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08 僕の秘密基地は消える!?

08 僕の秘密基地は消える!?


 それから僕はスプリンタートルの剥ぎ取りをしたんだけど、甲羅を見てしまったせいで、お昼ごはんを食べるのも忘れてクラフトに没頭していた。

 いままでなら新しいスキルに夢中になっている頃なんだけど、今回増えたスキルはなんだかよくわからなかったんだよね。



 ハロー・ゲート 玄関扉を世界と繋ぐ



 世界と繋ぐってなんだ? と思って試しに使ってみたんだけど、なんにも起こらない。

 ゲートなら知ってるかなと思って尋ねてみたんだけど、困り顔が返ってくるだけだった。

 まあ、そのうちいつかわかるだろうと思って、僕の興味はすっかり甲羅のほうに移っていた。


「……できた! 甲羅の盾っ……! スプリンタートルの甲羅の硬さを見たとき、盾にいいんじゃないかってずっと思ってたんだよね!」


 ゲットしたので実際に作ってみたら、盾としては思っていた以上に理想的だった。

 甲羅はとても軽く、長辺のサイズが僕の二の腕よりちょっと大きいくらいで取り回しがいい。

 木の握手を付けたら、どこから見ても立派な盾になった。

 僕は伝説の勇者になったつもりで、秘密基地のなかで剣と盾を振り回す。


「剣のあとはやっぱり盾だよね! 盾があると、なんだかすごく強くなったような気がする!」


 しかし気のせいばかりでもないと思う。

 まだ3だけど、戦闘レベルが上がったおかげで、木刀の振りの鋭さも増したような気がする。

 僕の脳裏に、ふっとあの強敵の顔がよぎった。


「……いまの僕なら、リベンジできるかも……!」


 僕はゲートに留守を任せておもむろに秘密基地を出る。

 堂々とした足どりで、森へと向かった。


 追い回された時のトラウマで、いままでは森の浅いところにしか行けなかったけど……。


「もう、怖くなんかないぞ!」


 ホントはちょっぴり怖かったけど、声に出して勇気を奮い立たせる。

 屋根のように折り重なる木々の下をずんずん進んでいると、目の前の茂みが動いて、ヤツが飛び出してきた。


 そう、ラビッツノ……!

 僕にとって、乗り越えないといけないライバル……!


 もしかしたら、以前に僕を追い回したのと同じヤツかもしれない。

 ここはおれのナワバリだ、と言わんばかりの怖い顔。

 荒らすようなら容赦はしない、と言わんばかりに姿勢を低くし、お尻をフリフリしている。


 僕はできたての盾を構えた。


「こ……こいっ! 今朝みたいにはいかないぞ! 今度はやっつけてやるっ!」


 僕の挑発が通じたのか、ラビッツノは高く飛ぶ。

 樹冠から差し込む陽光をバックに、ツノがギラリと輝いた。


「くっ……!」


 僕はひるみかけたけど、逃げ出さずに真っ向からヤツの飛びかかり攻撃を受け止める。

 甲羅の盾はラビッツノのツノが突き立っても貫通しなかった。

 それに僕が腰を低くしていたおかげで、吹っ飛ばされたのはラビッツノのほうだった。

 ラビッツノは頭から落ち、でんぐり返しに失敗したようなポーズで「ムギュッ!?」と地面に叩きつけられる。

 頭から落ちたせいかツノが地面に刺さって抜けなくなり、じたばたともがいていた。


「も……もらった!」


 その一瞬のスキを逃さず、僕は木刀による追撃を浴びせる。

 渾身の一撃がお尻にヒット、ラビッツノは「ギャィィィィィーーーーンッ!?」と甲高い悲鳴をたてて動かなくなった。

 僕は緊張の糸が切れ、その場にへなへなとしゃがみこんでしまう。


「か……勝った……! や……やった、やったぞ……! ついに、勝ったんだ……!」


 いままでのラビッツとスプリンタートルは一方的な狩りだったけど、今回は戦闘。

 戦闘をするのは生まれて2回目だけど、それでモンスターの部類に入る相手に勝つなんて……!


「僕だって、やればできるんだっ! や……やったやった、やったぞぉーーーーっ!!」


 天に向かってバンザイして喜んでいると、頭上におまちかねのものが現われる。



 『戦闘レベルがアップ! 基地レベルがアップ! 新しいスキルを習得しました!』



 新しく増えたスキル。



 グッバイ・ゲート 玄関扉を世界と切り離す



 それは僕の頭の片隅に追いやろうとしていた疑問のパーツと、対になるようなものだった。


「世界と切り離す……? そういえばさっき、世界と繋ぐスキルを覚えたよね……?」


 僕はいてもたってもいられなくなって、秘密基地へと取って返す。

 ゲートが佇む川べりに着くと、弾む息もそのままに、手をかざしてさっそく唱えた。


「……グッバイ・ゲート!」


 するとゲートは半透明になり、見えなくなる。

 その見た目は『カラーリング・ゲート』で迷彩化したのと同じだけど、明らかなる違いをさっそく感じた。


「風が……吹いてる……!?」


 そう、ゲートが迷彩化した場合は目の錯覚で見えにくくなるだけで、実際にはそこにいる。

 だからゲートの向こうから吹いてくる風は遮られるんだ。

 でもいまは、まるでそこにいないかのように風が吹き抜けていく。


「まさか、本当に消えちゃったの……?」


 尋ねても、(いら)えはない。

 おそるおそる取っ手のあたりに伸ばしてみるたけど、虚空を掴む感触しかなかった。


「すごい……! 本当に消えちゃった……!? 消えたのを戻すのは、やっぱり……!」


 僕はなにもないはずの空間に向かって手をかざす。


「……ハロー・ゲート!」


 まるでさっきの逆再生のように、ゲートが半透明になったあと出現。

 僕は信じれない気持ちでいっぱいで、抱きつくようにしてゲートを触りまくった。


「す、すごい! 見えなくなる魔法やアイテムならあるけど、物理的にも消えるなんて!? いったいどういう原理なんだ!?」


 僕はドギマギしていたけど、ゲートはドキドキしていた。

 どうやら僕に抱きつかれて、照れてしまったらしい。


「ゲートって、意外と純情なんだね……まあ、僕も人のことはあまり言えないほうだけど……」

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