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第31話、さらに故郷は騒々しくなった

その日、世界を震撼させる発表が日本政府から行われた。


「あー・・この度 我が国は超高性能な電力発生システムと電力増幅バッテリーの

開発に成功した旨をここで発表いたします。これにより電力供給は数倍の発電量となり、

夏場の都心での電力不足は解消される見通しとなりました。

今後は各地の発電所にこれらのシステムを順次導入する方針となります」


「おおっ」


「さらに高性能なバッテリーの存在によって 今までは開発が頓挫していたEV自動車の今後に

大きな可能性が生まれた事を意味します」


「おぉっ。それは凄い」


「質問よろしいですか?」


「あーー・・・。とりあえず手短にどうぞ」


「今日の発表は先日発見された新しい金属との関りは有るのでしょうか?」


「質問に答えたいのは山々ですが、その辺の情報につきましては各企業の極秘扱いとなっておりますので我々にはお答えする権限はございません」


「しかし、実質的に今日の発表は その可能性を公表したのと同義かと思いますが」


「実を申しますと本日の発表も政府間で是非を巡って喧々囂々(けんけんごうごう)の話し合いがございました。ですが、この件はいずれは世間に知られるのは確実。

そして今の世界には『自分が最初に開発した』などと恥知らずな事を平然と言う国や企業が多くなってまいりましたのも事実。

ならば、我が国が開発した事を正式に立証する事こそが開発に尽力した研究者の労に報いるものと多少のリスクは覚悟の上で発表と成りました事を御理解いただきたい」


「あー・・なるほど」


「本日発表した発明は我が国が開発した技術であります。

何者にもこの事実を汚す事は許されません」




*************




久し振りにテレビを見ていると、何とか大臣が政府としては珍しく熱の籠った発言をしていた。


どうやらオリハルコンはIT産業にとっても優秀な金属だったようだ。



それにバッテリーが高性能に化けたのは高濃度の魔石が原因だろう。


いずれにしても 今後は七飯ダンジョンの重要性が予想以上に高くなる。


と言うか大暴騰 レベルだ。


しかも、さらに深く探索すれば別の資源も期待できるのだ。


他国の介入も多くなるだろうから世界一の無法地帯に成りかねない。


ダンジョンの責任者のオッサンは胃に穴が開くかもな。



そう言えば・・そろそろダンジョンコアに魔力を補充しろとせがまれそうだ。


特に苦労する訳でも無いし、ダンジョンが弱体化されても困る。


メメ達に連絡は・・・・


また心配されて泣かれるのも困るし一人で潜るとしますか。




そんな訳で次の日、


ここ 最近は深緑の鏃(しんりょく やじり)とパーティを組んでいたのでソロ探索は久しぶりだ。


何日かぶりのダンジョンは入り口だけでも以前の倍は人が居る。


それだけでこの地域全体に大きな経済効果が見込める。


ゆえに 今やダンジョンは各地方自治体 垂涎(すいぜん)の観光?名所でもある。


がしっ☆


「見つけたわ♬」


誰だっけ?


大人の女の人だ。


年齢不詳。


女性の年齢は化粧である程度ごまかせるから俺ごときには鑑定できんよ。


まぁ、16歳の俺からすれば大人の女は総じてオバサンでしかない。


彼女は護衛らしき男達を手下のように引き連れていた。



「先日は危ない所を助けてくれてありがとう。藤原 (まこと)君」


「・・・・・・・・・・・・・・あぁ分かった。じゃあね」


「えっ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ。私が話しかけてるのよ失礼じゃない」


「誰か知らないけど、これから探索なんだ邪魔しないでくれ」


「新鉱石発見の記者会見でも会ってるのに忘れたの?」


あぁ・・・そう言えばこの女、メメ達が大企業のVIPだとか言ってた気がする。



「・・・興味無い」


「黙って聞いていればいい気になりやがって粋がるなよガキが」


今度は取り巻きのオッサンが吠えている。


無駄な時間だし、迷惑だ



パーン☆


「ぐわっ、いてぇ」


「ひっ」「えっ」「おいっ」


砂に魔力を込めて額に打ち込むと 吠えていた男は頭をのけ反らせる。


いわゆるデコピンみたいなものだ。


ただし5倍くらい痛いだろうけどな・・・



「次に敵意が向いたら目玉を潰す。ここは既にダンジョンだからな」


取り巻きの男たちも探索者だろう。


一瞬で警戒し戦闘態勢に入る。


ただし この攻撃は見えないからな警戒しても(かわ)すことはできないだろう。


前世の冒険者の中にはカンで回避する猛者も居たけど。


生きる世界が、修羅場の数が違いすぎる。


目の前の奴らにそんな芸当が出来るとは思えない。


人数と年齢が上なので立場も上だと相手をナメている脳筋なタイプだ。


彼我の実力差も読めない程度のレベル。


明日にも死んでいくような連中だ。



だからこそ 先制攻撃をした。


牽制しておかないと図に乗るからだ。


目論見通り、今の一撃でオッサンパーティは勢いを失くす。



「あぁもぅ、争わないでよ。男の人は血の気が多いわね」


「企業のスカウトもパーティの勧誘もお断りだ。

自由に生きられるのに自分から首輪を着けて欲しいはず無いだろ」


「それは違うわ。大企業に入れば立場も生活も安定するのよ。

結婚相手としても望まれるわ。

それに 今はいいけど年齢が上がれば探索者も辛くなるわよ」


「そうだ、そうだ」


オッサン達が頷いている。


確かに年齢と共に体力も無くなり探索者を続けるのは辛くなるだろう。


ただしそれは腕力だけが頼りなジョブに限る。


当然だが魔法職は違う。



魔力の使い方が上手い戦士なら 前衛だろうと老人になるまで現役でいる猛者はザラに存在した。


日本では魔法職を見下す傾向が有るせいか 総じて魔力の操作が下手糞だ。


特に前衛などはスキルは使うくせに魔力操作を知らないから体力が衰えれば引退するしか道は無い。


結果として自由であるべき探索者でありながら会社に飼われる事を望む。


この世界の常識にはこの手の魔力利用のノウハウは無いから 不安になるのも分かるけどね。



「結婚に興味は無い。

古い常識は俺には必要ないんだ、他を当たってくれ。おばさん」


「な…オバサンですって、私はまだ20代よ。おばさん言うな!」


「そこのオッサンにガキ呼ばわりされる俺からすれば充分おばさんだよ」


「俺はまだオッサンじゃねぇ」


「ふふっ、若いのに欲がないのね真君。私は貴方の将来性を気に入っているわ。

もしも、私と結婚する事に成れば世界一の自動車メーカーを手に入れる事になるのよ」


またその話か・・取り巻きの男たちがギョッとしているぞ。


下心見え見えだ。



「あのなぁ、結婚って・・・歳が離れすぎでしょうが・・・」


「そんなの、何も問題なんて無いわよ」


おいおい、オバサンどう見ても10歳近く年上だろ。


男が少しでも年下の女子に声を掛けただけで、変態だの、ロリコンだのと罵詈雑言(ばりぞうごん)(ののし)るくせに、自分たちは当然の権利みたいに結婚まで要求してるのかよ。


とことん身勝手だな、女共は・・・。


「この前も言ったけど真君はこれからの時代に必要な人間なの。

現時点でオリハルコン鉱石と高純度魔力石を採取できる探索者は

大リーグ選手以上の価値が有るのよ。

一番先にスカウトする権利は私の物なんだから逃がさないわ」


チッ、そんな大きな声で個人情報を言いふらすとか、危機感ねェのか、このバカ女。


一瞬であちこちから殺意こみの視線が注がれたぞ。


一見すると日本人の姿だけど、あれは他の国の人間だ。


他国の発展が面白くない国が妨害目的、あるいは新しい資源目的で入り込んでいるのだろう。


今後は欧米諸国からも調査目的で特務員が送り込まれてくるだろうし

この程度は序の口かな。


ダンジョン内で資源を巡って人間たちが殺し合いを始める。


その点は勝手にすれば良いが、

その刃が俺に向いたらそいつ等はダンジョンのエサになるだろう。



フォン・・・


「えっ、何だ」


「なにこれ」


俺の足元に魔法陣が輝きだす。


アニメのワンシーンのようだ。



ダンジョンコアは(しび)れを切らして人目を(はばか)らずにお迎えを寄越したらしい。


ははははは。事情を知らなければ俺が転移魔法でも使ったように見えるだろうな。


はぁ‥‥だけど またこれで周囲が騒がしくなりそうだな。




既に何度目かになる転移を終えると広い別空間。


『待ってたわマコト♡』


其処には

魔力を消費して小さな姿に戻ったダンジョンコアが歓迎してくれる。


招待するというより召喚されたのだ。


正確には俺からあふれ出る魔力目的の誘拐だが、まぁそれはいい。


ただし幼女姿は止めて欲しい。


どうせなら ネコやワンコ姿の方が嬉しい。



隣りに住んでいる魔王と同じで幼女は俺にとって鬼門なのだ。



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