56話 四天王と会議
ここは《絶えず叫ぶ者の城》と呼ばれる、魔境にそびえる城。
暗い城内。
黒い甲冑を身にまとった者が廊下を歩いている。
壁に掲げられた松明の篝火が、ゆらりと揺れた。
そして、甲冑は部屋に入った。
部屋には、四つの席が備えられた円卓。
二体の人ならざるものが、すでに座っていた。
ひとりは、かつてウェッジたちと邂逅した相手。
灰色の羽を持つ暗褐色の肌の女魔族だった。
もうひとりは、白い鳥のような翼を持つ女性。
彼女も魔族のひとりである。
金色の髪をアップにして、卓上にいくつもの書類の束を並べていた。
甲冑が席に着く。
どうやら、この顔ぶれでは甲冑が格上のようだ。
甲冑が口を開くと、重く錆びついたような声が響いた。
「《かくも水深き者》テルモアがやられたか……。だが、奴は我らの中でも一番の……、小粒……」
「それを言うなら、小物じゃないかしらァ」
灰色の羽の女魔族が口を挟む。
「……、奴は我らの中でも一番の小物……」
「いいわよ、言い直さなくったってェ」
どうやら、彼らはテルモアの仲間であり、彼が討たれたことで話し合いをしているようだ。
「小物って言い方ひどくないですか? しかも、少なくとも貴方たちよりはちゃんと仕事してましたよ」
白い翼の魔族は棘のある口調で発言した。
「マキシ、アナタ真面目すぎよォ」
「そうだ……、そうだ……」
マキシと呼ばれた魔族は周りからの非難に反論した。
「真面目、っていうより、仕事なのでこれが普通です!」
マキシは立ち上がり、机をバンッと叩く。
「っていうより、なんで貴方たち、会議の資料持ってきてないんですか!?」
マキシの前には書類が積まれているが、他の者は手ぶらだった。
「テルモアさんがやられた後、対策資料だって言って、すぐ配ったじゃないですか!」
甲冑と女魔族は顔を見合わせる。
その後、マキシを向くと首をかしげた。
「えっ、嘘、……まさか、目も通してない!?」
せっかく作ったのに……、と肩を落として沈むマキシ。
「もう、ホント……、昔みたいに会議で何となく話してたら何となく決まる、みたいなノリ止めてください!」
少し涙目でマキシは力説する。
「ちゃんと、会議前に資料を読んで、会議で何を決めるかを頭に入れて、議題についての話し合う土台があって、それでようやく会議が円滑に進むんですよ!!」
ばしばしと書類を叩くマキシ。
「拙者はその様なことは好かぬ……」と甲冑。
「アタシも、そういうの、メンドー」と女魔族。
周囲の理解を得られず、マキシは頭を抱える。
「ホント、この顔ぶれでちゃんと仕事らしい仕事してたの、テルモアさんだけだったのに……」
《四獣遣い》は(マキシにとっての)唯一の良心を失っていた。
「なんで、やられちゃったんですかー!!」
マキシの慟哭が、城に絶叫となって響いた。
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