僕らが風を追い越す日 9話
文化祭の後、空気はすっかり秋らしく、冷たく澄んだものへと変わっていた。
屋上から見える空は、紫色とオレンジ色が混じり合っていて、まるで一日の終わりを告げるかのように広がっていた。
「――よし、行こう」
麻生悠斗は、心の中で自分を奮い立たせていた。
自分が今まで伝えられなかった気持ちを、今、やっと――花蓮に伝えよう。
その決意を持って、悠斗は文化祭が終わり、人々が帰り始める中、静かな夜の校舎へと向かっていた。
一方、千葉大輝と山本ひまわりもまた、何かを決めたように歩いていた。
文化祭の余韻が残る中で、二人は言葉を交わしながら、ゆっくりと歩いていた。
「ねぇ、大輝」
「ん?」
ひまわりが振り向き、大輝の目をしっかりと見つめる。
「私、これから……ちゃんと、向き合っていこうと思う」
大輝は少しだけ驚いた顔をしたが、すぐに笑って言った。
「俺も。だから、今度こそ、後悔しないように全力で行こう」
その言葉に、ひまわりは静かに頷いた。
二人の距離が、自然に縮まっていくのを感じていた。
そして、バスケ部の試合は続き、大塚公司の活躍が光る。
その姿を見ていた長濱麗亜が、ふと心の中でつぶやく。
「やっぱり、彼はすごい……でも、私は――」
その先を考えながら、麗亜は試合をじっと見守った。
まだ、自分の気持ちを確かめる時間が必要だった。
中村海偉は、グラウンドの隅で一人で走っていた。
以前のように、誰かを気にすることなく走ることができるようになった。
「……もう、迷わない」
彼は、しっかりと決意を固めた。その目には、自分自身を超えていく強さが宿っていた。
その頃、清水裕也は、文化祭後の疲れを感じながらも、スマホの画面を見つめていた。
「俺も、やりたいことをやろう」
彼は自分の心に決意を持ち、また新たな挑戦に向かって動き始めた。
夜、学園の裏庭。
高橋花蓮は、静かに歩いていた。
「――あ、悠斗?」
彼女は、足元に転がる落ち葉を見ながら、心の中で何度も彼のことを考えていた。
その時、悠斗が現れた。
「花蓮、ちょっといいか?」
花蓮は、無言で彼に頷き、二人は並んで歩き始めた。
「俺、ずっと言えなかったんだ……花蓮のこと、好きだった」
悠斗の言葉に、花蓮は驚き、そして静かに目を伏せた。
「でも、俺は今、自分の気持ちを伝えたい」
花蓮は一瞬、立ち止まった。
「悠斗、私も――」
その時、二人の間にあった何かが、ゆっくりと解けていくような気がした。
未来は、手を伸ばせば届く場所にある。
それぞれが選んだ道を進んでいく。
そして、青春の終わりが近づいてきた。
次に進むためには、もう一歩踏み出さなければならない。




