勇者爆誕
暗闇の世界。
目を開く事をの許されない世界。
ーー誰が決めたんだよ。でも本能的な物で目を空ける事が許されていない。
それはまるで恐怖というか、畏怖にも近い感情だ。
「さぁ、産み落とされた勇者よ。世界の為に忠義を尽し世界に栄光の世界を」
とても綺麗な声で、まるでハープの音色を聞いている様なそんな癒される声で、
これが女神かと直感がそう答えを求めだした。
ちょっと怖いけどみたい。どんな表情でどんな風貌でどんな容姿なのかと、、、。
勇者とまで言われたんだ。そんな恐怖の一つで怖気づいてどうする。目を開けろ、
そっと、瞼を開く。
真っ白な世界。それはどこまでもどこまでも真っ白な世界で、
ちゃぶ台が一つとテレビが一台。
その間でまるで休日の中年男性の様に横になり尻をボリボリと掻く女神がいた。
「ゑ?」
思わず声を出してしまった。声すらも出すことが厳禁だとわかっていたのに、気づけば声が出ていた。
声に惹かれてその体制のままこちらへと視線を向ける女神と目があった。
「あーーーーあの、これはーーー!!!!?ーーー、、、、」
女神の弁明を聞く前に俺の視界はブラックアウトした。
気づけば俺は石碑の中央へと立っていた。
頬を撫でる風が心地良い。でも何かまるで夢を壊すくらいのレベルのことがあった様な気がする。
これが勇者としての直感なのか、
「お、お待ちしていました勇者様!」
うぬ、出迎えご苦労と思わず言いそうになるも口を抑えて、視線を向けるとそこには女の子が立っていた。
「き、君は?」
「はい、私は勇者様サポート管理局のツバネと申します」
勇者サポート管理局?まさか勇者の為にそこまでサポートする機関があるなんて。
でもまぁいい。これから俺の勇者人生を謳歌してやろうではないか。ははははッ!!
「勇者様は今回で1万飛んで456番目の勇者様ですので、これから適正試験を行わせて下さい」
「だろうだろう、勇者たるもの適正試験が、、、え?1万456人目?」
え、なにそれ、出鼻挫くってレベルじゃないよ?冗談もほどほどに
「はい、勇者様は1万飛んで456人目の勇者様になります。あ、ワッペンいりますか?」
和やかな笑顔と共にポケットに入れたワッペンを取り出して、俺に手渡してきた。
そこには煌びやかな勇者の文字と10456番と書かれた番号が。
なんていう量産システムなんだ。異世界から勇者物っと行ったら右往左往しながらもハーレムを築きつつ、ハッピーエンドなんていう物じゃないのか!?
「ありかよ…」
俺は手の中に収まっているワッペンを胸へと付けて、指定された村へと向かった。
俺が遺跡から離れる時に背後でシュイーンと何かが降り立ったのは見ていない。きっと新たな勇者爆誕したのであろうとしても。
遺跡から降りて徒歩10分程で辿りついた最初の村。
よくあるものなら最初の村なんていうのだろうけど、ここの名前は勇者村。
通行人のほとんどが勇者の格好しており、ちらほら俺と同じように胸にワッペンを付けている。
まさか本当に1万456人目になるとは、、。
幸先が心配で心配で…。
「でも沢山いるけど勇者なんだから、国の為に忠誠を誓って人を守ろう!」
「忠義が硬いのはいいことだけど、試験に落ちたら一緒よ」
人が忠誠を誓っている時に人の事を馬鹿にするのは、勇者番号1万394番の女勇者である。
皆と同じ服に身を包んでチャームポイントはその髪型と整った顔立ちだけである。
「試験?」
「そうよ。勇者としての内面、そして戦闘技術を試験官がチェックするの」
「も、もし落ちたらどうなるんだ?」
「そうね、勇者としての資格がなくなるから一般市民として生きるんじゃない?」
いきなり過ぎる!いきなり勇者として存在ピンチ。というか誰この勇者、なんでこんな自信満々なの?
「まぁ、お互い見習い勇者同士頑張りましょ」
「あ、あぁ」
あれ、意外といいやつじゃないか。よしきっと勇者になるぞ!
「あ、そういえば喉渇いてない?この世界の物に慣れておいた方がいいと思うの、はいお水」
「ありがとう」
なんて気がきくんだ。こんな気が利く勇者は初めてだ。この人にも勇者になってもらいたい。
ごくごく、元いた世界よりも美味しい気がする。多分。
でも意外と喉が渇いていたんだな…、喉が一気に潤ったな。
「じゃあ、私は行くから」
彼女がさり際に小さくガッツポーズと不敵な笑顔を浮かべていた事に俺は気付かなかった。
この後すぐ来る絶望に打ちひしがれるとは、




