敗北勇者は病室で
※注意※
ずっと暗い話です
冒険とか盛り上がりとかも無いです
ぶっちゃけ誰得です
勇者が魔王討伐に失敗した。
その知らせが国中に広まるのにそう時間はかからなかった。
多額の援助を受けて大々的に国を挙げて取り上げられた勇者の登場は、じわじわと国に侵食してくる魔物に疲弊していた民衆にとって、唯一と言っていい最後の希望だった。しかし、それから一年ほどたった頃に国から発表された簡潔な知らせは、国民の予想を裏切り、勇者への信頼を消し去るものだった。
曰く、仲間に裏切られて背後から刺された。曰く、魔王の力の前になす術もなく敗北した。様々な噂が尾ひれをつけて右へ左へと飛んで行き、酷い物になると彼の人格そのものを否定するような話まで持ち上がっていった。
ただ一つ、すべての話に共通していることは、勇者がまだ生きていて、どこかで保護されているという事だけだった。
◇
人工的な白い壁に囲まれた廊下を、白衣の男が歩いている。
等間隔に並んだ無機質な扉を横目に見ながら歩を進める男の手には、果物が入った小さなバスケットが提げられている。慣れた足取りで歩いていた彼は、一番奥の扉の前で止まって少しためらってからドアをノックした。
「どうぞ」
中から声が聞こえてから一呼吸置いてから、白衣の男は扉を開ける。
ベッドに横になっていた男は、白衣の男の姿を見るとにぃ、と笑って手を挙げた。
「よお。久しぶり」
「・・・ああ」
そこにあるのは、ずっと幼い頃から変わらないの友人の笑顔であり、敗れた勇者のくたびれた姿だった。




