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第5話。久しぶりじゃの

ある日の事、オレこと藤原 真は下校途中に拉致された。


意味が分からん


拉致するなら少女と相場が決まっておろうに。


何故 イケメンでも無く、金持ちでも無い オレのようなモブを。


ついでに探索者としても初心者扱いの一般人だぞ。



とりあえず・・現状把握してみよう。


只今 車で移動中。


黒塗りの高級車で乗り心地は良い。


両脇に座るのが黒に近い色のスーツを着こなしているガタイの良いおっさん達。


向かい合わせの座席にも同じようなおっさんが三人。


よく見ると左脇のスーツがふくらんでいるし、


チラり見えるのは拳銃のホルスターのベルト?


何処の組の方達でしょうかね。


さすがにヘラヘラしてモブを装っている場合では無いかな。



まぁ、いざとなったら 全員が痴呆症(ちほうしょう)になるだけだけど

クックックッ、と心の中で悪役のように笑う。


中学は卒業したけど こんな事で嬉しくなるのはまだ無邪気(ちゅうに)な心が残ってるのか・・。


まぁ、正直言えば魔法が使える状況なら相手がヤバイ人達でも怖くは無いんだ。


魔法を使った事すら気付かせない自信が有る。


何時でも来いや、ゴラッ‼



びくっ‼


・・・・・・。


場の空気が変わったな・・まさかこいつらエスパー?


「あんさん、そないに殺気ぃ飛ばさんでもらおうか。悪いようには成らんさかい」


向かいに座るリーダーらしき男が話しかけてきた。初めて声出したな、こいつ。


「殺気ですか・・・そんな つもりは無いですよ」


「何言いますやら・・その若さで何人も()ってますやろ。

隠し切れない濃密な殺気どしたでぇ。脅かすのは無しに願いますわ」


酷いな、こんな善良な一般人のオレを殺人鬼みたいに言うか。


何人も殺したのは前世で・・・、


まさかな・・それが消えて無いとか?


そりゃあ盗賊やら刺客やら色々と返り討ちにしたけど、転生したのにデーター(罪科)が消えて無いのか。


でも、記憶も残ってたし・・ 在りうる。


などと モンモンと懊悩(おうのう)しているうちに目的地に着いたようだ。


おっさん達はすごいホッとした顔をしている。複雑な気分だ・・




拉致られ到着した場所は古風な日本家屋、いや武家屋敷かな。


それは山裾に目立たないように配慮され作られているが近くに有るとその存在感は圧倒的であり、広大な敷地を使って堂々と鎮座していた。


「二点一龍 剣術道場?」


玄関に掲げられた一枚板の看板にはそう達筆な文字が彫り込まれている。


確か、宮本武蔵の流派が「二天一流」だったはず・・文字が違うな。


バッタモン?


しげしげと看板とにらめっこしてしまった。



「さすが、落ち着いておられますね」


「っ‼」


いつの間にか 近くには着物を纏った女性が立っていた。


近づいた事にすら気付け無かった・・・


やべっ・・オレ 平和ボケしたぞ。相手が敵なら今ので死んでる。


とりあえず弱みを見せないように焦った気持ちをごまかす。


「俺は一般人ですから拉致されて誘拐されるなんて異常すぎて 実感が無いだけですよ」


「一般人・・・ですか。

まあ 良いでしょう。では ご案内いたします。全てはそちらで」


何か言いたそうな女性は前世で言えば「名の有る騎士」相当の覇気を(まと)っている。


冒険者のソレとは別の鋭さがある。この世界でも達人クラスだろう。


自然の音だけが響く長い渡り廊下を歩いていく。


立ち並ぶ木の柱には所々に深い刀の切り込みが有る・・実戦の跡だ!


すごい所に来たものだ。




案内されたのは太い柱に支えられた広い空間。


全面が板の間で有ることを考えれば道場なのだろう。


オレを集団でボコる気かな。



「よう参られた。・・・久しいのぅ」


そんな場所に待っていたのは一人の少女。


「参ってねぇよ、拉致されたんだ。おまけに初対面だぞ」


「この状況で その態度、相変わらずじゃ」


すっげぇ嬉しそうに微笑まれても一切 見覚えが無いので困る。


オレより若く見えるが・・女の年齢は地雷だからなぁ。


言葉遣いも「のじゃ」っぽいし、とりあえず保留だな。


案内してくれた女性は護衛なのだろう、少女の斜め後ろに控えている。



「では、こう呼べば良いかの ティート・セレデティアさん。

異世界の大魔導師にして、二つ名を 深淵の引導師(いんどうし)と呼ばれていたのぅ」


声も無く驚いたオレの顔を見て心底ご満悦な少女。


何者だこいつ


何故 オレの前世の名を知っている。


ついでに厨二臭い(はずかしい)二つ名まで


「ふふっ、あまり私だけ楽しんでは本気で怒らせてしまうの。

私の名前は豊条院 芽芽 (ほうじょういん めめ)

前世の名はファーリア・セレデティアと言えば思い出すじゃろ

・・・よもや忘れてはいまいな」


ゲッ、えっ!、うそっ・・まさか、


「最愛の妻の名を忘れたとは言わせぬぞ」


「嘘つけ、妹だろうが」


目の前の少女はオレの突っ込みを聞いて大爆笑。


今までの大和撫子な雰囲気はぶち壊し。


ネコかぶってたんかい。



確かに少女から受けるこのニュアンスは妹だったファーリアそのまま。


ただ、見た目と口調が全く違うから言われなければ気付けなかっただろう。


それにしても、後ろの女性は一切驚かない。


二人の会話は知らない人が聞いたら厨二病患者の会話に聞こえるはず。


事情を知ってるのか?


「はぁはぁ、もぅ・・やっと見つけましたよティート兄さま。

前世の記憶を失ったのかとヒヤヒヤしました」


「これはこれは、勇者様・・・ファリも来てたのか。でも何故」


謎だらけだ。何から聞いていいのか困る。



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