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6話 転生者と追っ手

ウェッジが部屋に戻ると、アリスとフィオは相変わらずくつろいでいた。

ウェッジは報酬で装備を充実させる前に、現状の把握と今後の方針を決めたいことをアリスに伝えた。


特に、ウェッジはアリスたちのことについて知らないことばかりだ。


そこで、足元を固めるために、いくつか質問したいとアリスとフィオに求めた。


「では、いくつか質問させてもらってよろしいですか?」


「内容によるが、貴様になら答えて良いかも知れん」


どうだ、アリス?とフィオが確認する。


「うん、あたしはウェッジさんを信じてる。良い人だよ。きっと大丈夫」


「そうか、では質問するがよい」


「では、まず、アリス。あなたは何者なのか」


アリスが追われる理由はそこにある、とウェッジは確信していた。

ならば、聞きたいのは、どうして年端もいかない少女が最高位の魔法をいとも容易く扱えるのか。

フィオは少し溜めてから答えた。


「アリスは、《転生者リライヴ》だ」


やはり、とウェッジは納得がいった。

転生者リライヴ》。ウェッジもそれほど詳しくはないが、話に聞く《転生者リライヴ》であれば、規格外の魔法を行使できることも腑に落ちる。

転生者リライヴ》については?と問うフィオに、人並みに、と答えるウェッジ。

フィオは、フン、と鼻を鳴らした。


「ならば、教えてやろう」


いつもより尊大さ割り増しで、フィオの《転生者リライヴ》講義が始まった。


◇◇◇


転生者リライヴ》とは、何か?この世界(・・・・)の人間は(・・・・)全て転生(・・・・)している(・・・・)

そう、言われている。

我も本当かは知らん。


知りたければ一度死んでみろ。


人は死んだ後、肉体から魂が抜け出し、天に昇る。

そこで魂は魔力と記憶を浄化され、魔力も記憶も持たない無垢な魂に戻る。

それはやがて新たな人の肉体に宿り、赤子として生を受ける。

これは、アリスのいた《教会シルヴァリ》の教えの受け売りだがな。


転生者リライヴ》とは、その過程で何らかの事態が生じ、魔力か記憶、あるいは両方を持って再びの生を受けた者、とされる。

滅多に現れんから、詳しくは分からんらしいな。


そのため、前世で蓄えた魔力を持って生まれた《転生者リライヴ》は、小さい頃から魔法士として膨大な魔力を行使出来る。


前世の記憶を持った《転生者リライヴ》は、幼い時には神童として、成人してからは天才として迎えられる。


つまり、《転生者リライヴ》は二種類、正確には三種類に分けられる。

まず、魔力型。次は記憶型。そして、両方。


そこまでは分かります、とウェッジ。


「では、アリスは魔力型の《転生者リライヴ》ですね?」


「そうだ。物心付かぬ頃から、前世から引き継いだ魔力でたびたび魔法を暴発させていたらしい」


「でしたら、アリスが狙われる理由も、その魔力ゆえですか?」


「恐らくな。あれほどの《治療魔法ヒーリング》を実行できる魔力だ。誰が欲しがってもおかしくはない」


言葉を切り、フィオは薪の煙を深く吸い込むと、ふぅと細く吐き出した。


「アリスの居た《白銀教会シルヴァリ》は教義で転生者を認めてはいない。穢れた魂扱いらしいな。まったく、人間は……」

「《転生者リライヴ》であることを隠して戻ればよいのでは?」


「当のアリスは教会に逃げ込むことを良しとしないのでな。今は追われる日々ということだ」


「だって……。絶対、迷惑だよ、そんなの」


「その追ってくる相手というのは?」

「大抵はどこかから依頼を受けた冒険者だ。しかし、それとは別に狙っている奴がいる。恐らくだが、魔族だろう」

「魔族? また眉唾な話ですが、信じてよいのですね?」


「貴様が信じるかは勝手だ。だが、アリスは魔族に住み処を焼かれた。慕っておった人間、思い出もろともな。それは間違いない」


ウェッジは言葉を失った。


アリスは黙ったままだ。

腕輪を強く握り締め、押し寄せる感情をこらえているようだ。


「とりあえず、分かりました」


ウェッジはここが引き際と心得た。

これ以上、アリスの心に遠慮無く足を踏み入れる真似はしたくなかった。


「ひとまず、日も落ちて来ました。休憩にしましょう」


ウェッジが食事を用意するという提案には誰も答えず、自然に散会となった。


◇◇◇


ウェッジは食材の買い出しに行く道すがら、手に入れた情報を吟味することにした。

恐らく、フィオの話に嘘偽りはないだろう。

フィオはいまだ正体のよく分からない精霊リスもどきだが、アリスに対しては真摯な態度だ。

ウェッジはこれまでの道行きでそう実感していた。

そういえば、とウェッジはここでフィオ自身のことについても聞くのを忘れていたことに気付いた。


それはさておき。


(魔族、となると未知数ですね)


魔族。


それは伝承の類いに出てくる、人とも精霊とも違う、魔物に近い何か。

魔物に組織だった動きがあると、その背後に存在が噂される程度しか情報は無い。


あの依頼を受けた二人の冒険者の存在もある。

魔族が人間に依頼を出すことはないので、アリスを狙う人間が別にいることになる。


(そちらは対処のしようがある)


ウェッジは用心棒を買って出た手前、将来の危険性については配慮しておく必要があった。

心配し過ぎることはない、ということをウェッジは長年の経験で知っていた。


(結局、肝心なことはまだ聞けないままですが)



――それで、アリスはこれからどうしたいのですか?


◇◇◇


新しいステータスが公開オープンされました。


名前:アリス・ワーグ・アリス

種族:人間 《転生者》

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