第41話、ショタなダンジョン?
千歳ダンジョンで探索していた俺はここのダンジョンコアに呼ばれたらしく、
いきなり転移したのは良いが・・・、
「・・・呼ばれたのは異世界か?」
そこは豪華絢爛なサロン?のような場所だった。
ベルサイユみたいな雰囲気と言えばイメージできるだろうか?。
もちろん細かなデザインなどは違うだろうけど、
なぜここまで豪華にする必要が有るのか理解できないキラキラした作りだ。
「無駄に贅沢な部屋だな・・・」
『うら若き女性達を招待する部屋だよ。この程度あたり前だね』
キザなセリフに振り返れば白いスーツを着た子供が立っている。
やつの後ろにはドレスに着替えた深緑の鏃の4人が恥ずかしそうに控えている。
彼女達が居るこの場所はダンジョンコアの居るであろう最下層のエリア。
そして目の前の男子は千歳ダンジョンコアのアバターなのだろう。
所変われば・・・と言うべきなのだろうが、ダンジョンの趣味も色々だ。
男のコアの部屋か・・・何度も来たい場所では無いな。
七飯のメスガキの部屋は殺風景でダンジョンらしい物だった・・・
「どうじゃ、似合うであろう」
豊条院 芽芽 が恥ずかしそうに聞いて来る。
「似合うとは思うけど・・・・、
ダンジョンの中でドレス装備なんて、かなり不用心だと思うぞ」
彼女達の着ているドレスはアンティークなAラインドレス。
豪華なデザインで「キレイか?」と聞かれれば似合っているし美しい。
だが、個人的な好みで言えば、彼女達には現代日本の少女たちが着ている自由で活発なデザインの方が似合っていると思う。
前世の異世界では使命優先で自由な生活など無い堅苦しい生活だった彼女達だ。
この人生では自由でのびのびいて欲しい俺の願望なのかも知れないが。
「真君、女の子を喜ばせるチャンスなんだよ。ここは とことん褒めるべきだよ」
「ま、マコト 誤解するなよ。
俺達はダンジョン内で装備を外すほど弛んで無いぞ。
これはダンジョンの作り出した幻影らしいぞ。
ホログラムのアバターだ」
轟 鏡華と轟 春奈 の姉妹が焦って言い訳している。
何も悪い事では無いから言い訳はいらないが、あれが幻とは本当か?。
まぁ良いか、これ以上 衣装について言うと俺が悪者になる。
「それで、何で俺まで呼び出された?千歳のコア。
お気に入りの姫様たちだけでも魔力は足りるはずだが・・・」
『やれやれ、粗暴なナイトだ。
こんなの 早く見限って帰って来ておくれ、麗しきマドモアゼル』
あー・・
ここのコアもこの世界の情報を歪んだ形で真に受けているタイプだ。
今時、マドモアゼルとかヨーロッパの本場でも使っているのか怪しい言葉だ。
「粗暴で悪かったな、魔物と戦う探索者に何を求めてるんだよ」
上品にでもしろってか?
王宮のバカ貴族を思い出させないで欲しい。
『おやぁ貴方、我々に依存して生活している立場でよく言えますね。
この世界では探索する以外は何の能力も無い落伍者なのです。
身の程を弁えなさい」
パン☆
「身の程を弁えるのは貴方です。
今のマコトを怒らせたら直ぐにこんなダンジョンは踏破されて
コアを砕かれてダンジョンが死にますよ。
彼を呼び寄せたのはケンカする為では無いでしょう。
本来の目的を果たしなさい」
ここに来て静観していた琴平 涼香がダンジョンコアに俊足で近寄り平手打ちを決めた。
何と言うか、この中で一番ドレスが様になっている。
悪役令嬢的な意味で・・・。
『うわあーん、お姉ちゃんがぶったー』
あざとくウソ泣きをしているダンジョンコア・・・なんだかなー。
『姉ちゃん達を攫って行った憎い奴に嫌味の一つくらい言っても良いじゃん。
・・・分かりました。降参しますよ。ボクの負けです』
「まるで子供じゃの。
このままじゃあ埒が明かないから 私が要件を伝えよう。
わざわざ兄様を呼んだのは話が 千歳ダンジョンだけの問題では無いからじゃ」
芽芽 達がネコ足のソファーに座ったので自分も対面に座る。
コアの奴がちゃっかりと彼女達の真ん中に座ったので少しムカつく。
小学生くらいの男子の外見なので 違和感が無くて実にあざとい。
「で?、何が聞きたいんだよ。
4人よりも上等な答えを言えるか知らんぞ」
『まったくだ、無駄だよこんなの』
パチュン☆
ダンジョンコアのデコに魔力を込めた砂を打ち込む。
鞭打ちになりそうなほど のけぞったコアが驚愕の涙目で睨んでくる。
他人を呼び付けてこの態度、ほんと神経 逆撫でしてくれる。
コアの本体に打ち込まないだけ良心的だと思ってほしい。
「もぅ、子供みたいにケンカしないの‼話が進まないでしょう」
****************
その頃、ダンジョン入り口にある大セイフティエリアでは・・・
「なっ!、お前たち その姿は何だ。血だらけじゃないか!
ケガしてるのだろ早く医療室に向かえ」
ダンジョン入り口から一つのパーティが血だらけのボロボロな姿ながら無事に帰還して来た。
その姿を見て、探索センターの保安職員が大いに慌てる事となる。
最近は他国の探索者関係で治安が悪化していたのでピリピリしていた。
「いやいや 騒ぐなよ、皆元気に歩いてるだろ。ケガはしたんだけどな」
「はぁっ?意味が分からんぞ」
「助けられたんだよ。
見えない誰かが重傷で動けなかった俺達に治癒魔法を使ってくれたんだ」
「こっちは心配してるんだぞ、真面目に答えなさい」
「あの、ちょっといいか?、
そいつらの言ってる事たぶん本当だぞ。
俺達も危ない所を助けられたからな」
続いて入り口から出て来たパーティが証言する。
「魔物の攻撃をギリギリで凌いでいた危ない時に声を掛けられたから
応援要請したら瞬時に魔物の目が潰されて、その後は楽に仕留められた」
「ホントだよ、それなのに探しても周りには誰も居なかったんだから。
動画も残してるから後でサイトにアップするのよ。
タイトルはそうね・・姿無きヒーローかしら」
撮影担当の女性は興奮しながら早口で状況説明している。
その姿はヒーローショウを見た後の子供の様である。
「はあぁっ!、ヒーローですって。頭おかしいんじゃないの?」
さらに後ろから聞こえる強気な声にその場の視線が向かう。
「おいおい、今度は何だ?。って、また違うパーティかよ」
「あれは死神よ。
あいつが一瞬で黒オークの首を切り飛ばしたのよ。
転移して消える時に真っ黒な影が映し出されたわ。
頭からフードで包まれて、手には禍々しい大きなカマが握られてたのよ。
次は自分の首が飛ばされる気がして心底 恐ろしかったわよ。
あれは絶対死神以外に無いわ」
「あら、おかしいわね。
死神が回復魔法を使って私達を助けたって言うの?」
「回復魔法で重傷者を治したですって?
ポーション飲んでラリってたんじゃないの?
こっちには動画が残ってるわ。
あの恐ろしい姿はバズるわね」
「何ですって、ラリってたのは貴方でしょ。
死神が黒オーク倒して探索者を助ける方が不自然でしょうが」
複数のパーティが結論の出ない口論で炎上していた。
双方が動画を残していた事からさらに話は広がり、
見えない強者の噂は後に千歳ダンジョンの都市伝説?となっていく。
**************************
ダンジョンコアからの話を聞いた。
「要するにダンジョンの運営に必要なリサーチをして欲しいと?」
『多くのダンジョンは急激な規模の拡大で内部のバランスが不完全で歪なんだ。
特に問題なのが魔物を倒した後にドロップするアイテムのバリエーションだ』
「確かに、探索に来るための呼び水が欲しいならドロップ品の充実だろうな。
実際、オリハルコン鉱石が見つかってゴールドラッシュに近い賑わいに成ったし」
『その事なんだけど、他のダンジョンとも協議したんだ。
やはりオリハルコンなど貴金属や宝石などはコストが掛かりすぎる。
それほど高価にはならなくても人を引き付ける魅力的な景品が知りたい』
「人間達が欲しがる物か・・・まぁお金、だよな」
「偽札はダメよ。日本では紙幣の管理は徹底してますから、
ダンジョンが紙幣を作っても偽札扱いになりますよ。
せいぜいが亡くなった人の遺品のお金を宝箱に出すのが限度でしょうね」
「お金やお宝 以外で人々が欲しがる物が知りたいのよ。
でも中々名案が浮かばなくてね男の人のマコトにも来てもらったの」
あらためて聞かれると思い付かないな。
意外とやっかいな話だ。
「国として考えるなら、日本が欲しいのは原油だろうな。
他にも天然ガスとかの地下資源だな」
『それは難しいけど 考えてみる価値は有るね』
「でも、それって大量に、しかも継続的に必要な物よ。
探索者の手に余るわね」
「こうして考えてみると意外と欲しいものが思いつないわね。
欲しい物は大抵がお金で買えるから結局お金が欲しくなるしね。
あと欲しいのは若さと健康かしら」
「ポーションなんかは魅力的だけど効果の高い薬は止めた方が良いわよ。
製薬会社や医者の団体から利権侵害でケチが付けられるわ」
こっちの世界は利権が絡むと正義何て無視されるからな。
医者の利権問題のドロドロした話はドラマになるくらいリアルな話だし。
例えそのポーションを使えば救える命だと分かっていても利権と面子に拘って
国から使用許可が出ない可能性は高い。
前世の社会ではそんなケチなど付かなかった。
前世の世の中にも良い面があったようだな。
「ダンジョン同士で連絡する為にネット環境に介入してるんだろ?
それなら、掲示板とかで要望を聞いてみたらどうだ。
『ダンジョンでドロップして欲しい物は何ですか?』ってな感じで」
『我々は不法にネット内に侵入している立場なので介入する事が怖かったのですが、確かに有効な手段だね。最初に質問を投げかける位なら注目も警戒もされないかも』
「うん、その手は良いわね。
それなら皆が気楽に本音の欲望を吐き出してくれそう」
「じゃあ、方針も決まったし今日はこれで解散しましょう。
それぞれ考えてデーターが集まったらもう一度集まる感じで良いかしら?」
『分かりました。
名残惜しいですが、もうすぐ夜ですから皆さんを入り口まで送迎いたしましょう」
今日も不自然にならないようにドロップアイテムのお土産をもらって地上に戻った。
この時の相談事が後の日本の在り方を大きく変える事になるのは誰も知らない。




