現実を知る
初めに怖い話が続きます。でもほんわかする話になります。
これは、ただ、適当に過ごしていくだけの人生。
そう感じたのは、大学受験に落ちた後。ひたすらに勉強し、学び、学んで、学ぼうと、必死だった。でもその「必死」には希望がなかったのかもしれない。押しつぶされてゆく世界へのプレッシャーは私達若者には耐え難い。努力の上、幸せになれるのは数少ない現実。落ちた私には何が残されているんだ。______これは、世界から落ちたクズの物語。__この物語のエンディングは、あるのだろうか。その無意識の疑問の答え。それは後の世界が変わった私が答える。異世界に拾われた、まだやり直せる私の人生___
序章
この世界は、何がどうなって、こうなったんだろう。頭がいいやつだけが幸せになれる世界。____否。幸せになれるとも限らない。じゃあ落ちた者の将来は?人生は?希望は?世界の答えはI don’t know だ。知らないふりして、いいことだけを表に出す。…全く。反吐が出る。まぁ。私も「落ちた者」だけど。落ちた…からどうなるのか。それは私にとってはまだわからない現実。これから起きる現実。はぁ〜あ。全く。つまらねぇな。がんじがらめの勉強生活から解放の次は、フリーすぎる生活…かぁ。お金も将来も希望もねぇ。…まぁ。昔は夢。あったけど。高校はちゃ〜んと生き残れて、幸せな生活を送っていた。でも。無理だったみたい。まぁ。どーせ…パティシエなんてモテねぇし。儲けれねぇし。…そんな道を選んだ私は、どうやらバカだったみたいだ。…で。今から初めての「ばいと」低給料で厳しそうな仕事。まぁ仕方ない。これが落ちたものに唯一与えられる仕事なんだから。
一章
「行ってきぁ〜す」
…どうせ誰もいねぇけど…。ご近所さんから嫌われてるのはわかるが、噂ってぇのは怖いものだな。私が「落ちた者」だってすぐにバレる。バレたら終わり。誰からも相手されない。まぁ。親にも相手されていないから、どうでもいいけど。
俯く人々の中を、スルスルと通り抜ける私。この人たちも、「落ちた者」なのかな。落ちても、必死にいい子になって社会に貢献すれば、幸せな生活を送れるのかな。…そもそも、幸せってなんだ?
不思議な疑問に襲われる前に、私は電車の端に寄る。発車した電車の中は静かだ。このハイテクノロジーの時代。電車の音も聞こえなくなっている。…静か…だな。高校生時代は、友達と話しまくって、気づいたら駅通り越してたぐらい賑やかだったのに。今とは大違いだな。…みんなスマホを見ている。…どうしてだろう。みんな顔が暗い。まぁ。どうでもいいことだし。心の中でぽつりと呟く私だった。
ガタン。その大きな音に私は目を開けた。…あれ…。気づいたら寝てたみたいだ。…立ちながらかよ…。ヤベェな私。そうぼんやりしていると、目の前の人が、もう一度ガタン!と大きな音を立てた。私はハッと目を覚まし、何が起きたかを把握しようとするが…。私はもう一度ハッとした。目の前の人が、ぎろりと憎むような目つきで見てくる。「…なんなんですか」私が喧嘩腰に言うと、その人は言う。
「終点だよ。早く気づけ」
私は、真っ青になった。その人は、チッと舌打ちをする。
「………はぁ。」
私は、鞄を持って、駅のホームへと飛び出た。
「……」
よかった。バイトにはぎりぎり間に合いそう。終点の駅でよかった。私は、大急ぎで古びた階段を駆け上るのだった。
二章
「……っ…間に合え…っ…!」
私は大急ぎで、駅から飛び出し、誰もいない道を走る。時折見かける通行人に怪しい目線で見られながら走る。
店が見えた。初めてのバイトは、ケーキ屋さんだ。急いで、店の中に入った時………。パンッと一際大きく音がした。なんだろう。思ったら、店の中の人が、ずるずると倒れていた。
「_____!この方、どうしたんですか!?急いで治療を__」
その横に居る金髪の女性に声をかける。
「…いいんだよ。それぐらいの仕打ち」
「…?」
私は思った。あぁ。今日終わった。
「あらぁ?もしかして、あなた…今日入ってきた新人さん…?」
と、突然、さっきの金髪女が先ほどとは全く違う口調でしゃべる。
「えっ…?あぁ…。はい。そうです。」
動揺を隠し、冷静を保とうとする私。
「あなた…すっごい高校通ってたんでしょぉう?」
「えぇ。まぁ。」
「すごぃじゃあないっー!ウチの店に来てくれて嬉しぃわぁ」
その人は似合わない笑みを作り、私の肩を叩く。そして__
「無能な人間はいらないから」
「…!?」
「じゃあ、指示出すからね〜♪」
一瞬。態度が違った。明らかに。人間かどうかを疑うほどの、冷たい目線。私は、必死に恐怖を堪えるのだった。
「じゃあ、この生地にクリームつけてねぇー!あ。クリームない?テキトーに作ってくれたらいいよ!じゃあ、ウチは控え室にいるから!」
金髪女はそう言うと、素早くどこかへ消えてしまう。
「……嘘でしょ。」
なにも、教えられてない。荷物置いて、服を着替えただけ。挨拶も。なにもしていない。残されたのは、倒れた女性と、私だけ。…仕方ない。クリームぐらいなら私にも…と思い、冷蔵庫らしき物を開ける。…?!なにこれ?見た瞬間、私はさらにやる気を無くした。ぐちゃぐちゃになった素材。荒くラップされた容器。割れた皿。腐った牛乳。
「…臭い…っ!」
中からクリームらしき小さな紙パックを取り出す。そして、扉を慌てて閉める。……酷すぎ…。もう見なかったことにしようと考え、気を取り直す私。紙パックを開けるか、やっぱり悪臭。
「はぁ…」
賞味期限は…2ヶ月前?!こんなもん食えるか。そう思いながらも、作り始める私。そもそも市販のやつで作る時点でおかしいと思うが。泡立て器で必死に混ぜている途中…。
「…あ。砂糖」
もうほとんど知識を忘れてしまった私なので、慌てて砂糖を探す。
「…これ、かな。」
「砂糖」と汚い字で書かれてる容器を発見。
「……ぅ…」
またもやの悪臭に、思わず鼻をつまむ。そこから砂糖を適量放り込む私。かちゃかちゃと鳴るボール。静かな空間。倒れる女性。…なんか…変なところ入ってしまったみたい。まぁ。ここらへんの貧乏住宅街に店があるだけですごいと思うが。
「…よし」
できたクリームを冷蔵庫へ投入。置く場所がなく、グラグラとしてしまうが、まぁ気にしない。「……」
暇になってきたところで、私はゆっくりと倒れている女性を見る。まだ若そうな女性のほおには、赤い傷痕が…。「…」私は濡れたタオルを作り、それで彼女の傷を拭う。「…!」その女性は目覚め、私の顔を恐怖の目で見る。
「…あ。起きたのね。私は…」
その時だった。私は背中に冷たい視線を受けた。恐怖を感じる。冷ややかな目線…!
「…ねぇ、何してるの?」
「…!」
気づいた瞬間。私はもう、後ろに飛ばされて、頭から血を流していた。
「……?」
べっとりとした気持ち悪い感触。
「これって…」
「ねぇ」
「!」
私はその冷たい声に、押し黙ってしまう。
「何…してたの?」その質問に普通に答える。
「えっと……クリームを……ひっ……やして…」
がんっ!!!突然、頭を蹴られた。
「なんで指示と違うことをしたの?ねぇ?ねぇ聞いてる?」
「……っ…ぅ」
ギリギリとした痛みに、耐えることができない私、ふっと力が抜け、何も考えれない。
「…お前もクズだったんだ。役立たず。」
…はぁ?私はその言葉に疑問を持つ。キリキリと痛む頭で、憎しみの言葉が流れる。…お前みてぇな…
「醜い人間じゃ、ない………」
私は言い切ることができなかった。なぜなら、自分も醜い人間だと思ってしまったから。自分が、馬鹿なだけだと、思ってしまったから。
「……っ!」
私は立ち上がって、走った。
「…おい!待て!逃げんな!」
__そうかもしれない。逃げなければよかったのかも。諦めなければよかったのかも。もっと勉強しておけば…!
「……っ!」
ダメだ。もう今更変えれない。今更。今更。…あぁ。後悔しかない。「……っ」気づいたら駅に着いていた。小さなこの駅に人は誰もいない。…ICカード…ない…それでも、家に帰りたかった。幸せだった頃の自分を思い出すために。私は、ついに頭が逝ったのか、自分の手を、駅の改札にかざす自分。赤色の表示と、ただの音声が流れるはずだったのに…。突然、パッと光が一際眩しく輝いた。それが、なんの光かはわからない。
「…っ…眩し…!」
目を閉じて、光が収まるの待った私、やがて、ぽぅ…と小さな音を立てて、光が収まる。
「…一体なん……!?」
気づいたら、私は、小さなホームに立っていた。安らかな風が、私の髪をやさしく撫でる。ぽわぽわとした優しい空間が、私を包み込む。…私だけ。私以外誰もいない。小さなホームは全体がカラフルで、なぜか、落ち着く不思議なホームだった。「…!?」突然、私の前に、電車が走ってきた。スピードはかなり速かったはずなのに、なぜか音は聞こえない。聞こえるのは優しい風だけだ。ふんわりとした太陽のオーロラに歓迎されるように、電車はそっとスピードを止めて、私のちょうどぴったり前に止まった。
「…こんな電車…あったっけ…?」
1車両しかない電車はゆっくりと扉を開ける「……!?」電車の先、それは眩しい光しかなかった。ピカっと光る光は、私を呼んでいるのだろうか。…夢だ。…今頃…病院かも…それかもう…死んじゃってたりするのかな…。ぼんやりとする意識の中、全てがどうでもよくなった私はゆっくりと歩み始める。扉を越え、光に包まれた瞬間。パッと視界がひらけた。光の先は、ただの電車だったのか。イスや吊り革が並んである、普通の電車の中だった。…疲れた…何もかもに。そう思い、はしっこの席に座る。やがて扉が閉まり、静かな音と共に、電車は動き始める。動いて、動いて、動いて…。あぁ。生まれてくるんだったら、幸せな生活がよかったなぁ…。うっすらと涙を浮かべ、瞳を閉じる私。厳しい世界に…いつか夢を持てますように。そう思い、私は目を開けた。その時…!
三章
カタン ゴトン かたんっ
「…あれっ…この人…寝ちゃってる…?」
そう言ったアリカは目の前の人物を眺める。
「…次、終点だよね。………」
アリカはそっと、その人の肩を揺らす
「おーい…!…次、終点ですよぅ?」
その人は目を覚まし、ゴシゴシと目を拭う。
「…カレスト行きの電車に乗るって、なかなか珍しいですねぇ!まぁ。私は食材の調達でですけどねぇ」
すると、その人はびっくりした様子で、アリカを見る。
「…大丈夫…ですか?」
アリカが不思議そうに聞くと…
「カレスト……ってどこだよぉおおおおおおお!?!?」
「私」は叫ぶのだった。
久しぶりの小説です…変なところがあったらすみません…