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動画撮影準備はオッケー。
自宅のリビングにカメラをセッテングし、原稿も丸暗記している。
これから動画を撮影するつもりだった。動画サイトにアップし、一つの証のようなものを語ろうと思っていた。
私は元占い師だった。
十年ぐらい前のことである。テレビや雑誌などでも取り上げられて、顧客の予約は来年まで埋まっていた。
それが今は、占い業はやめ、クリスチャンになった。しかも教会で伝道師の仕事までしている。確かに占いで得た地位や名誉、金は全て失い、今は貧乏状態だったが、なぜか生活には全く困ってなかった。
占いは、キリスト教の神様に敵対する行為だったが、今はすっきりと縁を切り、神様の為に生きている。本来なら地獄に行ってもおかしくない立場だったのの、神様のその命と血で赦された。もう、それだけで十分だった。もう他には何も要らない。
「今日は皆さんにお話ししたい事があります。なぜ私が占い師をなぜやめたか、どれだけ占いが危険な行為か語ろうと思います。多くの人にとっては不快な話かもしれません。ただ、一人の女の黒歴史の物語として聞いて頂けると幸いです」
こうして動画を撮影し始めた。
「占いをした事で多くの人を地獄に誘い、命や人生の時間を奪ってきた罪を告白し、謝罪します。特に私のお客様に関しては、今でも祈っています。申し訳ありませんでした」
ここで私は頭を下げた。
占いをしていた時は「謝ったら負け」ぐらい思っていた。要は人に敵対心を持っていた。それが今では、頭を下げているなんて。
人生、変わるものだ。何があるかわからない。
占いをしていた時は、魔女のような顔とも言われた事があるが、今はそんな事は一度も言われない。昔の写真と今の写真を比較すると、誰もが「え? 変わりすぎじゃない?」と驚かれるようになった。
私はもうアラフォー。シミやシワもあるし、髪の毛も白髪がある。決して美しくはないが、今はもうそれでよかった。
「それでは、私がなぜ占い師を辞めたのか告白して行こうと思います。また、なぜ占いが当たるのか、どれだけ危険な行為なのかも語りたいです。最後までお付き合いくだされば幸いです」
晴れやかな笑みをカメラに向かって見せていた。