フロイトと入学試験
「名前は?」
「フロイト。」
「職業は?」
「勇者です。」
「ほお....。では、あの的に向かって魔法を放ってみてください。」
試験監督から説明うけていると、別の列からざわざわと騒ぐ声が聞こえた。
タットが魔法を放ったのだろうか?きっとそうだろう。
「あちらの的です。お願いします。」
試験監督はその騒ぐ声も気にせず、職務を全うする。
先ほど、腐食の魔法で的が崩れてしまっていたので、新しい的が用意されていた。
「あの、波動剣でも大丈夫ですか?」
「波動剣では魔法の適性が見れないので、攻撃系の魔法でお願いします。」
「えっと、それじゃ、剣士や戦士ではこの試験に突破出来ないんじゃ....。」
俺の質問に対して、試験監督は優しく微笑む。
「この試験は模擬戦で点を取れない方々のために設けられたものなのです。なので、剣士や戦士の方々はこの試験を0点でも模擬戦で点を取れば大丈夫なんですよ。」
なるほど。
模擬戦では魔法職はかなり不利だからな。
するとこれは魔法職のための救済措置なのか。
「あ、じゃあ、俺0点で大丈夫です。」
「えっ?勇者であれば攻撃系の魔法も使えますよね?もしかして勇者ではないんですか?」
「いや、ちょっと攻撃系の魔法を使えない理由がありまして....。」
俺の攻撃魔法はファイアーボールですら危険だ。
こんなところではとてもじゃないが撃てない。
「そうですか。ではあちらへお進み下さい。」
そうして、特に理由も聞かれることなく、俺は模擬戦の試験へと進んだ。
まあ、勇者と嘘をついたと思われたのだろう。
一応、本当に勇者なんだけどな....。
☆
「えーっと、お名前は?」
「フロイトです。」
「職業は何かな?」
「勇者です。」
「おお!すごいね!もしかして大商人の子供だったりするのかな?」
そう優しく声をかけるこの人が俺の模擬戦の相手だ。
先生だからなのか、とても子供扱いしてくる。
「じゃあ、模擬戦を始めるよ。この空間魔法の外には出ないように気をつけてね。」
模擬戦では、頑丈な空間魔法が張ってあった。
これのおかげで、魔法を放っても外には漏れない仕組みなのだろう。
「じゃあ、始めるよ。」
先生がそういってコインを弾く。
床にポトッと落ちて、模擬戦が始まった。
――俺は杖を下げたまま、先生に向かって走る。
そして顎目がけて、一切の加減なく杖を振り上げる。
「おお!」
しかし、先生は嬉しい驚きの声をあげただけだった。
俺の杖を剣の腹で押さえ込むと、そのまま俺の喉目がけ突きを繰り出す。
たぶん、寸前で止めるだろうが、喉目がけて突くとは思わなかった。
イシズさんより強いな....。
これは俺も本気を出さなきゃ。
「えっ!!?」
雷の生活魔法を自身に撃ち込み、速度を上げる。
先生は俺の動きを予想にもしていなかったのか、今度はホントの驚きの声をあげた。
振り上げ・撃ち下ろし・払い上げ・突きを繰り出し圧倒する。
だが先生も負けてばかりじゃいなかった。
「おりゃ!!」
剣の腹を使った力任せの攻撃。
俺は先生に力負けして隙を見せてしまった。
「ハァッ!!」
さらに、先生はその隙を見逃さず俺に剣を振り下ろす。
「ぐわぁっ!」
――倒れたのは先生だった。
俺がわざと見せた隙にまんまと引っ掛かり、全力の突きが先生の鳩尾に入る。
勝負ありだな。
「まさか、負けてしまうなんて。」
先生が起き上がると、収納魔法から取り出したノートに何やら書き込んでいた。
たぶん、点数を記入しているんだろう。
「これで試験は終了です。結果は4日後になるけど、君の合格は確実だよ。」
どうやら俺は合格したようだ。




