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妖精さん、ごきげんよう

かつて人間と魔物は共存していた。

だが、ある日、恐怖の大魔王が現れ、魔物たちが人間に反旗を翻すことで、両者の絆は引き裂かれた。

長きに渡る戦いの末、勇者リューネルによって大魔王は討たれ、戦争は終結を迎えた。

しかし、戦争の終結は必ずしも平和を意味しなかった。

人間は魔物を恐れ、魔物は人間を警戒するようになった。大規模な戦争こそ起きなかったが、両者の間には深い溝が残り、互いに信頼することはなかった。


「かわいい? 今日も可愛い?」

耳元で繰り返される甲高い声に、マリオンは嫌でも目を覚ました。柔らかな朝日が視界に広がる。けれど、湿った地面の冷たさと洋服に染みついた鉛臭さが気分を台無しにしている。


 草花や青白い空よりも早く、マリオンの視界を占領したのは、翼をぱたぱたさせた小さな妖精、シルフだった。透明なはねが朝日に照らされて虹色に輝いている。その姿は確かに愛らしいが、朝っぱらから顔にべったり張り付いて「かわいい?」を連呼されるのは、正直気が滅入る。


「おはよう! 今日もかわいい? かわいい?」

「おはよう、シルフ。そうだね、今日も可愛いね」

「でしょ〜! ねね、マリウス! シルフかわいいって!」


そう応じながら、マリオンは心の中でため息をつく。魔物の中でも、妖精という種族は特に愛らしい外見をしている。幼な子のような仕草と感情の豊かさは、どの町でも評判だ。それだけに、毎朝こうして自分のかわいさを確認しに来る彼女の自信満々な態度にマリオンは半ば呆れていた。興味の赴くままに飛び回り、誰にでも愛想よく話しかけるシルフ。この調子では、いつかどこかの商人に騙されて捕まり、見せもの小屋で無理やり踊らされる羽目になるのではないか。


「そうだね、シルフはいつも可愛いよ」

 もはや日課となっているマリオンの心配をよそに、双子の弟のマリウスが間髪入れずシルフの言葉を肯定する。旅の途中、マリウスはいつもシルフを溺愛している。暇そうにしていたら遊び相手になり、甘味を手に入れたら自分の分まで食べさせる。あまりの溺愛っぷりに、いつか道を踏み間違えるのではないか。姉としてはその甘やかしぶりが気になって仕方ない。


「マリオン、甘やかしすぎ。シルフちょっと朝の支度したいからちょっとあっち行ってて」

「は〜い!!!」

 シルフは笑顔で答えると、翼をぱたつかせて飛び去った。妖精というのは皆こうも自由なのだろうか。いずれ妖精の森を訪れる際に、実態を確かめてやろうとマリオンは思うのだった。


「今日中にグランリオに行かなきゃだから、急いで出発しなきゃいけないの。わかってる?」

「わかってるよ」

 

 どうしてこうもマリオンの機嫌が悪いんだ。マリウスは心の中で毒づく。太陽はまだ登ったばかり。これからグランリオへ向かったら、遅くても夕方には到着するだろう。そんなに焦って向かう必要はないはずだ。


「昨日の魔獣の返り血が匂って仕方ないの。早く宿でシャワーを浴びたいの」

「なら切らなきゃいいじゃないか。追っ払うだけなら怪我させなくても済むだろ」

「殺る気でこられたら、こっちも応戦しないとダメじゃない! 他にどうしろっていうのよ」

「…シルフみたいに『かわいく』お願いしてみるとか?」

「……やってみてあげようか?」


マリオンが不気味な笑みを浮かべてじりじりと近寄る。

「ごめん。俺が悪かった」

こうなったら勝てる見込みはない。たまたま数分早く産まれただけだと言うのに、どうしてこうも力関係ができあがってしまったのだろうか。嘆く弟の姿を見て、マリオンは呆れたようにため息をつき、背を向けた。

「わかったらよし。シルフ、戻っておいで。もう行くよ!」


マリオンの呼びかけに応えるように、青空を飛び回っていたシルフが笑顔でくるりと宙返りをし、マリウスの胸ポケットに勢いよく飛び込む。


「よーし、しゅっぱつだ!」

シルフの元気な声を聞きながら、マリオンとマリウスは荷物を整え、再び旅路へと足を踏み出した。

初めて物書きをしてみました。とっても緊張しますね、これ!

最初なのでまずはメインキャラの顔出しで終わりにしました。

人にお話を読んでもらう経験がないため、どのように感じたか、忌憚のない意見をいただければ幸いです。

では、また次回!

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