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数字の神が支配する世界  作者: 葉月 優奈
一話:百年眠る少女
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008

ドスンと、とても大きな音がした。

木箱はそのまま、俺がさっきまで歩いていた場所に落ちてきた。

ドローンが、俺に対してなぜ攻撃してきたかは分からない。


だけど、山積みされた木箱はそのまま地面に落ちて砕けた。

中から酒の匂いが、漂っていた。

木箱の中には、いくつもの瓶の酒が入っていた。


(ビックリした)

落ち着いた俺は、声は上げない。

ドローンはそれでも木箱を当てて、何食わぬ様子で飛んでいた。

地面が酒で濡れて、俺の足元も酒臭い。

こちらに口を向けずに、攻撃する様子はない。


(たまたまドローンが当たったのか……遠隔精度が悪いのか?)

などと思いながらも、俺は倉庫のほぼ真ん中にまで辿り着いた。

この辺りは、窓も無くて月明かりも街灯の明かりも差し込まない。


(壁沿いに……行くしかないけど)

俺の手に届くところに、壁が近くにはない。

スマホをつけて、手で隠すようにライトを落として確認した。

割とすぐ近くに、生命反応が見えた。


(よし、まずはターゲットと接触するか)

俺は腰をかがめながら、ゆっくり歩く。

ドローンの僅かな風を感じながら、ドローンの位置は分かる。

暗闇の中であっても、ブラックナンバーである俺はそれなりの訓練を受けていた。


(レッドナンバーは、よく闇に紛れてこちらを攻撃するからな)

ここでも、実際にあった。

ドローンの操作は勿論だけど、俺たちはマート庁の職員だ。

マートが望む人類の存続の解のために、俺達ブラックナンバーは様々な訓練を受けていた。

闇の中で歩くことも、ある程度慣れていた。

間もなくして、生命反応が隠れる木箱の前に辿り着いた。


俺の忍び足だけど、気配で向こうも感づいた。

「誰?」そして、声が漏れた。

「しーっ、ここを出よう」

そういいながらも、スマホで確認した。

スマホで確認したら、生命反応の番号はやはり『番号無し』だ。


「いきなりあのドローンが、攻撃してきて……」

「むっ、まずい」俺は、すぐに木箱の裏に走った。

同時に俺は、木箱の裏に隠れる人物の手を引っ張っていた。


「危ないっ!」

俺は感じていた。ドローンが動いていたのを。

静かに、上空からドローンはADLを放っていた。

バチバチさせた黒い雷が、地上から見えた。

放たれた真っ黒い黄泉を見て、俺は木箱の裏にいた人間を引っ張った。


「痛いっ!」

「ああ、ごめん」暗くてよく見えないが、声は女だ。

体も小さいし、肌も柔らかい。

そのまま俺に抱き寄せられた女は、震えているのが見えた。


「大丈夫か?」

「男?」

「気づかれた、逃げるぞ!」

「え?」俺は迷うことなく、女を右腕で抱えた。

左手はズボンのポケットの中に突っ込む。中に入っていたピンクの球を、取り出した。


そのまま、俺は球を上空に向かって投げ出した。

投げ出された球が、上空で破裂するとそのまま煙がモクモクと出てきた。

煙が、一気にドローンの周囲を取り囲む。


「掴まれよ!」

俺は叫んだ。女を両手で抱きかかえながら、煙の上がる倉庫から俺は出て行く。

煙が上がる中、倉庫の外に一気に走り出した。

小さく軽い女は、そのまま俺に抱きかかえられて身を委ねていた。


やがて、倉庫の外に俺は出た。

「もう大丈夫だ……なにも心配……」倉庫の外は街灯もあって明るい。


そこで、俺は初めて見た。

茶髪の女は、蓮よりもずっと幼い少女だった。

肌の色も、小麦色に焼けた肌をしていた。


「蓮じゃない……」俺が好きだったあの女……蓮の顔が一瞬ぼんやりと重なって消えた。

「レンよ、あたしは!」

俺に抱きかかえられた若い少女は、俺に対して怒った顔で言い返してきた。



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