~僕らが風を追い越す日~4話
特にいうこともねぇな
これもうわかんねぇな
夜10時。
スマホの画面を開くと、グループチャット「2-B」が動いていた。
金田ヒカリが今日の自撮りを上げて、
「今日のコーデ。評価よろw」と軽く煽る。
そこに反応したのは大西健多。
おいそれもう犯罪レベルで可愛いってwww
明日スカートの長さ1.5倍にしてこいww
そのコメントに、何人かが「草」とリアクションを押す。
でも、上原あんなは黙っていた。
もう、健多にときめかない。いや、そう思い込もうとしてるだけかもしれない。
一方、別のチャットルーム――
麻生悠斗と高橋花蓮の個チャ。
悠斗:今日は一緒に帰ってくれてありがとう
花蓮:こちらこそー!なんか久々にゆっくり話したかも!
悠斗:…あの時、花蓮が声かけてくれたの、嬉しかった
花蓮:え、いつの話?笑
悠斗:小4の時、保健室来てくれたよね。まだ覚えてる。
スマホを握る花蓮の手が止まる。
(そんな昔のこと……)
忘れていたわけじゃない。でも、まさか覚えてくれてたとは。
花蓮:うん、覚えてるよ。悠斗、あの頃すごく寂しそうだった
悠斗:今も、ちょっとだけ。
悠斗:でも、今日はちょっと、違った
返信しようとして、指が止まる。
胸が、少しだけあったかくなる。けれどその“あったかさ”が何なのかは、まだ分からなかった。
同じ頃。
山本ひまわりのスマホにも通知が鳴る。
TikTokのDM。
アカウント名――Daiki@Masked
「元気?」
(……なんで、TikTokのアカで送ってくんの)
彼女は、ためらった。何度も何度も打ちかけては消して。
ひまわり:なんで、今さら?
既読になって、すぐに返信が来る。
Daiki:顔、出せないけど。
Daiki:本当は一番、見てほしかったの、ひまわりだったんだ。
心臓が、跳ねる。
スマホを落としそうになって、必死に息を整える。
でも、そのあと何を返せばいいか分からなかった。
その夜、画面の中では、たくさんの言葉が交差していた。
本音も、建前も、嘘も、願いも。
言えなかった「ひと言」だけが、
でも――どんなに打ち込んでも、胸の中に残った。
これからもよろおおしく




