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夏が過ぎて、一気に日が暮れるのが早くなった。少し前までは昼同然に明るかったこの時間でも、もうすっかり空は濃いオレンジになって、群青が見え隠れしている。
そっと息を吐いてみると、視界が微かに白く染まる。今日は冬並みの寒さだと今朝のニュースで言っていたっけ。
創立九〇周年を昨年迎えた我が校の鉄筋コンクリートでできた校舎は、外の冷気を遠慮することなく、余すところなく、校舎内に伝えてくれる。
いつもは校舎の隅にひっそりと佇む部室を好ましく僕であるけれど、この寒い日になるとその位置を、もしくは教室からの長い道順を呪わざるを得ない。
偏差値も倍率も普通の公立高校でありながら、全国有数の敷地の広さを誇る、らしい。校長がしきりに自慢しているので、きっと正しいのだろう。敷地が広い、つまり教室の数が多いせいか、そもそも変わった人が多いのか、部活の数が多い。これは他の高校に行った友人に言われたので確かだ。
サッカー部、野球部といった定番の部活から、果ては宇宙人研究部とかいう何を目的としているのか一切わからない――正確に言うとわかるけど理解したくないというか頭が痛くなるというか、そんな部活まで総数九〇ほど。三学年合わせて一五〇〇人という中々のマンモス校である。
小学校、中学校と運動神経が並程度しかないが故にあんまり運動を嗜まなかった僕が運動部に入るどころか入ろうとするはずもなく、ひっそりと穏やかに高校生活を楽しめる部活を探して入部したのだけど……。
正直半分後悔していて、半分満足している。
ようやく着いた。一階に下りて、廊下の奥まで歩いた先には目的の部屋がある。ドアの窓にはまるで中の様子を見られるのを嫌うように、無造作に切り取られた段ボールがガムテープで張り付けられている。
そこには几帳面な文字で『文芸部』と書かれている。