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王女の血判状(調査官ロイ)

ラスター王国の第二王女が処刑されたとの情報がもたらされた翌日、高等法務院にラスター王国の中央教会から一通の書状が届いた。差出人であるアキム司祭様の名前を見た時、嫌な予感がした。

ルーミア様が処刑されたなんて、誤報だと思った。

しかし、アキム司祭様の添書とともに届けられたのは、ルーミア様の血判状だった。


突然のお手紙、失礼致します。

わたくしはルーミアと申します。以前の名は、ルーミア・サラ・ラスター。ラスター王国の第二王女として生まれましたが、王籍を剥奪されましたので、今のわたくしに家名はありません。

わたくしは、明日処刑されます。

妹である第三王女の毒殺を謀ったと、全く身に覚えのない罪を着せられ、断罪されました。きちんと調査されることもなく、裁判にかけられることもなく、一方的に罪を断じられました。連合の法務官を呼んでもらうことも叶いませんでした。

わたくしは無実です。神と亡き母に誓って、わたくしは何もしておりません。

この手紙が届く頃、わたくしの命は消えているでしょう。けれど、命を奪われた後であっても、どうか、わたくしの無実を証明していただきたいのです。何卒お願い致します。

この度のことを、きちんと調べてください。そして、調査の結果、わたくしが冤罪であったなら、わたくしの無実を世に明かしてください。

わたくしの命は戻りません。けれど、第二王女として生きたこの身の潔白を明らかにし、名誉を回復していただきたいのです。それが、わたくしの最期の願いです。どうか、心からお願い致します。

ルーミア


ルーミア様の血判状にはこう書いてあった。

ルーミア・サラ・ラスターと、己の名前さえ記すことを許されず、姫様はどれほど辛かったか。

そして、アキム司祭様からの添書には、姫様が貴賓牢ではなく地下牢に入れられていることが書かれていた。食事や水さえ満足に与えられず、汚れた服を纏い、身体に傷や痣さえあり、酷い扱いを受けているようだと書いてあった。まともな調査もされずに、事件が起きてから五日という異例の早さで断罪され処刑が決まったのだと記載されていた。姫様のこれまでの功績や人柄、そこからみても冤罪だとルーミア様を擁護する内容の書状だった。


俺は上司の部屋に乗り込み、ルーミア様の血判状を見せてもらった。アキム司祭様の添書を見て、涙が出た。普段ふてぶてしい態度の俺が泣くのを見て、上司はただひたすらに驚いていた。

ルーミア様は無実だ。冤罪だ。罪を犯すような人ではないと言い募った。自分を派遣して欲しいと頭を下げる。姫様に罪を着せるなんて許せない。姫様はそんな扱いを受けていい人じゃない。少しでも早く、姫様の潔白を示して冤罪を晴らしたい…そう思った。

できれば、もっと早く…ルーミア様が生きている間に無実を証明し、生きて欲しかった。

あんなに優しくて、気高い人を他に知らない。

俺の必死さに、上司は最短でルーミア様の血判状を処理してくれた。許可のないまま俺が飛び出しそうだったのをみかねた上司が、いろいろ根回ししてくれた。俺はジュストを伴い、姫様の血判状が届いた翌日に本部を出発した。

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