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ディリオン王国前史2

 それまで変化の無かった事態が急変することになった。ユニオン貴族の一人ロラン家のディリオンが権勢を拡大させ、有力者の支持を取り付けてユニオン市の支配権を掌握したのだった。彼こそが後のディリオン王国の初代王である。

 ディリオンは多くの伝承とは異なりその事実としては出自不明の人物であり、貧民層の出身であるとも奴隷であるとも外国からの亡命者であるとも言われている。彼は市の守備隊長に出世するとその地位を利用して蓄財と情報収拾に励み、そこで得た財力と貴族らの醜聞を武器に婚姻を通じて貴族階級へと潜り込んだのだった。そして婚姻によって入り込んだ名門貴族ロラン家を手練手管を尽くして乗っ取ると、脅迫と懐柔でユニオン内の協力者を獲得し、反対派を流血のクーデターで一層した。

 そしてユニオン市を掌握したディリオンは415年、"ユニオン王"への即位を宣言した。


 領土拡張に積極的だった"ユニオン王"ディリオンは敵対状態にあったフィステルス市を攻撃しこれを屈服させた。返す刀で西のストラスト市を包囲したが、攻略には失敗した。ディリオンは和睦の宴と称してストラストの有力者を呼び寄せると講和の場で皆殺しにした。そして指導者の居なくなったストラストへ攻め込み、これを占領した。野心は北へも及び、軍を率いてバーグホルドを攻略すると同地の支配者であったシーボウ家をユニオン市を捨てた裏切り者と弾劾し、尽くを処刑した。

 419年、一度は屈したフィステルス市が南の大勢力ライトリム王国と手を組んで反旗を翻した。ディリオンはライトリムとフィステルスの連合軍をタガートン丘に於ける激戦の末に打ち破り、フィステルス市を陥落させた。


 ディリオン王は享楽や贅沢にも熱心であった。市内に新たに大規模な宮殿を築かせ、大いに飾り立てた。宮殿では連日の様に宴を開き、自らは大勢の美女を侍らせていた。

 当然、軍事行動や享楽的な生活には膨大な費用がかかるが、ディリオンはこれを重税と貴族からの没収財産で賄おうとした。密告を大いに奨励し、罪を捏造や自白の強制などで次々と有力者を潰してその財産を奪い取った。支配下の民衆に対しても微塵も慈悲を見せず、ありとあらゆる機会を捉えて税を課した。無論、反発する者も出たがディリオンはこれ幸いと王への反逆罪に問うて討伐軍を送り込み、力づくで抑え込んでいた。一方でディリオンは気に入った人間に対しては寛大であり、彼が王としての立場を維持出来たのは守備隊長時代からの情報収集力と王に取り入ろうとする恥知らず達の存在が大きかった。


 対外的には大きな成功を掴んだディリオン王だったが、王国の内部では彼に対する不満が積み重なり燻っていた。また度重なる勝利の美酒はディリオンの心をより腐らせ、謀反の脅威への注意を失わせていた。その中でも特に重大であった脅威が、義理の弟ヒルメスの暗躍であった。

 ヒルメスはロラン家嫡流の男子であり、ディリオンが婚姻によって潜り込んだ事で義兄弟となった。明晰な頭脳と人心掌握術でディリオンの信頼を勝ち取る事に成功し、粛清と暴虐の波を巧みに泳いでいた。戦場に於いても優秀な将軍として活躍しており、家臣筆頭としての立場を確固としていた。

 ディリオンの支配に不満を抱いていた者達が新たな主としてヒルメスを担ぎ出すのは時間の問題と言えた。ヒルメス自身も押し隠していた野心を露わにし、行動を起こすや否や宮廷を制圧し、宴に興じ油断していたディリオンを捕縛した。ヒルメスはディリオンを宮殿の一室に閉じ込めて軟禁し、自ら王位に就いたのであった。

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ディリオン群雄伝~王国の興亡~
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