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第一章 小学生≠大人 12

 十二




「つまりですね、森林の伐採は、その言葉の響きが、こうした事情や背景を知らない無知な人たちに過剰に受け取られると、反対されがちですが、必要なことなんですよ」




 やっぱり、そういう結論か、だからハンブルク研究所なんだな、と仁楠は腑に落ちた。




 仁楠は振り返り、降江に話しかけた。




「立派に考えて、行動しているじゃないですか。どうしますか」


「どうしますか、って、あなたね。古里織先生を助けてくださいよ」




 降江は全くブレなかった。なるほどね、と仁楠は、額に手を当てながら、また前を向きなおした。




 よく調べたね、でもぼくたちは、目の前で監禁という犯罪が起きている現場に呼ばれた以上、ここで君たちの行動にアクションをとることは出来ないから、警察を呼ばせてもらうね。




 こう言ってあげることが唯一解なんだけど、どうしようか、と仁楠は思案した。




 少し休憩しないか、と仁楠が言うと、増真くんは無言でうなずいた。大道くんが、じゃあ、十五分くらいにしましょう、と言った。




 仁楠は、ちょっと、と言って和井得と塚を手招いて、一度教室を出た。降江は当然ついて来たが、少し外してくれませんか、と和井得に睨むように言われ、口をとがらせて離れていった。




「どうしたものだろう」


「古里織先生の救出よりも、ぼくらはぼくらの仕事を全うすべきです。彼らを説得しましょう。その結果、不機嫌になって、古里織先生を救えなかったとしても」


「いや、ぼくらの仕事を全うする、ということなら、警察を呼ぶことが第一だろう」


「そうなると、初めの、警察は呼ばないと思った、と言われたことが気になりますね。おーい、降江先生」




 和井得は、今度は降江を呼んだ。雑な扱いに、不満気な降江はゆっくり歩いてきた。




「今更になりますが、なぜ彼らは、降江先生は警察を呼ばないだろう、と踏んでいたか、教えてください」


「それは、」




 降江は少し口ごもった。




「わたしから説明しますよ」




 ズシン、と響く低い声で現れたのは、校長の押照オステルであった。




「押照先生。わたしが事態をなんとかまとめますから」


「できていないじゃないか」




 うぐう、とうなった降江はそのまま二歩後ろに下がった。




「みなさん。お忙しい中、我が校の危機にいらっしゃってくださり、ありがたいやら、情けないやら。校長の押照です」




 五十代と思われる押照は、警察のことですよね、と口を開いた。




「彼らの目論見通り、わたしたちは警察を呼んでいません。小学生の思い通りに動くなんて、情けないですよね」


「いったいどうしてですか」


「そこの降江先生が原因ですよ」




 ギクリ、と降江は顔をそむけた。




「まぁ、降江先生のことは責められませんがね。


 教職の残業のひどさ、というのは、噂は耳にしたことがあるでしょう。採点を持ち帰る、とか、そういった類の話です」

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