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かちこち

うーんっ。


学校がチョコの匂いで満たされていて、今日は本当にお菓子のお家にいるみたい。


私は教室に向かう廊下をととくんと一緒に歩きながらバレンタインで満ちている学校の香りを肺いっぱいに感じていると、ドタバタと走って来た誰かにぶつかられて思わず地べたに倒れる。


愛「…痛い。」


とと「大丈夫?膝、擦った?」


愛「皮…、剥けてる…。」


私は今にも血が溢れてきそうな擦り傷を見て少し鳥肌が立っているとその膝の上にハンカチを押さえ込むようにして手を置かれた。


「ごめん。大丈夫?」


と、私が転んだ時に一瞬見えた青い上履きを履いた男子生徒が心配そうに私の顔色を見る。


愛「先輩は大丈夫ですか…?」


私はだいぶ急いでいた先輩に時間を確認するように聞いたけれど、先輩は首を横に振った。


「俺は無傷だから。一緒に保健室に行こう。」


そう言って先輩は私を立ち上がらせると、応急処置で傷を押さえていたハンカチを膝に巻き、私の前に背中を向けてしゃがんだ。


「ほい。乗って。」


愛「え?」


「乗って。連れてくから。」


私は結心さんよりだいぶ背中が小さい先輩に恐る恐る乗ったけど、先輩はとても辛そうに膝を震わせる。


愛「…私、歩きます。」


「いいっ…て。俺が連れてく…。」


と、頑固な先輩はものの数秒で着くはずの階段まで5分近くかけて歩き、立ち止まった。


「ごめ…っ、階段、危ないっ…から…」


愛「はい…。歩きます。」


私はそっと先輩から降りて一緒に階段を下ってまたおんぶされたまま保健室に行くと、凛先生の定位置の席に結心さんが座ってその膝の上に凛先生が座っていた。


結心「…どうした?」


凛「あれ、(みなと)くんどうしたの?」


今にも息切れで倒れそうな湊先輩に2人は唖然とした表情で口にしようとしていたチョコを置いた。


湊「…ちょっと、ぶつかって怪我させちゃって。」


愛「少し擦りむいただけなんですけど、先輩がおんぶするって言うので乗ってきました。」


結心「…だいぶ、疲弊してんな。」


と、結心さんは湊さんの顔を見て若干呆れたような顔をする。


湊「女の子を傷つけちゃうのダメだし、男として怪我させた人を歩かせたくなかった。」


そう言って湊さんは私をそっと下ろすと、そばにあった硬い革製のベンチに寝転がり疲れた体を休ませる。


凛「信実さん、こっち来て。絆創膏貼るね。」


愛「あ、はい。ありがとうございます。」


私はいつも結心さんが寝ているベッドで凛先生に傷の手当てをしてもらい、少し痛む膝を休ませるようにそのままととくんと一緒に寝転がる。


結心「らぶ子、今日は何する?」


と、結心さんは口に1つチョコを入れながら一緒のベッドに寝そべり、膝を撫でるように内ももも一緒に撫で上げてきた。


愛「んー…、今日は…」


湊「おい!!」


私が結心さんとととくんと3人でバレンタインデートがしたいと伝えようとすると、湊さんが体を起こして私たちがいるベッド脇に走ってきた。


湊「お前、後輩にも手出してるのか?」


と、湊さんはとても怒った様子で私のスカートの裾に手をかけていた結心さんの手を叩いた。


結心「…何?」


湊「俺、お前が作った裏部活の事知ってるから。」


結心「だから何?それと愛が関係あるのか?」


結心さんは私の背後でとても不機嫌そうな声で湊さんと話す。


湊「内情は今調べてる所だけど、なんかやばい事しようとしてるだろ。」


結心「別に不純異性交遊を促してる訳じゃないよ。それは俺の管理範囲外。人が人を好きになる事は神様も止められないから。」


そう言って結心さんは私の首にキスをして、私の顔をととくんに埋めさせる。


結心「あの部活は俺が卒業すると共に廃部になるから、調べるなら後1ヶ月もないよ。素人探偵がそんな短い期間で俺の作った部活を全て知ろうなんて無理な話。」


湊「…素人じゃなくて高校生探偵の湊 健吾(みなと けんご)だ!」


と、湊さんは泣き声で言葉を吐き捨てると調べ物をしに行くのか、勢いよく保健室を飛び出していった。


結心「ああいう奴が神様語ったらきっと信者も長く生きるんだろうな。」


そう呟いた結心さんは振り返ろうとしていた私の頬にキスをして、またととくんに顔を埋めさせるとしばらくして寝息を立て始めてしまった。


私は会ったらすぐに渡そうと思っていたチョコをバッグの中にしまったまま、そのまま一緒にお昼寝することにした。



環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様

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