第38話、インターナショナル?
ここは日本秘境探索センターの中の所長室。
所長の鮫島と対面でソファーに腰掛け、話を聞いている状況だ。
今の状況を分かり易く言えばモブな冒険者の俺が
冒険者ギルドマスターに呼び出された、と言えば分かり易いだろう。
「最近は他国からの要請も多くてね、先日 特別秘境の管理規定が一部変わった。
そう、探索者が手に入れた資源の販売先を推薦する事が出来るようになった。
それため自国に資源をより多く送りたい海外勢が強硬手段に出てる訳だ」
「まぁ そんな事だと思ってた。
帰りにも安全地帯で 破壊された建物を見ましたよ。
危険だし近寄らなかったけど・・・」
勿論 大ウソです。大いに暴れて来ました。
「本当に 胃が痛い話だよ。
ダンジョン内部に建築するのは自己責任で行われているから私達に責任は無いが・・争いでは恐らく殺人も行われているだろう。放置もできないし困った問題だ」
私達って・・俺は関係無いからね。巻き込まないでね。
「襲ってるのはたぶん軍人かマフィアの武闘派でしょ。
探索者とは言っても一般人には対処できないよ。
このままだと、いずれダンジョンに潜るのは人殺しだけになるね」
「やはり 警備員でも配置しないとダメかね。
藤原君も立候補しないかい?」
「荷物持ちで有名な魔法使いの俺に何言ってんですか」
「君、強いでしょ。考えてくれないかね」
鮫島の顔つきが変わった・・本気の顔だ。なるほど
「ははは、お断りします」
どうやら これが言いたくて呼び出したのか。
誰がそんなもんやるかよ。
そんな肩書いらん。
ダンジョンの中のプレイヤー全員が海外からの殺人鬼でも俺は平気で入る。
何の問題も無いな。
「もう良いですか。仲間と打ち合わせが有るからこれで失礼しますよ」
「ああ、すまないね。ありがとう。
深緑の鏃のメンバーにも伝言を頼むよ」
「はいなー」
前世のギルドもそうだったけど、こんな場所は退出する切っ掛けが難しいよね。
はぁ、疲れた・・。
今日はこの後 メメ達のパーティハウスに呼ばれている。
世間の注目が集まっているので俺の家だとセキュリティに不安が有るのだとか。
中古の平屋だしな・・・のぞき放題だし会話だって盗み聞きされかねない。
でも まぁ、セキュリティか・・・そんなもの路上には無かったよ。
ダンジョン前の駐車場の並びにはデカい警察署があるので安全だ。
だが、一歩陰に隠れて見えなくなると途端に物騒になる。
「@@@@;@:@@@@‼」
今も俺を取り囲んだ10人くらいのアジアンピープルが、
ギャーギャーとデカイ声で知らない言葉を喚き散らして絡んでくる。
「日本語覚えてから出直して来い。バーカ バーカ分かんねーだろ」
こっちも言葉が伝わらないのを良いことにガキみたいに煽ってやる。
不思議と バカにしている事はニュアンスで伝わるけどね。
こっそりと身体強化のスキルを使って警戒も忘れない。
さすがに外で首チョンパは出来ないし。
ダンジョンみたいに死体が消えないから めんどくさい。
「なるほど、有名パーティとつるむだけあって良い度胸してますね。
ここに居るのは全員 何某かのクンフーを習得した猛者達です。
貴方に勝ち目は有りませんよ」
さすがに通訳は居たらしい。
それより話しが有るなら最初から出て来いよ。
すでに不愉快マックスなので こちらも話を聞く気は無い。
「あれっ 会話が出来る文明人も居たんだ?
ギャーギャー吠えるサルの集まりだと思ってたよ。
猛者っていうのはこれだけ集まらないと話も出来ない腰抜けの事か?」
偉そうに日本語を話す男のすまし顔がピクピク引きつる。
こいつらは何事も「自分の国が一番」だと教育されて視野狭窄な洗脳をされているから煽り耐性が低い。笑
こんなんでも交渉役なんだろうな。
修業が足りんよ。
「まぁ良いでしょう。我が国の国家主席が貴方に依頼したい事が有るのです。
同行していただきますよ」
「あ?、嫌ですよ。アホらしい」
何が悲しくて他国にこき使われなきゃならんの。
「つっ!@@@@@」 きえぇーーーっ
ならば力づくで、ってところかな。
一斉に襲い掛かって来た。
だが、マコトさんの身体強化は現在レベル2にしてある。
これで 対人戦なら達人レベルの動きが出来る。
普通の人間の範疇はここまでで打ち止め。
レベル3まで上げると早すぎてスキル使用がバレるので外では使えない。
ヒラリ ヒラリと回避しながらジャブを打って的確に相手の鼻の骨を折る。
全力で殴るとこっちが痛いし 死なれても困る。
襲撃者は次々と鼻血をたらして血まみれになる。
正に鼻っ柱を折られた形だ。徐々に戦意も失ってくる。
これでも諦めないなら胃に穴を開けて地獄の苦しみをプレゼントするつもり。
だけど・・・
予定は未定の法則が働き
キキーッ☆ バタン☆ バタン☆ バタン☆ バタン☆ バタン☆
乱闘を取り囲む 派手なカラーリングの ダサイ シャコタン車。
「見つけたぜ、俺達の女神を連れ去った寄生虫のグズ魔法使い。覚悟しやがれ」
何だ・・・あぁ、こいつらは知らんけど悪趣味な車は見覚え有る。
千歳ダンジョン入り口で騒いでいたイモヤンキーの集団だ。
全部で10人位かな。金属バットとか持ってる危ない奴らだ。
深緑の鏃を追いかけて来たのか。
よりによって こんな修羅場の争いに飛び入りかよ。
・・・!あっ、良い事 思いついた♫。
「おーっ、よく来た。待ってたぞー」
そう言ってヤンキー達に笑顔で手を振る。
ヤンキー達はビックリ宇宙ネコの顔。
言葉が通じない脳筋外国人がそれを見ればどう思うか。
この後は 外人VSヤンキーの大乱闘。
当然 住民に通報されて警察が駆け付け、双方共に逃走した。
もちろん、既にその場には俺の姿は無い。
こちとら伊達に前世の乱世を生き抜いていた訳じゃ無いのだよ。
魔族にすら悪辣だと言われた俺だぞ
・・・チョロイわ。
やって来た深緑の鏃のパーティハウス。
近代的な最新式デザインの新築3階建てビル。
入り口には警備員まで居る。
警備員には話が通っていたのか 彼は身分証でもある探索者カードを確認すると
すんなり通してくれた。
中に入ると玄関の壁にデカイ絵が飾ってある。
絵画では無い。
ネットの動画などで使われているファンタジーな一枚絵のイラスト?。
それも色あせないようにスチール画?で作られた物だ。
金 掛かってるなぁ。
「マコっち、いらっしゃい。どぅ、驚いた?キレイでしょ」
「あぁ、素晴らしいな。
こんな楽しみ方も有るんだな。ホント凄いよ」
「えっ、そんなに本気で褒められるなんて思わなかったよ」てへっ
轟 春奈 が珍しく照れている。
この絵を飾っているのは彼女の趣味なのか。
意外な一面が知れたな。
他にも許可されている場所には違う絵が飾られているらしい。
「だめだよマコト。
こいつ調子に乗るから そんなに褒めたら壁がそれで埋め尽くされちまう」
轟 鏡華は妹の趣味に理解が無いらしい。
前世から脳筋な奴だから無理も無いけど・・・。
「廊下にも飾ってるのか・・・暗くてよく見えないから勿体ないな」
「昼はそうだけど夜になって明かりを付けると違うのよ」
「でもこれ、著作権とか大丈夫なのか?
まぁ 自分だけ楽しむ趣味なら見逃してくれそうだけど」
「ふふーん♫。ちゃんと作者から買ったもん。
裏にサインもあるのさ。いいでしょう、にひひ」
このサイズのオリジナルを買ったのかよ。
デジタルだし一点ものでも無いだろうけど。
値段は御いくら万円なんだよ。
「ちなみに一枚で幾ら掛かったのか聞いて良いか」
「百万は下らないとだけ言っとくよ」
「なるほど・・」
「何がナルホドだよ。感心しないでくれよな、
こんなのに車買えるような金使う何て信じらんねーよ」
「そうか?
俺はいずれ数億円 集めたらゲーム会社に依頼して
好きなゲーム作ってもらう予定だぞ」
「うわーっ、ここにも居たよ。金をドブに捨てる奴」
失敬な、後世に残る文化に金を使うのは最高の贅沢なんだぞ。
ちなみに今時の本格的なゲームは製作費数億 程度の予算では難しいけどな。
先は遠い、けど夢とは追うものだ。
「そう言う鏡花は何に金使うんだよ。
お前だって稼いでるから金持ってるだろ」
「そんなもん、老後の生活資金に決まってるだろ」
「「はぁぁっ?」」
「何で今からそんな心配してんだよ。お前まだ高校卒業したくらいだろ」
「何だよ、マコトなら分かってくれると思ったのに。がっかりだな」
何で俺が分かるんだよ。一緒にすんな
「そんな事はいい。理解できねぇから説明はよ」
「決まってんだろ、俺は前世で男だったんだぞ。
女に生まれ変わったからって男と結婚なんてしない。絶対だ‼
腐った女の妄想じゃあるまいし、考えるまでも無く気持ち悪いぜ。
一生独身だから子供も作らない。
老後も一人なんだぞ、今から心配するだろが」
「うへぇ・・・そう言うの取り越し苦労とか言わないか?」
「何言ってんだよ、マコトだって他人事じゃねぇだろ」
「なんでだよ、他人事だ」
前世みたいに 何時死ぬか分からんのに老後の心配なんかするかよ。
「じゃあ聞くが、女にトラウマ抱えてるマコトは結婚する気が有るんだな?」
!うっ、
「有るんだな?」 ニヤニヤ
「くそっ、んなもの無ーよ」
「「「「なんだと」」」」
ゴスッ☆
「てめぇ、結婚する気もねぇくせに姉貴に色目使って 弄んでたのか。許さねぇ」
いってー、いきなりで何事か分からんけど殴られた?。
グーで・・・
それより男?・・・誰だこいつ




