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88話 救出と樹海

ウェッジがエリィの見舞いに行ってから数日後。

エリィは無事に退院し、職務に復帰したとの連絡があった。

ウェッジは早速、例の《転移魔法》を使う魔法士を紹介してもらうため、《協会》を訪れた。

事件以降、《協会ブロンヅ》本部は警備体制が強化されていた。

入口で両脇の門番に呼び止められたが、相手がウェッジだと分かると慌てて敬礼してくれた。

憲兵と同じく、《協会ブロンヅ》でも顔の利く存在になったようだ。

相変わらず複雑に入り組んだ建物内を進んで、目当てのエリィの執務室に到着した。

部屋に入ると、珍しくエリィが椅子に座り、仕事に精を出している。

「こんにちは。退院おめでとうございます」

「ふふ、ありがとう。だが、こうも仕事が溜まっていては、はぁ、また病んでしまいそうだ」

事件で滞っていた仕事や新たに発生した仕事など、エリィの立場では代えの効かない業務というのは山ほどあるのだろう。

「ゆっくり過ごせたあの病室が、今は恋しいよ」

泣き言をこぼすあたり、本当に多忙を極めているのだろう。

そんな状況で私用を頼むのは心苦しいが、ウェッジは病室での約束を果たしてもらうことにした。

「エリィ。忙しそうなところ、大変申し訳ないのですが、《転移魔法》を使える方を紹介していただける約束でしたよね?」

「あぁ、覚えているよ。……だが、すまないね。その件だが、ちょっと困ったことになっている」

「何か、トラブルでも?」

エリィはこめかみに指を当てて、大仰にため息をついた。

「そう、トラブルだ。その《転移魔法》使いと他の魔法士数名で《協会ブロンヅ》の仕事に当たってもらっていたんだが、連絡がつかなくなった。現地で何かが起きたようだ」

「つまり、その魔法士は今……」

「行方不明、ということだ」

今度はウェッジが頭を抱える番だった。

エリィはウェッジを横目で見ながら、空々しく言った。

「あぁ、《協会ブロンヅ》は今人手がとても足りない状態だ。現地で何が起きたか、確認したくても行ける人が居ない。とても困った。誰か腕の立つ者が、現地に向かってくれたらなぁ。とても助かるのになぁ」

ちらちらとウェッジに目で訴えてくる。

ウェッジも負けじとわざとらしいため息をついた。

「そうですね……。こちらも、その方が居ないことには困ったことになります。仕方ありません。私が現地に確認に向かいましょう。面倒ではありますが」

ウェッジは面倒の部分を特に強調した。

「おぉ、行ってくれるのかい! さすがだね」

(こんな展開になるとは……。またも面倒なことになりそうですね)

最近、《協会ブロンヅ》もといエリィにいい様に使われている気もするが、元々冒険者とはそういうものだ。

依頼を請けて生活を立てる。

依頼を選り好み出来る立場ではない。

それに、事実、《転移魔法》無しではウェッジたちも先に進めそうにないのだ。

「それで、その魔法士の方たちはどういった用向きでどこに行ったのですか?」

ここで、エリィは神妙な顔つきになる。

「行ってくれるのは、大変ありがたいのだが、今回は君も十分に気を付けてくれたまえ。《協会ブロンヅ》の依頼した仕事というのは、ある場所の結界修復作業だ」

ウェッジも結界という言葉を聞いて、にわかに緊張感を高める。

魔法士や魔道具により安全な領域を造り出す、それが結界の利用法だ。

つまり、結界のある場所というのは、大抵が危険な地域である。

「普通の行き方では、かなりの苦労を伴うので、《転移魔法》を使って飛んでもらったんだが、それ故にこちらも救援を送りにくい。ウェッジ、君にも何かあった場合、助けを送れるか分からないからね」

「随分、脅かしますね。ですが、誰かが行かないといけないのでしょう?」

「ふふ、依頼主として注意を喚起しておきたくてね。君なら万が一も無いとは思う。彼らが向かった場所は、ここだ」

エリィが机から地図を出して広げる。

「かなり遠い場所ですね……。ここに何が?」

「ここではあるモノを封印している。君が向かってもらうところだ」


──名を《侵食樹海ディープ・フォレスト


数ある作品の中から、本作品をお読み頂いてありがとうございます。


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