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空き教室の私と彼②

 放課後は友達と下校し、たまに寄り道をして帰宅。

 それがいつからか時々、彼と空き教室で過ごす様になった。


 その日、日直で放課後に残っていた時に他クラスの男子に声をかけられた。

「ねぇ、それ終わったら俺たちと一緒に帰ろうよ」

 同じ日直の子が用事で帰って無ければあしらうのは簡単だったのに…。

「ごめん。今日用事あるから一緒には帰れないかな」

「俺たちもその用事手伝うよ」

 あぁー面倒くさい。

 時計を見る。今15時半か…。

「じゃあ、16時までに私を捕まえられたら一緒に帰ってもいいよ」


 しつこい人はいつも制限時間30分の隠れ鬼をする。

 30分見つからなかったり、つかまらなければ大体の人は諦めてくれるからだ。

「いたぞ!待て!」

 やばい!見つかった!確かこの角曲がった所に空き教室があったはず!距離はだいぶあるから、一先ずそこに隠れて鍵閉めたらいけるはず!

 角を曲がり教室のドアを開ける。

 教室に入った瞬間、怪訝な顔で涙ぐむ彼と目があった。

「…っ!?あっ!ごめん!ちょっと匿って!」

 足音が聞こえ急いで私は彼の座る所と窓の間に蹲った。

 足音が教室の近くでゆっくりになったと思ったら、足早に去って行った。

 まだ戻って来るかもと同じ態勢でじっとしていたら彼に声を掛けられた。

 驚いて思わず大きく身体を震わせてしまい、恐る恐る顔を上げた。

 元々目付きが鋭い彼と近い距離で目が合い、思わず顔を逸らしてしまった。

 家が裏社会と繋がっているとか地元の不良の総長とか警察にお世話になったことがあるなどの噂があり、ヤバい人の所で隠れてしまったと思い、感謝の言葉がしどろもどろになってしまった。

「はぁ、特に礼を言われる事はしてない」

 ため息混じりの返事には怒りの感情は無く、その視線は直ぐに開いていた本に向いた。

 もしかして、ただ目付きの悪い凶悪顔の優しい人?

 彼の読んでいる本も気になり、机を挟んだ向かいに座り観察する。

 表紙は空を背景に白字で“この空が続くまで”と書いていた。


 パラパラとページの捲れる音だけが静かな教室に響く。

 10秒くらいで捲られていくページに読めているのかと疑問に思い彼に尋ねる。

「ねぇ、さっきからずっと同じスピードで捲ってるけど、それ読めてるの?」

 顔を上げた彼は目を見張ったが、すぐにジト目を向けられ本を閉じ机に置いた。

「…君はどうしてまだ此処にいるんだ?そろそろ追いかけて来た奴らは居なくなったとおもうが」

 知ってる。もう16時過ぎてるし。

 彼は怪訝な顔をしているけどその声はどこか優しく感じたから、もっと彼と話してみたいと思った。

「同じクラスなのにちゃんと話した事無かったなぁ、と思って」

「…僕の話し聞こえてないのか?それとも僕の声が思ったより小さいのか?…なんでまだ此処にいるんだ?」

 聞こえてるし、質問にも答えたつもりなんだけど。

 一人称が僕とか話し方とかなんか可愛いと思ってしまう。

 凶悪顔とのギャップのせいだろうか?


 少し話しただけでも楽しくて、もっと彼を知りたいと彼と話したいと思った。

 その後も彼を揶揄ってみたけど、怒りはするが怒鳴る事はなく照れたり慌てたり年相応の青年だった。

 彼は私のおすすめの音楽や動画の話をすると実際に聴いたり、観たりしてくれた。

 私も彼のおすすめの本や動画を読んだり観る。

 その感想を話すのも楽しくてすぐに時間が過ぎてしまうのだ。

 そんな彼を周りにも知って欲しいと思う反面、知られたく無いと思ってしまうのは何故なのか。

 あの日から用事や約束が無い日の放課後は空き教室に行く様になった。

 もちろん隠れ鬼の時の逃げ場所はこの空き教室だ。

 そして帰るまで彼と他愛無い話をする時間が私は好きなのだ。

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