第56話、大きい事は良い事か・・・
リニューアルされた七飯ダンジョン。
その様子を見に来たら色々な意味で驚かされた。
前世のダンジョンとは明らかに違う成長に困惑していると、
いつものように呼び出しの転移魔法陣が足元に広がる。
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転移が終わると何故か目の前が壁で遮られている。
ダンジョンコアが安置されている階層に来たはずなのに
ゴツゴツとした荒い質感をもった壁に囲まれたスペースだった。
「・・・・・・もう、こんなに」
そして思い出した。
この壁に見えるものは前世で見た世界樹の根っこの一部だ。
大地からはみ出した根が巨大な壁に見えるほどのスケールの大きさなのだ。
本体の樹木を確認しようと思えば少なくとも3Km は距離を取らなくてはならないだろう。
これは、世界樹の保護空間に呼ばれたのかな?。
「マコトーーっ、待ってたわよ。見て見て、世界樹が復活したわ」
根の上から手を振っているのはハイエルフの幼女 エルファリア。
そして、直ぐに彼女は目の前に転移して来た。
世界樹の庇護を受けたエルフならそれ位はできるだろう。
同時に後ろにも人の気配。
「どうかな マコト。驚いてくれた?ナナエのリニューアル」
背中を取って脅かすのはダンジョンコアの端末、人型のナナエ。
「えっ、何ごと?」
そして、何故か沢山の人間が 転移してワラワラと集まって来る。
この空間は極秘のはずだったのにこの人数、どういう事だ?。
「あんたが世界樹の種を保護してくれた探索者なんだね。大手柄だよ」
「貴方のおかげで私たちは救われたわ。ありがとう」
「おかげで空しい人生から抜け出せたよ。感謝する」
などなど、次々に御礼を言われる。
いい加減、事態の説明してくれ。
「この人達は前世でエルフだった者達なのよ。
色々な世界のエルフだけど世界樹の前では心は一つだし、
世界樹の不利益になる事は絶対にしないからこの場所に招いているのよ」
ナナエが楽しそうに謎解きをしてくれた。
納得の理由では有るが、この人数が前世の記憶持ちなのは驚きだ。
そんな俺の様子から察したのか一人の男性が詳しく説明をしてくれた。
「我々も最初はこの人数には驚いたよ。
でも話を聞くと皆同じような理由だった。
人間社会での生活が空虚で生き甲斐を感じられず、
何かに引かれて誘われるように探索者になった。
そして世界樹の魔力を感じて前世の記憶を思い出せた。
その時の喜びと感激は我々にしか分からないだろうね」
「世界樹がこの地に有る経緯は聞いたわ。
貴方は私たちに生きて行く希望をくれたのよ。
心から感謝するわ」
「しかし、どうやってこれだけの数が集められたんだよ」
「ふふっ、念話よ。前世の記憶と一緒に基本的な魔法を思い出せたわ。
試しに念話で話しかけたら同類が居て驚いた。
ネットワークが広がるうちにダンジョンコアとも話せるようになったのよ」
「それは良かったな。こっちも世界樹の守り手が多くなって安心できる」
「ああ、今後は世界樹を守るために自分達も強くなるつもりだ」
今までは世界樹を育てる為に過剰なくらいダンジョンコアに魔力を補充して来た。
ここまで成長できたなら 今度は逆に世界樹から豊富な魔力が放出されるだろう。
「世界樹がこの大きさに成って魔力を放出してるなら
俺がコアに魔力補充するのも終わりだな」
空間を共有している日本全国のダンジョンも潤う事になる。
それは一つの大きな歴史の流れに区切りがついた事を意味する。
ダンジョンのアイテム相談もこれだけスタッフが居れば困らないだろう。
そういえば・・・
「ところで、入り口にいきなりトロールを出すのは少し過激すぎだと思うぞ」
「それよ、今日呼んだのはその事で伝えたい事があるの!」
何時に無くナナエが怒っている。
俺・・・何かしたっけ?。
「この国の人間にもバカは居るのね。せっかく警告してあげたのに
何でわざわざ侵略型ダンジョンを望んで招き入れるのかしら?」
「えっ、日本にも生まれたのか?」
「そうよ。離島ならまだしも、このダンジョンの近くに出来たわ。
トロールは油断して空間転移を防御できなかったの。
今後は絶対に侵入なんてさせないよ」
「近くって どれくらいだ。俺の家とか言うなよ」
「そこまで近くじゃないわ。細かな位置は外に出てから調べてね。
今すぐじゃ無いけど、アレは魔物を吐き出すから死人が出るわよ」
外で死人が出るのは外聞が悪いな、ダンジョンのイメージダウンだ。
「分かった。いずれダンジョン攻略しないとな・・・。
今日はこれで帰るよ」
そんな訳で自宅までいきなり転移する。が・・・
「何でお前ら居るんだよ。この家は幼稚園じゃねぇぞ」
前世の魔王と四天王が揃って遊んでいた。
「ここはマンガもゲームも色々有って楽しいからな。
遊び場としては合格点にしてやろう。はなまるだぞ」
「貴様、魔王様に逆らう気か、殺すぞ。社会的に」
しまった・・・こいつ等、混ぜるとキケンだった。
世界樹の近くがエルフのたまり場で、
魔族のたまり場が俺の家とか、やめろーーーっ。
ピンポーン☆ ピンポーン☆ ピンポーン☆
そして、勇者がやって来る。
「兄様、ダンジョンじゃ。函館にダンジョンが出来たぞ」
隣町に出来てたのか・・・調べる手間が省けたな。
「ああ、ナナエから聞いた。侵略型のダンジョンらしい」
「まずいのじゃ・・・即急に破壊しないと」
「今すぐ魔物が吐き出される事は無いらしいから焦る事ないさ」
「そうじゃったな。
兄様はそのあたりの記憶が無かったからの・・・。
前世のダンジョンにはトンデモなく危険なのじゃ。
魔王の呪いが掛かっとるのじゃ」
「魔王の呪い?・・・それなら本人に呪いを解除させれば良いだろう」
俺は部屋で遊んでいる幼女魔王を見た。
「ちと考えろ、魔導士。わらわがそんな事できるなら
二人して こんな場所で遊んでなどおらんわ」
こんな場所で悪かったな・・・とっとと帰れ。
「それに、呪いを掛けたのは先代の魔王だからな。
同じ魔王でも解除など出来んぞ」
「その呪いって何なの?。人間を皆殺しにするとかか?」
「「ぷっ、きゃははははははっ」」
幼女二人が腹を抱えて笑い転げている。
笑う呪いなのか?。
「ハァ、秘匿するのも問題だしのぅ。
ある意味では人類を滅亡させる恐ろしい呪いじゃ」
何やら不穏な流れに成った。
藤原 真はこの人生でも平和に生きられないのか・・・。
「魔王の呪いをこの世界の言葉で表現するなら『草食化の呪い』じゃ」
「草食?、全ての人がベジタリアンに成るのか・・・それは恐ろしいな」
「何をボケて現実逃避しようとしてるのじゃ。そっちの意味では無い」
「じゃあ、なに?。ハッキリ言ってくれ」
「おい、魔導士。きさま悪辣なくせにこんな事も理解せんのか。
草食と言えば、次に男子と来るのが普通の若者の感覚だぞ」
「おい、四天王のメスガキ。いい加減にナメた口を閉じろや」
「ひっ、ま魔王様。やはりこいつ危険です。殺しましょう」
「落ち着くが良い。
この世界では幼女は最強なのであるぞ」
話が進まねぇ・・・。
「草食男子の何が呪いなんだよ。早く言ってみろ」
「では聞くが、兄様は結婚して子供を作りたいと思うかの?」
「いいや、まったく。
何でわざわざ こんな憎たらしいガキ共を自分が作らにゃならんのだ」
「それじゃ。
兄様は初恋すらしてないじゃろ?。
結婚など最初から眼中にないはずじゃな。
それは前世で魔王が掛けた呪いが今も魂を拘束しているからじゃぞ。
かわいそうに・・・『異性を求めない呪い』に侵されておるのじゃ」
かわいそう?何が。
人を憐れむのは止めろや
「何を言うか、俺みたいな独身貴族は今の日本じゃ普通だぞ。ふ・つ・う」
「普通ではないわ、きっと独身のそ奴らは皆が魔王の呪いに掛かっとるのじゃ」
「はぁ・・・見ておれんな。魔導士よ良く聞くが良い。
主らが侵略型ダンジョンと呼んでいる前世のソレには
呪を常に発動させておる。男は誰も女を好きにならん呪いだ。
つまり、このままではこの世界は貞操逆転の時代になるな」
「幼女のくせに、なぜ貞操逆転とか知ってんだ?」
「やーい、まだ理解できないみたいだなティート・セレデティア。
今ですら少子化で人類が減少してるのに今後はさらに子供が生まれない。
人類滅亡まった無しだ。人間など滅びれば良いのだ。あはははは。
ザマァ・・・イダダダやめへぇ」
「じゃあ滅びろ人間のメスガキ」
四天王だし、ほっぺた抓るくらいは許されるだろう。
「そもそも、先代魔王の呪いは凶悪だからの。
クズな勇者に口説き落とされて戦いすら辞めた魔王を捨てて
背中から刺し殺したのだぞ。その恨みは恐ろしいものだ」
「あー、それは恨まれてもしょうがないな。俺でも呪うわ」
「まぁ良い。詳しい話は後じゃ。
我が深緑の鏃は全力の装備を持ってダンジョン攻略して奴を破壊する。
兄様、当然参加じゃからの」
えーっ、まぁ良いけど。俺はソロの方が気楽で良いんだけどな。
ぶつぶつ「全くじょうだんではないぞ。
これ以上、兄様が手強くなってしまうと
結婚など夢のまた夢じゃ。
甘々の新婚生活が出来ぬではないか」ぶつぶつ
ヒソヒソ「確かにそれは困るのぅ。
わらわを理解してくれる番は他に居らぬからな」ヒソヒソ
ぶつぶつ「何で貴様まで参戦してくるのじゃ。
私の恋路の邪魔するでないわ」ぶつぶつ
ヒソヒソ「良かろう、前世では叶わなかった勇者との勝負、受けて立つぞ」
二人とも聞こえてるぞ。
悪巧みはよせ。
この人生こそは一人の静かな余生を送らせてくれ。
「あ奴・・・、既に呪いは重症かもしれませんよ。魔王様」




