第39話、ぐだぐだしてます。
メメ達のパーティハウスでグーパンで殴られた?
見ると廊下には深緑の鏃のメンバー4人と一人の男。
怒り狂っている男が一人、
悲しそうな豊条院 芽芽 、
驚いた顔の轟 春奈 、
困った顔の琴平 涼香、
話をしていた轟 鏡華は今にも笑いそうだ。
なにこの状況・・
「いでで・・・・にゃにする、あねき」
「弟だから特別に家に入れてあげたのに、暴れるなら追い出します」
「でもよぅ、こいつ許せねぇだろ。男なら筋通してもらわねぇと」
琴平 涼香の弟?
そりゃあ弟くらい居るだろうけど、見るからにチャライ軽薄なヤンキーの見た目で とても彼女の身内には見えん。
ほっぺた抓られても怒らないあたり、お姉ちゃん子だな。
「おい、ヒモ野郎よく聞け。俺様は札幌血弾会総長 琴平 大悟郎だ。
うちの姉貴に手ぇ出しやがって只で済むと思うなや」
「手を出した・・・じゃと!。
兄さま、私より先に涼香に手を付けたのですか?」
「芽芽さん、転生したのですから、
・・・いい加減ブラコンは止めましょう。
それに 真さんは私に何もしてませんよ。
むしろ手を出して欲しいですわ」
来る早々、何でこんなカオスな状況に成ってるんだ?。
まぁいい・・まずは、
「で、札幌血弾会って何だよ。広域指定暴力団か?」
「族に決まってんだろ。
東京の奴らだけがヤンキーじゃねえぞ」
ヤンキー・・ねぇ・・。
女にモテたいけど、自分が目立つ方法がそれしかない男の集まりだよな。
「ええい、大悟郎など どうでも良い。
男同士でジャレてるで無いわ」
「えーっ、そりゃないすよ。メメさん」
芽芽にとつては 男同士の殴り合いも 遊びに見えるらしい。
俺、殴られたのに・・・
まぁ、レベル高いからダメージほとんど無いけど。
「そんな事より、真兄様。
結婚する気が無い、とはどういう事じゃ。
ここに何時でもプロポーズされるのを
待っている可憐な女子が複数おるのじゃぞ」
えーーっ、プロポーズしろってか?俺まだ15だぞ。
もう少しで16だけど。
そんな歳で結婚とか平安時代かよ。
メメ達だって同じくらいの年齢だろが・・・
「マコトー、やっぱお前とは気が合うな。
いいじゃん、結婚なんてしなくても。
年取ってから老人ホームに入れるだけ金が有ればオッケーだぞ」
「何を言ってるのかなー姉さんは・・・
せっかく生まれ変わったのに また一人寂しく死んで行く気なの?」
「何が また、だよ。
俺は前の人生じゃ嫁さんも居たし 孫まで居たぞ。最後は病気で死んだけどな。
死に際に何人も家族に看取とられたけど、息を引き取る瞬間は結局自分なんだよ。
どんなに有名だろうと、地位が有って偉かろうと、多くの人に惜しまれようと、
死ぬ瞬間は絶対に自分一人だ。
だから孤独死とか悪く言われても恐れる必要なんて無いんだぜ。
これぞ経験者は語るだ」
轟 鏡華の前世 バルヘルムの最後は病死か。
何か納得だ。
鏡華は天寿を全うしてるから 色々達観した考えが出来るんだな。
にしても脳筋なバルヘルムが哲学的な事を言っているのは違和感が有るなぁ。
しかも、何故か この世の真理に聞こえる。
「それによー、日本だと死んだ後の遺骨、あれが問題だろ。
墓に入れようが 納骨堂?だったか・・
そこに入れようが 後で家族に金銭的な負担が掛かるだろ。
残された家族に延々といつまでも迷惑かけるなんて嫌だね」
おいおい、そんな先まで考えてたのか。
確かに死んだ後で ずっと子孫から迷惑に思われるのは嫌だけどな。
「ただな、最後の心配は 死んだ自分が最後に残す巨大な生ごみ。
要するに自分の死体だけど その後片づけは自分じゃできねぇ。
そうだろ」
「前世は世の中が丸ごと消し飛んだから心配無かった。
むむっ、確かに平和な日本なら家族が死体を葬る事になるのぅ」
「だからな、自分の最後が近いと思ったら、
意地でもダンジョンに入って死のうと思ってる。
魔力が多い死体はダンジョンが喜んで消してくれるだろ。
最高だぜ」
おおおーーーーっ。
若いのに今から死んだ後の始末まで考えてたのか。
見直したぞ。
ああ、そうか・・・なるほど、それでか。
「じゃが 待つが良い、
そんなのは結婚してても出来るであろう」
「いえ、家族が大切に思ってくれるほど
老人のダンジョン行きは反対されるでしょうね」
「俺は今の鏡華の話を聞いて納得しちゃつたよ」
「えっ? マコトさんには独身主義に納得して欲しくないのですが」
「いや、そっちじゃない。
涼香は老人達がダンジョンに集団で突撃してるの見た事無いか?」
「有りますけど、・・えっ、それってまさか」
「俺も最初は老人ホームのダンジョン見学会 程度に考えてたけど・・・
後腐れ無く死ぬために来ていると考えれば納得も出来る。
中には自分の意志じゃなく、家族に追いたてられて入っている年寄りも居るかもな。
いわゆる現代版の姥捨て山だ」
「私、その話 嫌い。
日本の歴史の中の世界に見せたく無い恥ずかしい汚点だよね。
本当に日本人がそんな事してたなんて信じたく無いもん」
「別に日本だけの事じゃないさ。他の国にも有るぞ」
「ああ、それなら。お伽話や伝説になってますね」
「伝説?」
「西洋では昔、森の中に魔女が住んでるから子供に近寄るなと教えてましたわ。
大人達が老人を捨てた恥を子供に教えたくなかった、と考えれば辻褄も合います」
そうか、
老婆を捨てて死んで欲しかった。
けど 年寄りは生活力が有った。
森の木の枝を杖にして歩き。
ツボで煮炊きをしてでも生き延びていた。
さらに知識が有るからクスリすら作っていた。
まさに魔女の姿だ。
知られたくなかった現実。
消したかった真実。
それが物語として残ったのでした・・・か。
皮肉な話だ。
「なら話は簡単じゃ。
老人になって最後が近くなったら夫婦でダンジョンに入れば良い」
誰とも無く 一斉に笑いが起こった。
大悟郎は話が退屈なのかいつの間にか部屋から出て行った。
二十歳にすらなっていないのだ、死ぬ話など他人事である。
「でじゃ マコト、誰を選ぶのじゃ?。
日本では一人しか伴侶は選べないのじゃぞ」
ピシーーッと空気に亀裂が入ったような気がした。
この場でソレを言うのか?
世の独身男達から、羨ま死ね、とか言われそうだ。
だけど結婚する気が無いのにモテてもな。
ハッキリ言えば結婚なんて考えるだけでもメンドクサイ。
ほんとに、ダンジョンの中で暮らしたくなってきた。
世の中は窮屈だよ。
ここは一先ず 話の流れを強引に変えよう。
「それより、ハラへったな。
招待された客としては手料理を楽しみにして来たんだけど。
女子がこれだけ居るしさ」
「・・・・・」
全員が押し黙った。
結婚うんぬんの前に普通の生活力に問題有るな。
彼女達なら経済力でカバー出来るけど。
全ての食事が外食やデリバリーじゃ家庭の意味ほとんど無いよな。
家庭を作るなら結婚は始まりで ゴールじゃ無いと思う。
「まぁ良いか。さっさと話を終わらせて何か食べに行こう。
今日 集まった本当の理由は何だ?
何か話が有ったんだろ」
「そうじゃった。
先日は涼香の誘拐騒ぎで里帰りのノルマが果たせなかった。
涼香がダンジョン探索を禁止されると深緑の鏃としては大打撃じゃ。
そこで今回はパーティ全員で札幌に帰郷しようと思っておる」
よし、話の方向性が変わったぞ。
「なるほど、留守番は心配するなよ。
七飯ダンジョンは任された。自宅警備員は得意だぞ」
「あい変わらず女心の分からぬ兄上じゃの。
一緒に来て欲しいのじゃ。
そして千歳ダンジョンにも同行して欲しい」
「千歳はホームグラウンドだったんだ。
今更 付き添い何ていらないだろ」
「マコト君。私たちは千歳ダンジョンにも死んで欲しく無いの。
深緑の鏃が七飯に来て千歳の魔力が不足している可能性が有るのよ。
海外の勢力が意図的にダンジョンを消滅させようとする可能性も高いわ」
「七飯ダンジョンは今回魔力を充分補充してるから心配ないし、
一緒に来てくれるわよね。ねっ」
退路がすでに無くなっている件。
皆には助けられてるし同行するのは吝かではない。
ないけど・・・札幌に行くのは途轍もなく嫌な予感がする。
「姉貴、早く出発しようぜ。
親父にも護衛するように言われてんだよ。
俺は都会が似合う男だからな。
こんな田舎はごめんだぜ」
都会・・ねぇ。
田舎者ほど そんなつまらない事を意識するんだよなぁ。
都会の人は逆に田舎のスローライフが大好きだぞ。
ん?ちょっと待て。
何だよ、今って? これから出る気なのか。
俺 何の準備もしてないぞ。
騒音が聞こえるので 外に出ると悪趣味な車が並んでいる。
少し前に襲撃して来たイモヤンキーの集団だ。
「ああーっ、ここに居やがったのか。寄生虫野郎。
よくも嵌めてくれたな。タダじゃおかねぇ」
護衛って、まさか こいつ等か?
こんなの引き連れて札幌まで行進とか恥ずかし過ぎるだろ。
しかも、野郎どもの俺に対するヘイトが高すぎる。
「あらあら、静かにしてくださるかしら。ご近所に迷惑だわ」
「何だと、あっ。涼香の姉さん・・・でもよぅ」
「お前たちの事を心配して言ってるのですが・・・
マコトさんは、近いうちに家の若頭になる人よ。
いずれは、私の旦那になって組長も狙えるわよ。
この意味、分かるわよね」ふふっ
「えぇーーっ、マジっすか!」
「ちょっと、涼香。何を勝手に進めてるのじゃ」
「そうですよ。マコトさんは私とタワマンに住むんですよー」
やっぱ、ダンジョンに住もうかな・・・・




