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小さな勇気、大きな責任

夏の陽射しが、茅葺き屋根の村を柔らかく照らす。 風が麦畑を揺らし、遠くの小川では水面がキラキラと光る。 村人たちは日常の営みに追われながらも、穏やかな時間を刻んでいた。 そんな村の片隅で、僕――リオ――は静かに観察を続けていた。


森での試行錯誤は続けているものの、村ではまだ表立って力を使うことは避けていた。 思考具現はランク3になったとはいえ、まだ完全にコントロールできるわけではない。 集中しすぎれば頭痛や軽い吐き気が伴い、感情が高ぶると世界に思わぬ影響を及ぼす。


その日、村の市場ではいつもより人が多かった。 青果を並べる屋台、干し肉を売る小さな店、香辛料の匂いが漂う小道―― そこに、予想外の騒ぎが起きた。


荷車が片側に傾き、米袋が地面に散乱したのだ。 子どもたちは驚いて叫び、大人たちは慌てて拾い始める。 でも、転びそうな子どもや小さな犬を見た僕の目には、ほんのわずかに危険が残っていた。


「……考えよう」


手をかざすと、思考具現で米袋のバランスを調整してみる。 完全に持ち上げることはできないが、ゆっくりと安定する。 子どもたちは無事に避け、犬もよろめくことなく逃れた。


だが、僕の頭には鋭い痛みが走る。集中力を使いすぎたせいだ。 額を押さえ、小さく息をつく。 「ふぅ……これも練習だ」


ふと、大人の一人が僕に目を留めた。 「リオくん……何をしていたの?」 「えっと……ちょっと手伝っただけです」


村では、この出来事が小さな噂になる。 「リオくん、ただの子どもじゃないらしいぞ」 「森で不思議なことをしているって」


僕自身はまだ実感がなかったけれど、力を使うことで、社会的な影響や期待が生まれることを意識するようになった。 ――誰も見ていないところで助けることはできる。 ――でも見られれば、誤解も期待も生まれる。


夕方、僕はミーナと川辺で石を投げて遊んでいた。 小川の水は澄んでいて、太陽の光を受けてきらきらと輝く。 「今日はなんだか大人っぽい動きだったね」 「うん……でも頭が痛くなった」 「でも助けてくれたんでしょ?」


僕はうなずいた。 小さな成功体験。 でも同時に、自分の力がまだ完全ではないことを痛感した。 ――だから、もっと考え、もっと工夫する必要がある。


夜、寝床に入ると、静かな声が頭の中で響いた。


【概念操作】の理解度が微増しました ただし、使用後の疲労は大きく残ります


僕は布団の中で手を握りしめる。 ――力は増えても、責任はもっと大きくなる。 ――考えることで、世界に少しだけ影響を与えられる。


風に揺れる茅葺きの屋根、遠くで鳴くカエル、小川のせせらぎ。 村のすべてが僕の周りで生きている――感じられる。 力を使えば、これらすべてに微かな影響を与えることができる。 でも、間違えれば傷つけることもある。


僕の胸の奥で、思考が形を帯び始める。 ――次はもっと上手に使おう。 ――誰も傷つけず、助けられるように。


小さな村の小さな事件。 でも僕にとっては、力の使い方と責任を知る、大きな一歩だった。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!


この物語は、幼いリアムが「考える力」を少しずつマスターして、世界との付き合い方を学んでいく成長譚ですね。


まだ始まったばかりですが、登場人物のミーナやスキル【思考具現】、あるいは村の雰囲気など、読んでいて「ここが面白かった!」「ここはもう少しこうしてほしいな」と感じた点があれば、ぜひ教えてください!

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― 新着の感想 ―
素晴らしい作品です!✨ 冒頭から描かれる夏の村の情景が非常に美しく、まるで映像のように頭に浮かびました。特に「茅葺き屋根」「麦畑」「小川のきらめき」といった描写が温かく、物語全体に穏やかでノスタルジッ…
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