王女の処刑(王女ルーミア)
最期にお会いできたのがアキム司祭様でよかった。心残りはお願いできた。司祭様ならわたくしの最期の願いを聞いてくださる…そう思えるくらいに信頼関係はできていた。
処刑前日も、当日の朝になっても、誰一人わたくしに会いに来る者はいなかった。お兄様も来なかった。
処刑場は王城の隣にあるにもかかわらず、刑場まで見世物のように街中を連れ回られた。牢から出され、檻のついた荷車に乗せられた。民からは罵る言葉と石を投げられた。孤児院のシスターでさえ、わたくしに石を投げる者がいた。孤児院の子どもたちは、不思議そうにわたくしを見ていたり、無邪気に手を振っていた。
わたくしに頭を下げてくれる者、ただ静かに見守る者、悲しい顔をしてくれる者。治療院の者は泣いてくれる者もいた。わたくしに蔑みの目を向ける者、惜しんでくれる者、それぞれだった。
檻の中から、民の様子を眺めていた。わたくしの心は凪いでいて、他人事のように、わたくしはもう死ぬのだと、そう思った。
刑場に着いた頃には、身体中傷だらけで血も出ていた。
刑場にも誰も来てはいなかった。
最期に言い残すことはないかと聞かれたので「わたくしは何もしていない。無実だ」と訴えた。
最期まで、わたくしの言葉は聞いてもらえなかった。
いよいよその時が来ても、涙は出なかった。
心の中はもう空っぽで、泣き方さえ忘れてしまった。
処刑台へ頭を載せられる。抵抗せず、されるがままであったのに、それでも身体を押さえつけられた。
風を切る音が聞こえた気がした。
そして、わたくしの世界は真っ暗になった。
わたくしは処刑された。