表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/26

気付いた理由

 己の事を心配して涙を流す、その気持ちが嬉しくて、抱き締める。

 腕の中のアルディスは、腕の中にすっぽりと包まれて、その華奢とも思える身体に、やはり男のような口調をしていても『女』なのだな、と実感する。

 アルディスが騎士となり、自分と出会い、年下の同僚として、友人として過ごして来た二年、女扱いをしたことはなかった。

 姉のディアナと違って『女』を感じない騎士だと、少年じみた少女騎士──そう思っていた。

「──ったく、俺のどこがよかったんだか……」

 本人がその気になれば、ディアナほどとは言わなくても、相手はいくらでもいたろうに、と思う。

「……待てよ、昨日気付いた──って言ってたよな?」

 気付いたばかりであれば、気のせいや思い込みである可能性も拭えない。

 うっかりと手を出して、アルディスを傷つけ、ディアナに恨まれるはめにはなりたくない。

「昨日、何で気付いた?」

 昨日は特に変わったこともなかった、何をきっかけにしたのか、それが思い違いでないのかを確認しようと口を開く。

「昨日、アズールが他の女と仲良く話してて、それで──だと思う」

 ──誰にも渡したくないと思ったから──アルディスはそう言っていた。

「ちょっと待て、俺が、女と仲良く?」

 ──女と仲良くしてた? そんな覚えはない。

 記憶をどれだけ巡っても、思い当たる記憶はない。

 漸くひとつ、まさかと思う事があった。

「……まさか、とは思うがアイゼンヴァイスの嬢……いや、姫さんの事か?」

「……アズール楽しそうだった」

 あれを楽しそうだったと言われて、がくりと肩が落ちて、アルディスを抱き締めていた腕も力が抜ける。

 やっぱり気の迷いなんじゃないだろうか、と思って、アルディスを己からゆっくり引き剥がす。

「……お前、あれだろう。 友達を新しい奴に取られかけて、それが自分とよりも仲良く見えてもやもやするってあれだ」

 『恋』ではなく、一種の独占欲とか、そういった感情を恋だと勘違いしたんじゃないのか、と己は考える。

 いや、待てよ。己とキスしたい『恋人のキス』をとも言っていたが……、行き過ぎた友情なのか、本物の恋なのか、判断がつきにくい。

 うっかり本気にしてしまうところだったと、思いとどまった己を褒めてやりたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ