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87話 見舞いと準備

マキシは沈黙を頑なに守っており、これ以上の質問は出来そうにない。

ウェッジは仕方なく、質問を終わらせることにした。

得られた情報は少ないものの、魔族の所在と総数が知れたことは大きい。

また、アリスの仇である魔族の情報も掴んだ。

マキシとアリスたちを部屋に帰して、自分の部屋で独りになったウェッジは知らず拳を握っていた。

(ようやく魔族に反撃する兆しが見えてきましたね……)

アリスに付きまとう恐怖の象徴であった、魔族。

アリスがマキシと顔合わせしたときの反応を見れば、未だに魔族はアリスの心に影を落としている。

その恐怖をいつか打ち払えるときが来る。

今日の話で、ウェッジはわずかな光明を見いだした。


ウェッジはアリスたちに外出する旨を告げて、宿を出た。

行先は街の病院である。

目的は、先日の協会立て籠もり事件で負傷したエリィの見舞いだ。

エリィは太ももの傷などをアリスに治してもらったが、失血と疲労で数日の入院を余儀なくされたのだ。

さすがのアリスも疲労までは回復出来ない。

ただ、エリィの場合は事件の影響だけでなく、日頃の不摂生も祟ったとか。

病院に着いたウェッジは受付に聞き、エリィの病室に進む。

病室の入口まで来たウェッジは人とぶつかりそうになった。

「おっと、失礼……。あ、貴女は!」

エリィの病室から出てきたのは憲兵であった。

憲兵はウェッジに敬礼をして、早足で去っていく。

事件の解決に貢献したことで、あれ以来ウェッジは憲兵に一目置かれる存在となった。

悪い気はしないものの、街中で憲兵に畏まった態度を取られると目立ってしまう。

少し気恥ずかしいので、何とかしてほしいと思うウェッジであった。

改めて、エリィの病室を覗く。

「ふふ、ウェッジかい。よく来てくれたね」

半身を起こしたエリィが快く出迎えてくれた。

「こんにちは、エリィ。具合はどうですか?」

「悪くないね。アリスに治してもらったから、傷はもう大丈夫だ。後はゆっくり休むように言われたんだが、どうも落ち着かないね」

顔色も事件当時と比べると、かなり良くなっている。

差し入れの果物を脇に置き、ウェッジはベッド横の椅子に腰掛ける。

「憲兵が来ていましたね。事件の聴取ですか?」

世間話といった風に聞いてみる。

「そうだね。と言っても、君がほとんど解明したから、後は詰めの作業だろうね。それと、《汎魔導教団》への強制捜査の準備かな」

「そうですか。《協会ブロンヅ》も協力するのですか?」

「出来ることならね。直接の介入は難しいが、魔法士の紹介と情報の提供は行ったよ」

ウェッジは事件の真相を解明したが、その後も捜査は続いている。

それらは地道な検証と気の遠くなるような作業の積み重ねなのだ。

そうやって、背後に潜む悪を追い詰めていく。

事件以降、憲兵に敬われているが、ウェッジも日夜活動を進めている憲兵たちに、惜しみない敬意を持っていた。

「それで、エリィに相談したいことがあります」

ウェッジは林檎をナイフで巧みに切り分ける。

ウェッジはエリィに、事件前にマキシという魔族と戦い、彼女と現在は休戦状態にあることを伝えた。

情報もいくつか得られたが、それによって持ち上がった問題をエリィに何とかしてもらおうと思ったのだ。

「……という訳です。そこで、エリィ。協会に所属している魔法士で、《転移魔法》を使える方はいませんか?」

「なるほど、《転移魔法》か。それは妙案だ」

エリィが膝を打つ。

《転移魔法》。

その名の通り、人や物を遥か遠方まで移動させることの出来る魔法。

魔族の根城は人類未踏の地といっていいところにある。

この魔法都市からそこに向かうなら、良くて半年、下手をすれば年単位での旅になってしまう。

だが、魔法で安全かつ長距離を移動できれば、魔族の本拠地への突入も現実味を帯びてくる。

ウェッジは《転移魔法》を使って、魔族に攻め込む気でいるのだ。

「ふむ、そこまで長距離を移動出来る《転移魔法》の遣い手……。あぁ、確かひとり居たね」

「本当ですか!?」

さすが《蒼銅協会ブロンヅ》の事務局長である。

「立て籠もり事件で助けてもらった恩があるからね。私が復帰したら、早速紹介してあげよう」

林檎を一切れ頬張りながら、エリィは快諾してくれた。

「ありがとう、助かります」

これで、魔族打倒のための、まずは《足》を得られた。

ウェッジはわずかだが、着実に前進していることに、手応えを感じていた。

数ある作品の中から、本作品をお読み頂いてありがとうございます。


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