悪魔の剣闘士
「じゃあ、フロイト、タット、達者でな。タットにはもっと長く居てもらいたかったんだが、旅に出たいんじゃ仕方ないか。」
「うん。ボクはもっと外の世界を見てみたいんだ!」
6歳になった俺だが、回復魔法は一向に上手くならず、やはり教会を去ることになった。
タットも教会には残らず、旅に出たいと言って俺と同じくここを去ることになった。
「「神父さん、シスター、いままでありがとうございました。」」
そう言ってここを後にしようとしたが、神父に呼び止められる。
「フロイト!お前は僧侶だろう。これを持っていきなさい。」
「これは、杖ですか。」
「そうだ。僧侶は戦闘には向かないからな、まあ安物の武器だから構わず持っていけ。」
そういって、長さ120センチ程度の木の杖を貰った。
前世では合気杖の師範にまでなった俺だから、これは嬉しい武器である。
他にも数々の体術をやっていたが、杖術が一番しっくりくる。まさに僧侶っぽい。
「タットにはこれだな。」
タットは賢者なので本を貰っていた。
聖書には魔力を高める効果があるというが、タットの魔力からすると雀の涙ほどだろう。
「「お世話になりました。行ってきます!」」
「タット、お前はいつでも帰ってきて良いんだからな。」
おい!俺は帰ってきちゃダメなのかよ。
よろしければ俺を気遣え!
そんなツッコミも出来ないまま、俺たちは教会を去った。
☆
教会を去ることしばらくして、タットが声をかけてきた。
「フロイトくん。これからどうするの?」
「バイトって手も考えたんだけど、やっぱり闘技場かな。」
「闘技場!?フロイトくん大丈夫なの??」
「たぶん大丈夫だよ。死なないように頑張るさ。」
この世界では、6歳でお金を稼ぐ方法なんて限られている。
バイトをするか、闘技場の剣闘士になるかだ。
冒険者ギルドに入るには年齢制限があり、10歳にならないと入れない。
勝手に魔物を狩って売るのも良いのだが、子供相手では舐められ足元を見られてしまう。
「そっか、フロイトくんとはここでお別れだね。少しだけどボクが稼いだお金あげるよ。」
そういって1000Gを貰った。
おおタットよ、なんとも優しいやつだ。
「ありがとうタット。無一文だったから助かったよ。タットはこれからどうするんだい?」
「ボクは魔物を狩って素材を売ったり、即席回復屋をしながら旅をするかな。」
なるほど。
魔物を捕食してスキル集めをするのかな。
生活厳しそうだけど、何年後には有名になっているだろう。
「そっか、じゃあまた会ったらよろしくな。その時は1000G返せるよう頑張るから。」
「いいって、いいって!返さなくていいよ。じゃあまたどこかでね。フロイトくん!」
「おう!またな!」
何年も一緒に過ごしてきたが、タットは礼儀正しくていいやつだ。まあ、少しばかりエロい気もするが。
次会った時にはハーレムでも作ってるんだろうな、
うらやましいなぁ....「補食」
そうして、俺はタットと別れた。
☆
「え、剣闘士登録ですか?」
「はい!剣闘士登録です!」
「失礼ですが職業は?....僧侶ですか、わかりました。登録いたしますね。」
受付嬢に驚かれはしたが、俺は無事に登録を済ませた。
「いまから剣闘試合申請したいんですが」
「えっと、今日は剣闘大会があるので試合申請出来ないんです。」
そうか、今日は剣闘大会の日か。
剣闘大会とは、トーナメント戦で優勝賞金が出るという大会だ。
もちろん勝ち進むだけでファイトマネーは貰えるのだが、優勝賞金はとんでもない。
大会によっては、一年遊んで暮らせるほどの賞金が貰える。
「じゃあ、剣闘大会に申し込みします!」
「ええっ!?剣闘大会ですか!!まあ、今日は小さい大会だから大丈夫ですが....。わかりました。登録しておきますね。」
よし!無事に登録できた。
まあ、負けても良い勉強になるだろう。
俺には回復魔法があるんだから、多少のケガくらい簡単に治せるし....
いや、ちょっと不安になってきた。
しっかり鍛えたのは魔力くらいだし、俺ってかなり脆いかも....。
まあ、死なないよう頑張ろう。
そうして俺は剣闘大会に参加した。