第72話、時は流れてエピローグ
とある国会議事堂内の一室、政治と言うゲームを楽しむ強かな者達の会合。
「えー、今も各国の大使館から問い合わせが殺到しているようです。
ですが その内容は以前のそれとは違い友好的なものに変わってきています。
海外から我が国に対する圧力は沈静化してきたと見るべきでしょう。
何しろ自分の国のダンジョン対策で混乱してますから無理もありません。
今ではむしろ協力要請の方が増えているのが現状です」
老人達に官僚から経過報告がされていた。
「だろうな。各国が手も足も出なかった魔物を日本の護衛艦が退治した・・・
世間ではそう見るだろうからな。」
「ふっ。最新鋭の護衛艦を失っていたら我々の首も危なかったぞ。
結果的に見れば 日本は無傷、国民の自衛隊に対する評価も爆上がり。
今後は我が国の発言力も上がると言うものだ」
巨大な魔物の襲来は日本にとって国家存亡の危機だった。
にも拘らず政治的な駆け引きなのか自衛隊出動には各方面から反対意見も多かった。
そして政府が下した決断は、
何もせずに日本の国土が破壊されるよりは建前上とは言え最新の艦艇を派遣して
「最善を尽くした」と言った方がダメージが軽くなるだろう、との無情な出撃命令だった。
近代兵器がほぼ使い物にならない現状でのそれは言わば決死の特攻命令だったのだ。
本来なら自衛隊員は無駄死にであり、意味の無い出撃になるはずだった。
ところがイレギュラーな存在は その悪手を最善手のごとく反転させてしまった。
日本の国土は無傷となり、この結果に世論は拍手喝采となった。
辞任する事で責任回避を覚悟していた面々は結果を聞いて内心は狂喜乱舞する。
今 彼らは人生におけるこの世の春を楽しんでいた。
「で、彼の危険分子はどのように首輪を着けるおつもりで?」
「・・・アレか。無理だろうな。
近代兵器でも殺せない魔物をたった一人で滅ぼすバケモノだぞ。
飼い慣らすなど不可能だ」
「そう、そのような者は初めから居なかったのだよ」
「なるほど。鳥インフルエンザと同じに処分、ですか・・・妥当でしょうな。
しかし ただ一点、御簾の裏の女ギツネがご執心なのは少し厄介です」
「ふん、大巫女か・・・。
時代遅れの存在など最早 不要なのだよ。新しい時代と新しい世界だ。
これからの世界は日本ファーストになる。時代遅れの者などいらん」
彼らは自分達が言っているセリフが自分にも当てはまるとは考えないようだ。
平和な時代の権力者は「自分は絶対に安全な立場」と思うらしい。
ある日、一人の男が公正な裁判も無く 極秘裏に極刑に処された。
一部の人間だけが知る非公式な情報だ。
この後、複数の政治家や役人が脳に疾患を患い辞任させられた。
国家には得てして影の力が存在する。
そして、「本音と建て前」という得意技も・・・
*********************時は流れた。
「ただいま」
「とーちゃん、お帰りーー。はい、だっこ」
「ほーら、高い高い」
キャッキャッと娘の利里が最高の笑顔で喜んでいる。
こうして父親に甘えてくれるのも少しの間だけで子供はすぐに大きくなる。
子育てしていて一番幸せを感じる儚い時間なのだそうな。
「兄様お帰りなのじゃ。女神様から連絡が有ったぞ。
新しいオンラインゲームはマダかと催促しておった」
芽芽 は結婚して奥さんに成っても俺を兄様と呼んでくる。
さすがに他人が居る時は呼び方を変えるがな。
不自然なのは確かだが、前世の別れがトラウマに成ってるのかも知れないので
無理に変えようとは思わない。
「そっちはもう少し時間が掛かるだろうな。
ベーターテストまで漕ぎつけたけど、まだ色々な意見が尽きなくて苦労してるよ。
なんせコンセプトが新しい人生だからね。
簡単すぎても難しすぎても不満が出るだろうし」
「そっちは?。他にも有るのかの?」
「ああ、今日で目標だった魔力総量に達したよ。
これで日本全国を一度に解呪できる。
性欲消滅の呪いが消えて少しは成婚率も上がるだろう」
少子化が止まるかは話が別だけどね・・・
「少なくとも人類滅亡は回避できるのじゃ。
人間が子孫を残すのがダンジョン内だけでは未来は無かったからの」
そう、恐れていた呪いが世界の人口を激減させている。
日本のダンジョン内に出来た新しい世界には影響が無いが
それだけで民族の衰退を防げるはずも無い。
安全地帯が有る日本ですら危機的状況なのだ、他国の少数民族は既に存続が不可能な状態まで来ている。
今も平和な日本に移住希望する人々は後を絶たず、中には国を乗っ取ろうと企む者達も居る有様だ。
しかし、その陰謀は不可能と言えるだろう。
侵略型ダンジョンが各地に発生して時代も進んだ。
今では空も海も安全に移動する事すら難しい。
不法入国しようと船で日本を目指す難民が海上で魔物の襲撃を受ける悲報は後を絶たない。そして空も例外ではない。
国家間の通信はかろうじて今も使用可能な海底ケーブルなどで何とか行われるのが現状だった。
当然だが各種資源の流通も麻痺している。
ダンジョンから産出される資源と魔石というエネルギーが無かったら人類の文明は消滅したことだろう。
皮肉な話だ。
「他の皆は今日も探索してるのか?」
「無理ね。今後パーティでの探索はしばらく間、難しくなるわ。
新人教育や他国支援で新しい世代が育てば前世の世界みたいに人間のテリトリーも増やせるでしょう。まだまだ時間が必要よ。それより、お帰りなさい。マコト」
お腹が大きくなって来た妻の涼香が出迎えに出て来てくれた。
えっ?、浮気では無いぞ。俺には複数の奥さんがいるのだ。
鬼畜ハーレム野郎?・・・いやいや、
女性を求める男が極端に少なくなってしまったのだ。
結婚以前にパートナーを見つけるだけで至難の業に成っている。
世界的に人口減少で悲鳴を上げているのが現状だ。
以前から知り合いだった女子の皆と結婚しなくては災害レベルの争いに成る。
今はそういう時代だと納得して欲しい。
ドラゴン騒ぎの後、俺を謀殺しようと企んだ政治家と入れ替わり、無事に生還した。
無実の罪で極刑に処されたのは政治家だ。(まさに自業自得だろう)
芽芽 達には心配させたようで無事に帰ると大泣きされたものだ。
深緑の鏃全員から殺意を向けられた大巫女の 司華は自己保身の為に有ろうことか
彼女達に俺の重大な秘密を漏洩してしまった。
俺が魔法で呪いを解呪できるのだと知られてしまったのだ。
それからは もの凄い圧力で「早く魔王の呪いを解呪しろ」と迫られたよ。
とうとう魔法で普通の男子に成った俺。
女性陣は再び呪われない内に既成事実を作ろうと猛烈なアタックを強行。
多方から結婚を迫られたのだった。
そんな経緯が有って逃げられなかった俺はとうとう降伏した。
はははは・・・・
「これからは家族が勢ぞろいするのも難しくなるな」
俺のパートナー達は探索の先駆者として国内を飛び回っている。
メンバーがそれぞれ要職に付かされているから多忙なのだ。
「旦那様は公には死亡した事に成っているから重責を振られなくて楽だの」
突然 後ろから声を掛けられて少し驚いた。
転移ゲートは無音で開くから怖いのだ。
転移して来た大巫女の司華が皮肉っぽいセリフを言っている。
俺が公的に死亡扱いに成った原因は誰のせいだ!、と言いたい。でも言わない。
彼女の疲れた顔が国際的な問題が起こった事を教えてくれる。
彼女は国の相談役的な立場上、国から色々な難題が持ち込まれ心労も溜まるのだ。
俺に皮肉の一つも言いたくなるだろう。
多くの奥さんを持つと気遣いも必要になるのだよ。
「麻薬をバラ蒔いた資金で南米のマフィアが巨大な勢力に成っておる。
ダンジョンを占拠してレベルを上げているから国軍も手が出せないそうだ。
一般の人々は地獄の生活らしい」
今ではダンジョンの外にも魔物が徘徊する地上世界。
それに合わさるようにダンジョンの外でも魔法やスキルが使えるようになった今、
新しい秩序作りで世界は大混乱している。
魔法や戦闘スキルと言う凶悪な暴力が個人で使える社会に成ったのだ。
暴力が全てな世界では悪辣な勢力も多く台頭してくる。
力有る者が弱者に対する行為も過去に例が無いほど残虐だ。
それも時代の流れ、と言ってしまえばそれまでなのだが、
逆にその暴力に対抗する敵対者が出て来るのも自然な事だろう。
「はいはい、忍者、黒影参上しますよ」(笑
「すまぬな・・・また汚れ仕事を押し付けてしまう。ありがとう主様」
司華が秘密裏に俺に仕事を頼む時は放置できない災いを生む時に限る。
「話し合いで解決」など通用しない場合は俺が手を貸している。
「そう言う事なら、また分離ゲートをその国に開いておくね」
また突然 声がかけられた。
七飯ダンジョンのコアが作り出した人型の端末ナナエさんだ。
ダンジョンも大きくなり安定して魔力を補充できる今は大人の女性の姿だ。
当然ながら彼女とは結婚していないが大事な仲間であることは変らない。
以前、子供も作れる体だと言っていたけど・・・冗談だと思いたい。
今の俺の家はダンジョン内に展開された新しい世界に作られ生活している。
要するに、ダンジョンの中に転居した訳だ。
以前からダンジョンに在住を進めていたナナエは大喜びしている。
今ではダンジョンコアは大所帯に成った我が家の大家さん的な存在だ。
場所は人里から離れた世界樹が見える丘に作られている。
インフラは地上の日本に暮らしていた時と殆ど変り無い。
ネットも繋がっているから不満は無いな。
「さてと、今日の予定は終わったし、ゲームの続きを再開しますか。
ネット小説の未読も溜まってるだろうし時間が足りないな」
「とーちゃんはミミと遊ぶのーっ。肩車してー」
えー・・・。とほほ
「それよりも久しぶりに親子三人ででかけるのじゃ。
世界樹のふもとの村に遊びに行こう。
エルファリアにも会いたいしの」
芽芽 が便乗して俺の時間を奪い取りにくる。
「良いわね。明日は私とも付き合ってね。
お父様が会いたがっているのよ。
組事務所じゃなくて本家の方に行きましょうね」
涼香も無情な提案をしてくる。
俺には抗う手段など無かった・・・・
ダンジョンが出来た新しい時代、独身ののんびり自堕落した生活をする予定だったのだが・・・・
いつの間にか普通?の父親に成って嫁と子供の振り回される人生に成っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・まあ良いか。
完
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ごめんなさい。
長い事空けてしまいました。
Bellw right / ベルライト というゲームに沼ってしまい、悪戦苦闘して他に頭と時間が使えませんでした。
一応クリアーしたのかな?
このゲーム、どこがエンディングがハッキリしない不満の残るゲームでした。
長い間遊んだのに達成感の無い終わり方で欲求不満です。
ゲームとしては面白かったです。
何度もコントローラーをモニターに叩き付けたくなるほどムカつくくらい面白かった?です。
それだけに終わった達成感の無いのは・・・・・
海外産のゲームには起承転結が曖昧に作られているのが多く、最後にがっかりさせられます。
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話をもどして物語の事ですが、
どうしてもハッピーエンドしたかったのでこんなラストに成りました。
とりあえず、流点の魔術師の物語はこれで一段落とします。
今まで読んでいただき ありがとうございました。感謝です。




