イシズ
どうやらイシズさんはなかなかの実力者だったようだ。
「八百長か?」とか「イシズは子供を攻撃できないのか?」など声が聞こえる。
確かに観客から見れば、いいところで膝をついたり肘を曲げたり、最後にはひとりでに短剣を落としていたのだから当然か。
ただイシズさんは生粋の負けず嫌いで有名であり、八百長にしては明らかにおかしすぎる(バレバレすぎる)ということで、話はまとまっていた。
「ふぅ。」
なんとか勝てたな。
でも、あの戦い方では確かに怪しすぎる。
今度は生活魔法で俺自身を動かす練習でもするか。
50Gを受け取り、訓練室へ向かった。
☆
俺が訓練室で身体を動かす練習をしていると、声をかけられた。
「そんなぎこちない動きで何の練習をしているんだ?」
イシズさんだった。
「あ、いや、これは、、」
「まあいい、それにしても先ほどは恐れ入った。何をされたのか全くわからなかったが君の技なんだろう。」
あ、まずいな、これは。
「ぜひ私に教えてくれ!種明かしだけでもいい!頼む!!」
うん。めんどくさい。
というか俺の切り札にするつもりだったから、種明かしはしたくない。
「あの、これから試合があるので。」
テキトーに流す。
「頼む!なんでもする!」
だが、これはなかなかしつこそうだ。
美女にこれだけ頼まれれば、流石の俺でも迷う。
でもなぁ、俺だけの切り札にしたいし....
「フロイトさん、お時間です。」
おおナイスタイミング!助かった!
俺はとりあえず、この場を切り抜ける。
あとで誤魔化す言い訳でも考えておこう。
しかし、自分を生活魔法で動かすのはかなり難しいな。
考えながら身体を動かすため、普段より圧倒的に反応が遅い。
これはボツかな..
いや、もうちょっと練習してみるか。
そうして、残念な顔をするイシズさんを横目に俺は次の試合へと向かった。