処刑された王女(司祭アキム)
ルーミア様の遺体は誰も引き取りに来る者がなかった。処刑場を出る時もギリギリまで待ったが、誰も来なかった。他の罪人は大きな荷車にまとめて乗せ、それとは別に、姫様の遺体を小さな荷車に乗せた。大きな荷車は他の神父たちに任せ、わたしは自ら姫様の遺体が乗った荷車を引いた。教会に戻っても、火葬を始める刻限ギリギリまで待ったが、やはり誰も来なかった。
シスターたちに、血と埃にまみれたルーミア様の遺体を清めてもらった。清潔な白いワンピースを着せてもらった遺体を棺に納める。洗われた髪を一房いただいた。
他の罪人とともに燃やせば、ルーミア様の区別はつかない。それに、冤罪の姫様を他の罪人と一緒に火葬するのははばかられた。ルーミア様のために小さな穴を別に掘り、他の罪人とは別に姫様だけで火葬した。
ルーミア様の遺骨は両手に半分程だった。
処刑されたその日の日暮れに火葬を始め、夜明け頃に炎が燃え尽きた。わたしは姫様の棺が燃えるのを見守り続けた。ルーミア様が処刑された次の日は風が強かった。わたしは、姫様の願いを叶えるべく教会の近くの丘に登る。遺骨の入った箱の蓋を開けると、たちまち姫様の遺骨が風に連れ去られていく。
あっという間だった。
ルーミア様の冤罪が晴れてから、姫様の遺骨を撒こうかとも思ったが、一秒でも早く、こんな国から離れて欲しかった。結末はわたしが見届ける。風に乗って、どこか穏やかな遠いところへ…安らかな場所へ向かっていただきたかった。
王宮からは何の連絡もなかった。ルーミア様が処刑されても、街の人々も王族たちも何も変わらない日々が続く。わたしが自ら姫様のご遺体を火葬し散骨したのに、ルーミア様が亡くなったことをまだ実感できずにいた。
ルーミア様が処刑された四日後に、高等法務院から書状を受け取ったとの連絡が来た。これから書状が審査され、受理される。数週間から一月はかかるだろうか。その後に調査官や法務官が派遣される…はずだった。高等法務院から調査官がやって来たのは、書状が届いたと連絡が来た翌日だった。ラスター王国から連合の高等法務院がある教国首都への道程は二日だ。ほぼ一日で審査と受理されるという異例中の異例の短期間でルーミア様の書状が処理されたことになる。