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第28話、邪魔すんな

以前栄えていた町が寂れると多くの建物が老朽化し無人の廃墟と成る。


観光地として有名な函館市もそんな問題を抱えている。


一時期景気が良かった町ほどそれが終わった落差がはげしいのだった。


そんな廃屋を不法占拠してニタニタと悪だくみをしているのは世間から半グレと呼ばれている醜悪なグループである。




「ははは、そうか、しくじったか。さすがに名の知れた探索者だな」


「まぁ気にするこたぁねぇよ。こっちの存在が知られたのは痛いがな」


「クソッ、なめたマネしやがって」


新顔の野郎はカリカリしてるな。はははは


焦る事はねぇ、オレ達は時間に縛られねぇ。


女の探索者なんぞ拉致してAV撮影してネットに流すって脅迫すりゃあ、

後は俺達の性奴隷だ。


逃げられねぇようにしてからダンジョンに入れて稼がせれば良い。


それだけでオレ達ゃあ不労所得者って奴だ。


ブルジョアだぜ。ははは




昔はアイドルを拉致すりゃあ美味い思いが出来たから楽だったがな。


輪姦(まわし)まくってボロボロになったアイドルでも芸能事務所を脅迫すれば身代金(たかいかね)払って引き取っていった。


笑いが止まらねぇぼろ儲けだった。


今じゃアイドル何てグループ組んで一山幾ら・・・社畜社員と同じで使い捨てだ。


拉致して脅迫してもあっさり切り捨てられて終わりだから金になんてならねぇ。


時代は変わった。




この時代、金に成るのは探索者だ。ただし女のな。


ヤー公(やくざ)共も目を付けているみたいだが、やり方が目立ちすぎる。


バカだぜ


ロートルなマフィアのオッサン共なんて最早俺達の敵じゃあねぇ。


あいつら平和ボケして戦う気がねぇからな。


今は俺達の時代だ。



世間じゃ俺達を半グレとかハンパな呼び方をしやがるが、違うだろ。


俺達が本物(マジ)だぜ、正統な暴力団だ。



ただし目立つのは悪手だ。


俺らはあくまで一般人の振りをする。


だからこそ動きやすい。


組織作って派手にやればサツ共(けいさつ)が喜ぶだけだ。


犬はおとなしく死体処理だけしてれば良いのにキャンキャンうるせぇからな。



「まぁ、とりあえず警戒されただろうからな、拉致る手口を変えるぜ」


「あぁ、いいぜぇ」


頭はこんな時に使うものだぜ。


学校の教室の中で使う奴はただのバカだ。




-----------------------------





ここはダンジョン入り口に広がるドーム空間、大セイフティエリア。


俺、藤原 (まこと)は何故か一流企業から熱烈なスカウトを受けている。


「契約金は一億でどうかね」


「かーっ、ケチくせえな。俺の所に来い、10億出す」


「あら、その程度の金額は大リーグの契約金を知っている若者に笑われましてよ。10年契約の30億でいかがかしら?。何より私 が貴方を気に入りましたわ。入社してその貢献が認められれば私の伴侶として会社そのものが手に入りましてよ」


「「「「反対、却下だ(じゃ)」」」」


女性スカウトの言葉にメメ達が吠える。


大騒ぎになった・・・これから探索なのに迷惑な。



せっかく目立たないように鉱石を売らなかったのに別の形で注目されている。


ただでさえ メメたちのパーティ深緑の鏃(しんりょく やじり)と同行しているだけで騒がれるのに、

こんなスカウトされてたらマスコミがハエみたいに集ってくるぞ。


あぁ、さようなら・・俺の平和で安穏な日々



にしても世間から軽視されてる魔法使いに30億とか・・正気か?。


オレが探索者じゃなくて一般人なら是非もなく飛び付く金額だ。


ただ、金額だけ見れば破格の条件に聞こえるけど当然ながらそう甘くは無い。


まず年俸が幾らかで話が違ってくる。


例えば年俸が1千万だとする。


普通の社員なら高給取りだ。


だが探索者の上級者にとってはその年俸が一週間、あるいは一か月で稼げる金額だったりする。


つまり一年で一千万では安月給も甚だしい話なのだ。


それが10年契約・・大損である。


オマケに契約してしまえば自分のペースでダンジョンに入る事は許されない。


サラリーマンと同じ扱いで日曜以外は毎日素材集めが要求される。


会社で使われる、とはそういう事だ。




ちなみに、30億有れば俺が望んでいた事が叶う。


好きなオンラインゲームの新作をゲーム会社に制作依頼できるだろうし、

制作資金が有るならゲーム会社もOKする可能性が高い。


ある意味、望みが叶うラノベの御都合主義のような金額だ。



ただしだ、ここで忘れてはいけないのが時間だ。


自分がそのゲームをプレイして楽しむ時間がほぼ無くなる。


それではゲームを作る意味が全く無いのだ。


結論だけ言えば会社に入るメリットは一つも無い。


これ以上は考えるまでも無い。




「皆、行こう。今日の探索は深度トライアルだし、時間がもったいない」


今日の目的は 深緑の鏃(しんりょく やじり)と同行しての最前線アタックだ。


ダンジョンの規模が更新されて大きくなってからの最深部を目指す。


ついでにオリハルコン鉱石発見の手柄を 深緑の鏃(しんりょく やじり)パーティに(なす)り付けよう。



「えっ、ちょっと待って、話は終わってないわよ。不満なら50億出すから」


「おおーっっ」「マジかよ」「俺が行きたい」「裏山」ガヤガヤ


スカウトの女性はまだ諦めていないようだ。


ついでに、周りのギャラリーがうるさい。


「50億が千億でもその話は断る。話は終わりだ」


「どうして?・・・

会社に入れば社会的に立場も出来るし生活も安定するから堂々と結婚もできるわよ」


「結婚?、いらねーよ、そんなもん」


「「「「「「ええーっ!」」」」」」


結婚拒否の発言に、何故か沢山の不服の声が響く・・?。


結婚?、ケッ‼


前世では腐るほどハニートラップ仕掛けられてウンザリしてんだ。


新しい人生なのにあんな結婚がらみのゴタゴタはこりごりだ。




この人生は自分が楽しむために生きる。キッパリ宣言


その楽しみがゲームとか言えば「ガキっぽい」とか言われそうだけど


人間の楽しみなんてほとんどが子供みたいに無邪気なものさ。


Hな事は大人の楽しみだって?


それこそ青臭い若者(ガキ)が喜ぶものだろう。


本当に大人になると夫婦でもHなんてしなくなる。


Hなんて本来は汚い、臭い、キモイの3Kなんだよ。


若い本能からの欲望が無ければ誰もしないだろうぜ。


えっ?スケベ爺も居るって?


そいつは歳だけジジイで心はガキなんだろう。



逆に言えば、大人って何なの?


楽しみも無く奴隷のようにただ働いている人を大人って言うのだろうか?


その人は何のために生きているのだろう・・


・・・・悲しい



そんな人生は前世だけで懲りた。


アニメやゲームを理由(たのしみ)に生きて何が悪いかって言いたい。


その為に働くのだ。


しかもダンジョンで命を懸けて。


苦情は受け付けんよ。



「会社には入らないよ。鶏口牛後(けいこうぎゅうご)って言葉知ってるだろ。

大きな会社の社員は肩書だけは立派だけど実態は組織のケツだ。

上の誰かが食べた美味い利権のクソを処分する立場でしかない。

それより小さくても自分で美味い物を食べる立場の方が良いって事だよ。お姉さん」


「おやっ、鶏口牛後ですか・・・久し振りに聞きましたね。

私も若い頃はその言葉を働くはげみにしたものです。懐かしいですな」


「そうじゃのう・・そんな時代も有ったな」


「ちょっと、大会社の年寄りが二人して納得しないでよ。私は諦めませんからね」


「だから・・俺達これから探索なんだってば。

ジャマだから一時間ほどそのままでいてね」


「えっ?、あ、あれっ。なにこれ、動けない」


「うぬっ、これは魔法か。喧嘩空手5段のワシが全く動けん」


俺をスカウトしている物好きな三人と 深緑の鏃(しんりょく やじり)をスカウトしていた全員を魔法で拘束した。


しかし・・・、この程度の魔法でも驚くのか?。


魔法に免疫が無さすぎだろ


攻撃魔法以外は普通に使えるのに誰も注目しないからな。



探索に有効な魔法も多いのに、パーティには使える人が居ないのだ。


そりゃあ探索レコードが進まないはずだよ。




とりあえず・・・これでやっと探索に行ける。


「それじゃあ、ロッカーで装備に着替えたら集合な」


「真さん・・今日こそは(例の装備)よろしくね♡」


琴平 涼香(ことひら すずか)が言いたいのは「前世の装備を使わせろ」だ。


言い方がアレだが誘惑してる訳では無い、と思う。


「分かってるって。深く潜ってからな」


「「「「わーい」」」」



装備のグレード、魔法の準備、そして何より気持ち的にも


生まれ変わってから初めて本気でダンジョン探索しようとしていた。



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