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0ー1 スナイパーは家庭的男子

世の中には、不幸な事、割に合わない事は山ほど存在する。


例えば。家に帰ったら、父親が借金残して蒸発したなんていう事は、世の中を攫えば正直ザラだと思う。

数百年前、オレたちヒューマンが母なる星、地球を拠点にしていた頃から、正直それは変わらない事だと思う訳で。


「くそ、…何で蒸発したかなあ」


悪態を着きながら、オレは愛用のレーザーライフルの電池パックを付け替え、遥か遠くに見えるスコープの先、其処に居る巨大な銀の機械獣に狙いを定めた。

荒れ果てた荒野、其処の遥か先に見えるのは、ドラゴンタイプの希少種だ。

数百年前、ラヴァンゴとアステール、オレの出身国であるミュラグネが世界大戦を行った折に開発された、殺戮の為だけに生まれた機械生物、その中でも実力、危険度共にAクラスの相手。

巨大な岩盤の上から狙いを定めて、目を細める。命中の自動補正はスコープに着いている機能で一応は可能だが、矢張り命中するか否かは、狙撃手の腕が問われる。



−−−−−狙いを定めて、一発。



青いレーザーが空を走り、機械竜の足を貫く。地球時代で言う、西洋タイプのドラゴンだ、足は太く、狙い易い。しかし、それだけで倒せる相手なら苦労しない。


「…もう一発」


サーチ能力抜群のドラゴンは、こちらに一瞬で気づいて、獰猛そうにアイ・ランプを警戒色の赤に点滅させる。殺気を存分に放ちながらぶわりと空中へ舞い上がり、凄いスピードでこちらへ向かってくる。

それと同時に、口を大きく開く。そこに光が集中し、マズいと思った瞬間に体が勝手に跳ね飛んで一つ下の岩場へと着地する。

一拍遅れて、さっきまでオレが居た足場を、ドラゴンの口から放たれたソニックウェーブ…SPI症候群の賜物がぶち壊した。落ちてくる岩や破片を避けて、もう一度狙撃耐性を取る。


「…見てろよ、この野郎」


スコープを覗き込んで、動いている的を再び標準する。

丸く広がっていた標準カーソルが、赤く光りきゅっと絞られた。条件反射となった動きで、引き金を引く。

翼を打ち抜かれ、機械竜のスピードが落ちた。

ミュラグネ市のゲーム店では、確かこんなシューティングゲームが売られていた気がするが、現実の恐怖感とは恐らく比べ物にならない。


明らかに戦闘態勢で向かってくる相手に焦る。

再び、巨大な顎の中に光が集まり出す。

もう一発喰らったら、多分確実にオレは下の岩だらけの荒野へと落下し、ジ・エンドだろう。


最大威力を出す為に、力の入り過ぎた指で電池パックを再び交換した。

がちゃり、と、ギアを切り替えて、フルチャージ。

躊躇っている暇もない。眼前まで、口をぱっくりと開けて迫る機械獣に、オレは戦慄しながら引き金を引いた。



視界が、目映く蒼く光る。

反射的に目を瞑りたくなるほどの光量。



機械獣は黒こげになって蒸発し、後には焦野と黒煙と、ライフルを下ろして汗を拭うオレ自身だけが残った。

たった今までドラゴンが居た場所に、ぽん、と飛び降りて、真っ黒な大地に埋まるように落ちていた赤いコア・クリスタルを拾い上げる。これこそが機械獣の核であり命で、これを持っていなければドラゴンを倒した証明が出来ない。黒いロングコートのポケットにそれを大事に入れ直してから、オレは立ち上がった。


「…帰るか」


小さく呟く。背中に愛用の銃を背負い直して、一つ伸びをした。


さあ、帰ろう。今日の稼ぎはこれが限界だろう。これで、ボロくなってエラーが出まくっている冷蔵庫と、家のセキュリティレベルの更新くらいは出来る筈。

まだ狩りを続けたいのは山々だが、機械獣は夜には活発に活動するようになる。そうなれば、ソロで狩りをしているオレに勝ち目は無い。



(…あと、母さんの介護ロボット。もうちょい新しく買い替えたいんだがなあ…それから、セイの洋服も、継ぎが当たってるのは捨てて…。そういや、徴税ってそろそろだったな、…明日頑張って稼ぐか…。…くそ、金が足りねえ!)

内心でぶつぶつと呟きながら、荒野を踏んで歩く。


「…色んな意味で飢えてるよなあ…マジで。とりあえずバー・フルールのサーモン料理が食べたいね、酒はマルメロ酒で。」


一人ごちながら、砂に足跡を刻む。

遠くに、透明な半球に覆われたミュラグネ市が、黄昏の光を反射して淡く輝いていた。


投稿し直し失礼致します、そして読んでいただき、本当にありがとうございました。

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