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第一王子(司祭アキム)

「どうされましたか、レリック第一王子殿下」

ルーミア様の兄殿下だった。ルーミア様と母を同じくし、そして、ルーミア様の処刑を提案した王子殿下。

わたしは複雑な気持ちを隠し、冷静を装った。

「あの…妹と最期に会ったのがアキム司祭様だと聞いたのだ…」

第一王子はゆっくり言葉を続けた。

「ルーミアの遺体を引き取ったのは教会だと…。司祭様なら、ルーミアの墓がどこにあるか知っているだろう?教えてくれ。ルーミアの墓に参りたいのだ…」

「ルーミア様の墓はありません」

わたしの言葉を聞き、王子の顔が険しくなった。

「墓がないとはどういうことだ?」

「ルーミア様が望まれなかったのです。ルーミア様のご遺体は火葬し、ご本人が望まれた通りに散骨致しました」

「不敬者が!王族の遺体を火葬しただと?散骨だなどと!許されると思うな。罰してやるからな。墓がないなど…貴様、許さぬからな!」

王子が激昂し、声を荒げる。


連合加盟国の中には、火葬が一般的な国も多かったが、ラスター王国では、土葬が一般的だった。庶民の遺体は布などに包んだだけでそのまま埋葬される。王族は防腐処理を施して特殊な棺に納めて墓所に奉るか、棺に納めて埋葬するかだった。流行病が流行した時に限っては、感染をくい止めるために亡くなった者を火葬する例外的な対応がされていたが、火葬は罪人や余程金がなく墓すら作れない者の見送り方…つまり、わずかな灰が残るだけの葬送で、死者の尊厳を軽んじるものとされていた。


掴みかかってきた王子の手を振りほどいた。懐から取り出したルーミア様の三通目の手紙を王子に見せる。

「ルーミア様のお手紙です」

そう伝えると、王子は奪うようにわたしから手紙を取り上げた。


この手紙を読んでいるあなたへ、お願いがございます。

どうか、アキム司祭様を困らせないでくださいませ。

司祭様は、最期までわたくしに優しくしてくださった唯一の方です。最期まで親切に、誠実にしていただきました。

この手紙が必要になったということは、わたくしの冤罪が晴らされ、無実が証明されたということと存じます。嬉しく思いますが、すべてアキム司祭様のご尽力のお陰です。恩人であるアキム司祭様を困らせることはしないでください。どうか、お願いです。

わたくしが、墓はいらない。わたくしとわかる遺骨があれば撒いてくださいとお願いしました。

処刑された遺体は引取り手があれば引き渡すそうです。わたくしの墓がないということは、誰もわたくしの骸を引き取ってくれる者がなかったということ。

司祭様はわたくしの願いを聞いてくださっただけです。

わたくしの遺体を引き取らず、わたくしの無実が明らかになるまで関わろうとしなかった方に、司祭様を責める資格などありません。わたくしが無実だと証明されたから、墓参りをして罪悪感を減らそうとされるのですか?墓があったとしても、わたくしを信じてくださらなかった方に参っていただきたくはありません。

わたくしの墓がないのは、アキム司祭様がわたくしの願いを聞いてくださったからにほかなりません。

わたくしは、アキム司祭様に心から感謝しております。

どうか、アキム司祭様を困らせることはしないでください。心よりお願い致します。

ルーミア


ルーミア様の手紙には血判が押してある。ルーミア様が最期にお守りだとくださった三通目の手紙は、本当にわたしを守ってくれるものだった。

無実が明らかにされれば、墓がないと問題にされ、わたしが責められることを予測されていたのだろう。

わたしを守ろうとしてくださったことよりも、冤罪が晴らされるという()()が最期まで姫様の中に存在していたことが嬉しかった。

手紙を読み終わった王子は瞳を潤ませ、静かに手紙を返してきた。先程までの勢いは完全になくなっていた。

「すまなかった。ルーミアの最期に寄り添ってくれて、感謝する」

そう、静かに頭を下げられた。

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