きゅうけいじかんとコンビニ
僕は休憩時間に保育園の休憩室に行かないようにしていた。
理由は単純、休憩にならないからだ。
休憩室にはベテランの先生たちがたくさんおり、唯一いた男の先生とはまず休憩時間がかぶらない。ベテランの先生たちはみんないい人たちばかりだったけど、僕は他人に対して無条件に明るく愛想よく話すクセがあるため、とにかくがんばっておしゃべりをしてしまうのである。
ただ、その元気は子どもたちに全力で使っているので、休憩時間もそれをやるとメンタル貯金が尽きるのである。休憩室では昼寝をしている先生もいる。携帯電話をみている先生もいる。
しかしながら、僕はベテランの先生の前で昼寝なんてできないし、携帯電話をみることもできない。まじめなのだこれでも。自分のキャラクターを勘違いされることが多々ある人生だけれども。
そんなわけで、僕はよほど休憩時間をとる余裕がないとき以外は毎日コンビニに行っていた。その理由も単純、僕は当時タバコを吸っていたからだ。
コンビニは保育園から徒歩数分で、僕はそこでコーヒーを買い、タバコを吸ってからせっまーい男用更衣室という名の物置に戻り本を読んでいた。冷暖房なんてもちろんない。
体力がやばいときは、たまに遊戯室に行って、お昼寝をしている子どもたちと一緒に寝たりもしていた。
その当時はまだ喫煙者の肩身はせまくなく、僕は園長に「タバコ吸ってきまーす」と一言かましてからコンビニに行っていた。一応、「タバコは吸い終わっても30分間はまだ有害物質が口から出るらしいから気をつけろよ小僧」という園長の助言は守って、早めに吸い終わるように気をつけてはいた。
余談だが、僕は勤務初日にコンビニでタバコを吸っているところを保護者に見つかっている。入園式の日に、担任する子どもの保護者に喫煙が見つかったことで、「清潔感のあるきれいなイケメン若手保育士」としてデビューする当初の計画は失敗に終わった。
そんなこんなで毎日コンビニに通っていると、そこで働くパートの店員さんたちと仲良くなる。「毎日来てるからポイントカード作った方がいいよ」と声を掛けられたことが最初のやりとりである。
さっきも言ったけど、僕はとにかく愛想がいい。店員よりも愛想がいい男と今でも言われているくらいだ。なので店員さんに話しかけられやすい。
僕はそういうのはとにかくめんどくさいので、「えー、いりませんよ~」と返しつつも、愛想よくカードを作るはめになった。しかしその結果、カードに1万円分くらいのポイントが貯まったので、その店員さんには感謝しかない。
そこから、その店員さんたちにはいろいろとお世話になった。詳しくは言わないが、お菓子を買うとアニメのクリアファイルが手に入るキャンペーンの時とか、妖怪ウォッチの妖怪メダルが入荷したときとかである。こちらからは一切何も言わないが、僕の好みは買うものでバレているので、気を利かせてくれたのである。
しかも途中で知ったことだけど、その店員さんの内の1人は、僕が担任している子の叔母さんだった。
思い出深いのは、ある夏の日にくったくたでコンビニに行った僕は、タバコを吸った後に自分のリュックを喫煙所に置いて帰るというファインプレーをした。リュックには財布も携帯電話も入っている。それだけ疲れていたのか、ぼーっとしていたのか。
あれ、なんか背中が軽くて涼しいなと思った記憶はある。よもやである。
置いてけぼりにされてさみしそうにしている僕のリュックをコンビニ店員さんが見つけてくれた。そして何とコンビニ店員さんは自分の休憩時間にそのリュックをわざわざ保育園に届けてくれたのだ。あの時はありがたくて恥ずかしくて申し訳なかった。
そんなこんなで、コンビニって便利だよね、みんなのオアシスだよねという話。
コンビニ店員さんはやることがめちゃくちゃ多いし、客の態度が悪くていやな思いもたくさんするそうなので、とりあえずやさしくしてあげてほしい。




