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初投稿です。よろしくお願いします。
雨が降っている。そこを僕は傘を差して歩いている。僕の名前は、鳴海 紲斗と言う。17歳の高校2年生で体格は小柄だ。顔は中性的で、よく少女や中学生に間違えられる。
「あー、もう最悪だ」
僕は雨が嫌いだ。じめじめするし、ちょうどあの日も雨だった。
僕は今駅前に向かって歩いている。すると、
「おーい!紲斗ー!」
後ろから大声が掛かった。振り向いてみると、身長180㎝くらいのスラッとした少年が近寄って来た。
「天、僕が雨を嫌っているのわかってるだろう?」
「いやー、ごめんごめん。天気予報では晴天って言ってたんだけどね」
そう言った少年、三樹 天は高校2年生で僕と幼なじみで、顔はモデルでも出来そうなくらい美形だ。しかし、これだけのルックスでありながら浮わついた話を聞かない。何故なら、
「だけど、今日は“ゼロ・サーガ マスターオブマジック“の発売日だろ?紲斗も楽しみにしてたと思うんだけどなー」
“ゼロ・サーガ“とは2038年に発売されたVRMMOだ。VRバーチャルリアリティーはナスカ社が開発したヘッドギア:NEW WORLDを使って行くことが出来る。VRでは様々な世界があり、“ゼロ・サーガ“はその初期に発売された。プレイヤー数は1億人以上いる。今回発売されるのは追加パッケージの第4弾だ。
そして僕らは寝るまを惜しんで“ゼロ・サーガ“をしている。
特に天は世界ランク5位で、僕は9位だ。だから天は恋愛事に関しては全て断っている。曰くプレイする時間が減ると言って。その分"ゼロ・サーガ"の中で天の人気は凄まじくファンクラブまであるくらいだ。
「今回はジョブの天鱗師と賢者、それにオリアナ大陸が追加しただけだでしょ?」
「はぁー。本当に紲斗はアップデート直後のガチャイベントにしか興味ないな」
「だって、あの世界にはない装備や魔法が出るんだ。引かない訳がないよ」
そう雑談しながら歩いていた。目的のゲームショップまであと少しだ。
「そういえば、紲斗はどのくらい魔力たまった?」
「んー。転移するのにあと10年かかる位だよ」
「なるほど。俺は12年かかる計算だ」
僕らはゲームショップと目と鼻の先にある交差点まで来た。雨が降っている所為なのか交通量が多く、ひっきりなしに車が通っている。雨は先ほどより強くなっていて、一日中止みそうにない。
と、その時1台の車が暴走して僕の方へ向かってきた。
「危ない!」
と、天が僕を安全な方へ引っ張る。しかし、
パキン
と見えない障壁が僕と天を遮る。
「紲斗!魔法を使うんだ!」
《肉fuhey化iggklは魔力を使用する事ができません》
「だめだ!使えない!」
僕の周りは白っぽい壁がある。どうやらこれが移動、ひいては魔法を阻害しているらしい。そして、
キキィィィィィィーー
ドン
「紲斗おぉぉぉぉぉぉぉ!」
天の叫び声もむなしく僕の身体が中を舞う。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!
ドサッ
ズサァァァー
衝撃で息すら満足に出来ない。手足の指先の感覚もなくなってきた。
「紲斗、おい紲斗!しっかりしろ!」
急いで駆けつけて来た天が紲斗の意識を確認する。
「エクストラヒール!エクストラヒール!」
《gdnkのfjk中は魔法を使用する事ができません》
「くそっ。何でこんな時に限って魔法が使えないんだ!」
「..天...もういいよ....」
「何を言っているんだ!俺はもう誰も失いたくないんだ!だから...死なないでくれ!紲斗!」
「...ははっ。....無茶な..事を言うな...天は...。....夏煉の事...頼んだ....」
...やっぱり...僕は雨..が嫌いだ...
そうして僕の意識は深く沈んでいった。
***
白とも黒とも言えない狭間の空間。
そこには多くの魂が漂っていた。
魂は薄く色を持っていて淡く光っている。そして魂は新たな肉体を得る為に狭間の空間を漂う。魂が入るべき肉体が何処かの世界で作られるまで漂うのだ。
突然、狭間の空間に蒼く輝く魂が現れた。その魂は莫大な光をまき散らしながら脇目も振らずに、ある世界へと向かった。その世界は、魂が現れた世界と対になっている世界だ。
魂の前にある世界は膜のような物で覆われている。色は赤、青、緑、黄色、茶色、黒、白と様々な色が混じり合っている。
そして魂はある1点へと吸い込まれていった。最も紅い所へと。
魂がまき散らした光はいくつかの塊となり、これもまた対の世界へと消えていった。
***
目が醒めた。確か僕は車に轢かれたけど、生きてる?
目を開けると、知らない天井が見えた。僕は寝かせられているみたいだ。
ここは何処だ?事故で怪我をしたなら間違いなく病院だろう。あんな大怪我じゃあ、間違いなく病院のはずだ。だけど、ここは誰かの部屋みたいだ。とりあえず周りを見てみよう。
そう思って体を起こそうとする、だけど腕に力が入らない。勢いで立とうと、足を上げようとしても上がらない。軽いパニックになって声が出た。
(誰かー!。誰かいませんかー!)
しかしそう言ったはずの言葉は、
「だぁー!だーうぁー!」
呂律が回っていなく、言葉にならない言葉が出ただけだった。
どういう事だ!?おかしい、僕は事故で怪我をしたんじゃないのか?
と混乱していると、近くに人の気配がした。
「..*.***...,--...*..」
聞いた事も無いような言葉だと軽く現実逃避していると、ひょい。という風に体を持ち上げられた。
嘘だろ?何でこんなに簡単に僕を持ち上げられるんだ?高校生で比較的体重が軽い僕でも、まるで軽い物のようにされるのは心外だ。
僕を持ち上げたのは金髪碧眼の女の人だった。道を歩くと10人が10人振り返りそうなくらい美人だ。まだ少し幼さも残っている。
「.**.*,..*..--*...」
相変わらず理解出来ない言葉と共に、その美女は笑みを浮かべながら胸元をはだけ始めた。
えっ。ちょ、まって!それはヤバイって。とさらに混乱してじたばたすると、初めて自分の体の全体が見えた。
そこには、ぎゅうと握った小さな拳。プックリとしたこれまた小さな足。
さらに口元には直視し難い柔らかいものがある。
「???!!?!??!」
声にならない声と共に、僕は現実を理解させられた。
さて、状況を整理しよう。と数分前に起きた事食事を無かった事にする。
まず、僕は生まれ変わっている。俗に言う、転生って奴だろう。そして生まれた場所の言葉がわからない。少なくとも、前世で聞いたことのあるような言葉じゃなかった。これはおいおい覚えていくしかないな。幸い時間はたっぷりある。
次にこれからどうするかだ。ここが一体何処かわからないし、ヨーロッパにある何処かの国かもしれないし、他の世界かもしれない。
よし、まずは寝返りを出来るようになってこの部屋の全体を見てみよう。そしたらここが... ... 。
「すぅー。すぅー。むにゃむにゃ」
食事を取ったからなのか、まだ幼い頭で考え事をしたせいか僕の意識は再び深く沈んでいった。