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73話 籠城と人質

ウェッジたちはマキシと狼を連れて魔法都市に戻った。

マキシには翼をマントで隠してもらったが、さすがに狼の魔獣は街中では目立ってしまった。

狼(名をミチルと言うらしい)は人に対して無関心だったが、すれ違う人が怯えた顔をしている。

「まずは、アリスと合流しましょう。《協会ブロンヅ》で待機しているはずですから」

皆が揃ったところで、マキシから魔族などの情報を聞き取りする予定だ。

協会ブロンヅ》本部の建物までやって来た一行。

しかし、雰囲気がおかしい。

周囲に人だかりが出来て、憲兵が建物に入らないよう門の入口を封鎖している。

現場には緊迫感が漂っている。

「なにか、様子が変ですね……」

ウェッジはフィオと顔を見合わせる。

ウェッジは入口に立つ二人の憲兵のうち、厳めしい顔をした方に声を掛けた。

「すいません。中に知り合いが居ると思うので、通してもらえませんか?」

「あぁ? ダメだダメだ! この建物は今封鎖中だ! 関係者以外は離れていてくれ!」

「何故です? 理由を教えてください!?」

食い下がるウェッジ。

見かねたのか、もう一人の憲兵が事情を説明してくれた。

「今、この建物では《汎魔導教団》の信徒が人質を取って立て籠もっている。君の知り合いが居るというのなら、人質になっているかも知れん。そこの詰所に対策本部を置いているから、係の者に知り合いの情報を伝えてくれ」

「まさか……」

ウェッジは急いで幕で作られたテントのような簡素な詰所に向かう。

入口らしきところを覗くと、中では憲兵たちが机に間取り図を広げ、何やら検討中のようだ。

「すいません! 立て籠もり事件の本部というのは、こちらですか?」

何人かがウェッジの存在に気付いてくれた。

こちらに駆け寄ってくれた憲兵に、ウェッジはアリスが中に居るかもしれないことを説明する。

憲兵はメモを取ると、奥に居る憲兵長らしき人物にそのことを報告した。

髭を生やした憲兵長は腕組みをしながら、ウェッジに向かって言い放った。

「そこの君、知り合いが中に居るかは、まだ我々にも分からん! 犯人たちを刺激したくはないので、勝手な行動は謹んで、我々に任せるのだ!」

「待ってください! せめて、状況だけでも教えてください!」

「部外者は帰ってくれ!」

ウェッジは両脇を憲兵に抱えられ、詰所から引きずりだされた。

苦々しげに詰所を睨むが、憲兵たちの態度は変わらなかった。

ウェッジは頭を切り替えて、別のアプローチを思いつく。

「フィオ、魔力感知で何か分かりませんか!?」

「今やっている! ……まずいな、アリスの魔力は建物の中だ」

「人質になっている、ということですね……」

「そう考えてよいだろうな。近くにいくつも魔力の反応がある、一ヵ所に集められているのだろう」

(何とかしてアリスを助け出さなければ……)

ウェッジは隣のマキシを見て、ある可能性に思い当たった。

「この件、貴女の差し金ではないでしょうね?」

マキシに問い質すウェッジ。

「え、えぇ!? そんな、なんでわたしが人間と手を組んでまで、こんなややこしいことしなきゃいけないんですか!?」

「人間と組むというのは、テルモアで前例がありますよ?」

刃物のごとき鋭い目つきで、ウェッジはマキシを睨んだ。

「あれは、あー、テルモアさん……、けっこう道楽というか興味本位で何かすることあったりしたけど。……って違います! この件はわたし、潔白ですよ!」

信じてくださーい、と涙目になるマキシ。

(さすがに、ここまで否定するとなると……)

完全にマキシとは別件なのだろう、とウェッジは判断した。

偶然、マキシの襲撃と《汎魔導教団》の襲撃が重なったということか。

ウェッジは頭を冷やすと、情報収集を優先した。

「フィオ、エリィの魔力も建物の中ですか?」

「待っていろ。……、そうだな、あの女もどうやらアリスの近くに居るようだ」

「せめて、エリィの鳥で連絡が取れれば、内部の状況も掴めるのですが……」

辺りに飛んでいないか探す。

ふと、建物の上空を旋回している影に気が付いた。

ウェッジが試しに手を振ると、影はこちらに降りてきた。

近くまで来たところで、何度か見たことのある梟だということに気が付いた。

「エリィですか、大丈夫ですか?」

「……やぁ、ウェッジか……。……こちらは……、少々、困った……状況……」

何やら音声が遠いような感じだ。

「アリスは無事なのですか!?」

「無事……だが……、どうなるか……、分からない……」

「やはり助けが必要な状況なのですね……」

「頼む……。奴らに、屈すること……は、出来ない……」

「分かりました」

ウェッジが答えると同時に、梟が突如鳴きだした。

そして、いきなり空に飛び立ち、どんどん離れていってしまう。

「エリィの魔法が、切れたのでしょうか……?」

つまり、魔法での会話を続けることが出来ない状況になったということだと、ウェッジは推察した。

(状況は良くないということですね)

ウェッジは再び憲兵の詰所を見る。

いまだ目立った動きはない。

中で検討や議論だけが進んでも、実際に有効な対策を打つには、だいぶ時間が掛かるだろう。

しかし、人質の状況は一刻を争うものかもしれない。

ウェッジは自身の力で、アリスを助け出すと決断した


数ある作品の中から、本作品をお読み頂いてありがとうございます。


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