんじゃ..」
「たいしたことじゃない。小さい大会だと観客が集まらないからな。私は客引きとしていつも呼ばれるんだ。報酬も貰えるしな!」
といいながら、お金の入った袋を見せる。
....あれ?優勝賞金より多くない?
「ところでずっと気になってたんだが、最後に私を気絶させたアレはなんだ?魔法か?」
「杖術ですよ。俺の全力です!」
「嘘つけ!君の攻撃力で私が気絶するか!私を気絶させるくらい力を込めれば、その安物の杖なんてぶっ壊れるぞ!」
くそ、やっぱり誤魔化しきれないか。
チョロいからいけると思ったのに。
仕方ない、真実を話そう。
「あれは俺の回復魔法です。俺、回復魔法が下手くそなんで、相手を気絶させちゃうんですよ。」
「そうか、それはすまない。失礼なことを聞いた。」
やっぱり優しいなイシズさん。
美人だし、モテるんだろうな。
「いえ、いいですよ。実際便利ですし。」
まあ、今となってはかなり便利だ。
こんらん治し=気絶魔法だからな。
おかけで回復魔法は副作用付きだけども。
「はぁ、これで子供に負けるのは2回目だな。」
「え!そうなんですか!ちなみに1回目は?」
これは絶対転生者だ!
話を聞くと、イシズさんってかなりの実力があるのが分かる。
そんなイシズさんに勝つってことは転生者に決まってる。
どんなスキルをもってるどんなヤツか、やっぱり知っておきたい。
「でかい大剣が武器の剣士でな、名前はハルクっていって、年は君より2つ上くらいだろう。」
剣士か、スキルはなんだろう。
やっぱり補食か?補食はどんな職業でも便利だし..。
「ハルクは不思議な剣技を使ってきてな、たぶん異国の剣技だろう。それに剣自体も不思議だった。形が変わり的確に私を襲った。私の圧倒的な敗北だったよ。」
なるほど、武具成長か。
確かに剣士向けの超レアスキルだ。
不思議な剣技ってこともあるし、前世は剣道をやっていて相当な実力者なのだろう。
「私もあれから、ハルクを倒すために剣技の修練をして剣舞が使えるようになったんだがな。まさかまた負けてしまうとは、、」
「ははは、今度は魔法対策ですね。」
俺は苦笑いしながらそう応える。
といってもこれは生活魔法だからなぁ、状態異常魔法なら相手より魔力を上げるだけで効かなくなるけど。
「そうだ!これから稽古をつけてくれないか?フロイトくんの杖術は私がいままで見てきた中でもずば抜けているし。一年くらいは闘技場で生活するんだろう?」
稽古か、まあ確かに杖術の修練にもなるし、それくらいは良いか。
「分かりました。いいですよ。その代わりひとつだけお願いがあります。」
そうして、イシズさんにあるお願いをする。
俺はイシズさんの「なんでもするから」という言葉を忘れてはいなかった。