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002

目が覚めた。窓からは朝日の光が差し込んでいる。


あれから1日でも早く寝返りを出来るようになろうと、体を動かし始めて2週間経った。


初めの一週間はハイハイどころか寝返りもうてなかったけど、ここ数日いきなり寝返りやハイハイが出来るようになった。急に出来たものだから、母親もびっくりしていた。


だけど、一つ気になる事がある。それは違和感だ。手足を動かす時に少し抵抗を感じる。


最初は、まだ筋肉がうまく動かせてないからだと思ってた。ところが、日に日に動き易くなってる手足とは違って、その抵抗は変わらなかった。まるで、空気の中に何か別の物が混ざっているみたいだ。


ガチャ


「**-..ちゃ~ん。まんまの時間ですよ~」


少し間延びしたような声が聞こえる。おっと、朝ご飯の時間になったみたいだ。2週間で、この言葉だけはだいたいわかるようになった。ただ、僕の名前であろう発音はまだ聞き取れない。


ああ、早く言葉を覚えたい。そしたらここが何処だかすぐにわかるのに。


今僕がいる部屋は、子供部屋と言うやつだ。ファンシーな玩具類、ベビーベッド等があって、子供の為にある部屋だと感じさせる。ただ気になったのは、蛍光灯などの電気製品が無い事と、タンスやラックがアンティークみたいに精工で、古めかしい事だ。


ここは本当に地球なのかと、疑問に思う。まず、電気製品が無いことがおかしい。一部の発展途上国を除いて、電気の普及率はほぼ100%と言ってもいいだろう。そしたら、タンスやおもちゃみたいな精工で高価なものが子供部屋にある理由に説明がつかない。


と、いろいろ考えながら前方の柔らかい物を意識しないようにする。僕も健全な男子高校生だったから、見る分には... まあ、問題ない。だけど、それで食事を取るのは精神的にきつい。


5分くらいして食事を終えた。すると、


「 **-..ちゃ~ん。今日は*-.,*....-*...-**,--.-.*.....*.**よ~」


と、今世の母親がのほほんと笑顔で言う。そして僕を抱きかかえたまま、立ち上がった。


うん。何を言ってるのか全然わからない。


母親はそのまま部屋を出る。僕が居た部屋はこの家の1階にあって、隣の部屋にはリビングや食卓、キッチンなどがある。奥には階段らしきものが見えるから、2階もあるんだろう。


そしてリビングを通った母親は、玄関に向かった。


なるほど、出掛けるって事か。だとしたらここがどこなのかだいたいわかるかもしれない。母親はマイバックみたいなカバンを持っているし、買い物かな?


だとしたら、ここで使われている文字を探そう。何か新しい手掛かりがあるかもしれないし。


ガチャ


(おおっーーー!)


「あうーー!」


目の前の風景に思わず声が出てしまった。扉の先に広がっている世界を一言で表すと雄大だ。


「..***.*,*..*....'.*」


と母親が言う。何て言ってるのかわからないけど、どうやら"この景色すごいでしょう!"と僕に微笑みかけているみたいだ。


前を見ると、少し離れたところに町が見える。どうやら家は高台にあるらしい。町の向こうの草原と町から伸びる街道がはっきり見える。


ちなみに僕はベビーカーもどきに乗っている。形はほとんどベビーカーだけどタイヤがとても大きく、半径40cmくらいある。多分町まで続いてる悪路を進むためだろうな。


外は快適で過ごしやすい。季節で言うと春だ。日光がぽかぽかしていて気持ちいい。散歩や買い物にはちょうどいい気候だ。


5分くらい経って、町に着いた。町は石壁に囲まれている。なかなか立派な石壁で、2、3m位ある。門には衛兵っぽい人とその詰所があった。


「*..*.*.」


「*..*.**」


母親は軽く会釈をして、町の中に入った。


石壁や門番がいるってことは、この地域は危険があるのか?それなら普通簡単に入れないはずだけど... 。


謎に次ぐ謎で混乱している僕をよそに、母親はぐんぐん町の中を歩いていく。


いつの間にか母親と僕はある建物に来ていた。ここは八百屋みたいだ。りんごみたいな果物から、見たこともない毒々しい野菜まである。あれは食べたくないな。


店の中を見回すと文字らしきものはない。まあ最初だし仕方ないか。


しばらくすると、母親が店員らしき人を読んでブロッコリーもどきを指差し話始めた。


「...*'*..*..*.?」

「..*」

「**.*.*?」

「....*」

「...*..!」

「 ...**,.--.-**」


母親は値下げ交渉はが成功した様でニコニコしているし、店員もあまり気にした様子もなく、なんだかいい雰囲気だ。


その後も何軒か回って買い物をした。だけど、一向に文字はない。店の看板は全部絵になっている。これだと遠くてからでも何の店かわかるからいいけど、今はそれが恨めしい。


買い物が一段落して、母親が木陰のベンチで僕をあやしている。そんなことされても僕はちっとも嬉しくないよ、と言いたい。でもそれを指摘しようとしても出来ないからなすがままにされる。


すると、ベビーカーを押した女性が話しかけてきた。それに対して母親は笑顔で迎える。ママ友か?


ママ友が連れている子供は僕と同じくらいの年齢で、何故か髪は白…いや銀髪だ。目で何かを見ているみたいで、ぼーっとしている。


性別は... どっちだろう?僕もその子も生後3か月くらいで、ぱっと見じゃあ判断出来ない。


あっ、こっちを見た。愛想なく僕をじーっと見ている。無愛想だなぁ。笑ったりしないかな?このくらい年だと、笑ってくれるのか可愛いんだけどなー。


その後20分くらい母親たちが喋ったあと、僕と母親は家に帰った。結局文字は見つからなかった。


また母親門番に会釈して町を出る。町を出るとまずそびえ立つ山々が見えた。ここって本当に絶景が多いな。しかも探したらもっとありそうだし。


その山の麓には、僕の住んでる家が見える。大きさ的にはアメリカの郊外にある家を想像してほしい。近づいていくと、出掛けるときには目の前の景色に夢中で見えなかった柵で囲まれている庭が見えた。家にあった広さで、走り回ったりしても十分広いだろう。実際、花壇が多くあって色とりどりの花が咲き乱れている。


それにしても、今日は手掛かりがなかったな。町になら文字とかあると思ったのに。


残念がっていると、やっと家の前に着いた。ふと柵を見ていると出入り口の所に何か書かれていた。


そこには日本語や英語とは程遠く、点字のようなミミズのようなものから書かれていた。ただ僕には"それ"を

読むことが出来た。


"グライド"と。

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