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拍手まとめ1

☆モデル(怜)×女子高生


やっぱり、癒される~。

大好きなモデルでアーティストの昴の特集が組まれている雑誌を読みながら、私は部屋中に浸透するように流れている彼の曲にも耳を傾ける。

休日にベッドにてうつ伏せになりながら、まったりと過ごす。

なんて幸せなんだ! 聴覚も視覚も昴一色っ!

可能ならば是非触覚も! と願い出たいが、流石に相手は売れっ子モデル。

それは無理な願望だ。


――あぁ、でも一度だけ会う事が出来たなぁ。


それはあの俺様モデル・怜に「俺の彼女」として紹介された時。

昴は何から何まで想像通りだった。纏っている空気も性格も雑誌やテレビで見るまま。

それでますます好感度が上がり、頬を染め手に汗かきながらも勇気を振り絞って握手を願い出ようとしたが、隣りの怜から発せられる禍々しいオーラに言葉を呑み込み実行不可。

それでも、あんなに間近で会話出来たなんて幸せー。


「あー。今日のファンイベント当たっていればなぁ。今頃、昴と楽しいひと時……」

「応募していたのか。今日は俺の誕生日だぞ。彼氏の誕生日より、昴のイベントを取るのか。薄情な女」

「……え」

幻聴だろうか。

今、イギリスで撮影中のはずの男の声が耳朶に触れた。

おかしい。日本とイギリスではかなりの距離があるはず。

でも、確実に聞こえた。少し離れた後方の扉から……


「なんで!? 今日までイギリスって言ってなかった!? 明日帰国って……!」

慌てて起き上がってそちらへと顔を向ければ、扉に凭れ掛かった怜の姿があった。

中で脱いだのか、手には帽子とマスクが握られている。


「早く終わったんだ。さっき日本に着いたばかりで、空港から真っ直ぐ来た」

「なんで? 家に帰って寝なよ? 疲れているでしょ」

こんな所にわざわざ来るより、折角出来た空いた時間だ。

家で寝ていればいいのに。そうすれば疲れも取れるだろうし。


「あぁ、疲れている」

怜はそう言うと、私が座っているベッドへと足を進めるとそのまま寝転がった。

ギシリと軋んだスプリングの音に、心臓が一つ大きく跳ね上がる。

私のベッドでは、長身の怜にとっては窮屈そう。

猫の様に丸まっている。


「なら、やっぱり家に帰った方が……」

「だからお前の所に来たんだろうが。察せよ。しかも今日は誕生日だ」

怜が腕を伸ばし私の手を握った。





☆匠×朱音


「あれ?」

今日もいつものように五王の図書館・プライベート室にて読書中。

……だったのだけれども、ふと左肩に掛かった重み。

それに視線をそちらへと向けた。

するとすやすやと匠君が私に凭れ掛かりながら眠っていたのが目に入ってくる。

温かく私達を包んでくれている日の光、そして窓から室内へと吹き抜けるそよ風は確かに眠気を誘う。


――なんか、可愛い。


膝の上に読んでいた本を置いたまま、夢の世界に向かったみたいだ。

なんだか気を許してくれているようで、ちょっと嬉しい。

あまりのかっこよさに手を伸ばしてその顔に触れたいけれども、動けば起こしてしまうかもしれない。

それに勝手に人に触るのは駄目。だから、私は、そのまま読書を続けることに。






「ちょっと見て! 国枝っ!」

「お嬢様。二人を起こしてしまいますから、声を落として下さい」

お兄様と朱音さんが五王の図書館にいると伺ったのでケーキ持参で訪れてみたら、二人共寄り添うように凭れ掛かりながら眠っていた。

読書中だったのだろう。膝の上には中途半端に開かれた本が。

ノックに対して返事がないので、一瞬怪訝に思い扉を開けたら広がった光景。

それを目にして、少しだけ胸を撫で下ろした。


朱音さんは常に人に対して距離を取っている。

きっと妹の事があるのが原因なのだろう。自分の気持ちを表に出すことをあまりしない。

例えば、外出する時。

朱音さんからは、決して何処へ行きたいとか口にしない。

遠慮しているわけではない。言えないのだ。

それは妹中心の生活で彼女をないがしろにし、家族が誰も朱音さんの意見を聞こうともしなかったせい。


「ねぇ、国枝」

「はい」

私の言葉に隣に佇んでいた男――従者である国枝がこちらへ顔を向けた。


「朱音さん、いつかちゃんと笑ってくれるわよね? 好きなものとか教えてくれると嬉しいんだけれども……」

今も笑うけど、ぎこちない。他人の視線を気にしているみたいに感じる。


「大丈夫ですよ。そのために恋するポエマー様が頑張っていますので。それに、美智様達もいらっしゃいます。長い年月をかけて付けられた傷が、ほんの数か月で癒えるわけがありません。ですから少しずつです。ご覧のように結果は表に出てきていますよ」

「えぇ、そうね」

私は子供のように無防備に眠っている二人を見て、口元が緩んだ。


お兄様に対して少しは心を許してくれているのかもしれない。

傍で眠っているぐらいなのだから――




☆年下医者(神崎樹)×売れない漫画家


「……神崎、ちょっとした旅行って言ったよな?」

「先輩。樹って呼ばないと返事しないよ」

「返事しているだろが。いや、その前にここいくらするんだっ!?」

私は顔面蒼白になりつつ叫んだ。

それもそのはず。生まれて初めて訪れたここは、絵に描いたような高級旅館。

しかも、室内には檜の露天風呂付。

畳の香り漂う広々とした和室からは、宿の前に流れている川と緑豊かな山が広がっているのが窺える。


「宿泊費いくら!? 私払えないかもしれない!」

「俺が払うって言っているでしょ? どうして遠慮しているの? 僕達夫婦なんだよ? それに神崎は先輩もでしょ? 樹って呼んで」

「あぁ、そうだった。私も神崎になったんだった……」

未だに自覚がない。というか、樹も先輩って呼んでいるじゃないか。


退院後、本当に7月8日に市役所へと届を出して正式に夫婦に。

交際期間0って……いや、正確には数日あるか。

アパートの契約も更新せず、新居へ引っ越し。

その疲れを癒そうって樹に温泉に誘われたら、いかにも高そうな場所。

私的にはひなびた温泉だと思っていたため、頭が追い付かなかった。


「ねぇ、先輩。ぼうっと立ってないで座ろうよ。ほら」

促がされて大人しく座れば、樹に後ろから抱きしめられ、そのまま彼の胸に凭れ掛からせられた。

落ち着かないので、できれば座椅子へと座らせて欲しい。


「新婚旅行は海外に行こうね。あと、式も挙げて来よう」

「海外ウエディングってやつ?」

旅行中に、次の旅行先の話か。早いな。


「そう! 俺、憧れていたんだ」

「以外と乙女なんだな。別に結婚式に興味ないけど……」

「先輩ならそう言うと思った。駄目?」

「……樹がやりたいなら構わないよ。でも、それって二人で挙げてくるって事? それとも家族で? 病院大丈夫?」

「そう。それが問題。家族全員ではちょっと無理なんだよね……何かあったらすぐ戻れる距離じゃないし。でも、白い砂浜と透き通るような海辺で先輩と結婚式は絶対に挙げたいんだ。そしてみんなにもお祝いして欲しい。というか、家族が出席する気満々なんだよね」

「なら、式は海外でやって披露宴を日本でってこと?」

「……うん。そう考えていたんだ。いい?」

「いいよ」

「ありがとう。先輩」

そう言いながら樹が首筋に顔を埋めたので、私は手を伸ばしてその髪を梳くように撫でた。








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