はじめてのけーば2
にゃ。
妙な静けさの中、閉まっているゲートに一頭ずつ収まって行く。
「いや〜、楽しみだな〜」
「よぅ、あんちゃん競馬は初めてかい」
声がした方に振り返ると、如何にもなオジさんが座っていた。
「あっ、はい、そうなんですよ」
「はっは!そりゃいい、競馬なぁ、いいぞぉあんちゃん。んでだ、どの馬が好みだったんでい」
そう言ってオジさんは自分の馬券を見せ、俺の馬券を見せる様促してきた。
少しだけ見せるか悩んだが、まぁいいだろう。大人しく初心者だと笑って何処かへ行ってもらおう。俺はレースに集中したいんでね。
「えっと、これです」
「あんちゃん!まさか全部買うたんでい!?そりゃ競馬で一番やっちゃいかん悪手やでい!」
「あはは、なんだか決めきれなくて〜」
「くぅ〜!まぁこれも記念や!あんちゃんが楽しめるならそれが一番やでい!」
「ありがとうございます」
「ワイもあんちゃんも大穴狙いっちゅうことやでい!お互いがんばろな!ほなまた!」
あぁ、早めに行ってくれて良かった。俺はあんまり知らない人と話すのが好きではない。レースも見たかったし助かった。
全ての馬がゲートに入り、間も無くゲートが一斉に開いた。
どの馬も最高に力強い走りを見せてくれた。
だが勝ったのは一頭。
番号は意外にも9番の馬だった。
1番:20.2◀︎
2番:260.8◀︎
3番:470.1◀︎
4番:520.9◀︎
5番:90.2◀︎
6番:300.4◀︎
7番:30.2◀︎
8番:100.2◀︎
9番:180.2◀︎
10番:1320.9◀︎
いきなり180.2倍である。値段にすると、901万円。
7日間の軍資金として100万円引き出してきたんだが、使い切るどころか951万円に増えてしまった。
当たり馬券を精算機に入れて金額を確認する。
液晶には9010000◀︎▶︎円の文字。勿論俺が受け取る時はこうなる。
90100000◀︎円
そう、1レースでなんと9010万円。
50万→9010万である。
「ぶっ飛んでるな〜」
ここまで来たら後の祭り。俺は勿論調子に乗る。なぜかって、楽しいからだよ。
「さぁ、行こう。まだレースは始まったばかりだ」
わん。