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第一章 小学生≠大人 4




「初めての案件です。楽しみですね!」


「うん、なんだかぼくも楽しみだな! 張り切るぞ!」




 塚の週報に郡馬が苦言を呈した翌日の朝、ハンブルク研究所に緊急の案件が入ってきた。まったく楽しみな案件ではないが、仁楠は塚の前なので、一日分の体力を朝から使って明るく振る舞った。




「ぼくと塚さんと、あとは和井得ワイエルくんとでいくよ」


「イェールさんですね」




 ワイエル、という名前がイェール大学みたいだ、と言って、塚はもう一人のサブである和井得をそう呼んでいる。本人の前では言わないでよ、と仁楠は釘を刺した。




 緊急案件というのは、十駅以上先にある私立小学校からの依頼だった。




教育機関からの依頼というのはそのほとんどが、六月の環境月間だとか、六月五日の環境の日に前後して、集会に来賓として呼ばれて、最近の環境問題を講演する、といったものであった。




ちなみに、六月五日、というのは何かの語呂というわけではなく、同日に大規模な環境会議、ストックホルム会議が始まったことに由来している。塚の研修が終わり、ついにはじまる彼女の会社員生活と時期が被っていることとは特に関係はない。




「でも、今回は講演とかセミナーじゃないんですよね」


「そう。和井得くん、塚さんに説明してあげて」


「まかせてください」




 サブの和井得はまだ若く、サブに昇格したばかり期待株だ。今回の仕事は、元は和井得と仁楠二人で担当する予定であったが、賀臼の指示により、急遽塚も参加することになった。仁楠はその指示の真の意味を彼なりに把握していたので、なんとか塚に活躍してもらわなくては、と意気込んでいた。




「これが地理的状況です」




 和井得は二人に、タブレットで地図アプリを見せた。ハンブルク研究所に比べると都心に近い立川にある、ボルドー小学校の立地の説明である。校庭のすぐ東には昭和記念公園がある、自然豊かな立地であった。




「立川の駅前なのに、結構広い土地ですねー」


「うん、ぼくもそう思う」


「え、でも小学校ですよ。狭くないですか?」




 都心で育った塚、仁楠と、ハンブルク研究所より更に奥多摩の方で育った和井得とで、小学校としてのあるべき広さの解釈に相違があるようであった。




「それで、小学校がどんな依頼を?」


「驚くと思うけど、落ち着いて聞いてくださいね」


「わたし、仕事中は喜怒哀楽そんなに出さないって決めているので!」


「生徒が、先生を監禁して、ストライキをしたんです」




 塚は無言で目を丸くして驚いた。仁楠も、昨日この話を聞いたとき同じリアクションをした。

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