55話 合流と情報共有
ウェッジは体力がある程度回復したのを確かめると、寝ているアリスを背負った。
アリスは自分への《治療魔法》が上手く効いたようで、外傷は消え、すこやかな寝息を立てていた。
そして、先程逃走したジュノを探しに森の中を進んでいく。
道中で、オリキスを縄で縛り上げ、引き連れているシェリンガムと合流した。
最初は木に縛り付けていたが、地形が変わるほどの戦闘の余波を受け、離れて避難していたという。
「こちらに、魔力の反応が二つだ」
フィオの案内で進んでいくと、パィロが地べたに座っていた。
「おぉ、お疲れ様ッス!」
頭から血を流し、服はボロボロだが、変わらず元気そうなパィロである。
その後ろでは、ジュノが仰向けに寝ていた。
顎に殴られた跡があり、どうやら気を失っているようだ。
「ウェッジさん、とっちめてやったッスよ!」
パィロが誇らしげに成果を語った。
「ありがとうございます、皆さん」
これで、キーロフ殺害の犯人を確保することが出来た。
魔族との戦闘、アリスの負傷という思わぬ出来事もあったが、今こうやって皆が無事でいる。
ウェッジはそのことに安堵した。
◇◇◇
その翌日。
ウェッジはエリィへの報告のため、《協会》の本部を訪れた。
エリィの部屋で、彼女はいつも通り机に座って待っていた。
「お疲れ様。昨日は大変だったね」
「やはり、監視を付けていたのですね」
ウェッジがエリィを睨みつける。
「怖い顔をしないでほしいな。監視ではなく、何かあったときの保険だよ」
しれっと言い訳をして、ウェッジの刺すような視線を躱すエリィ。
「だが、事件の背後に魔族が居たのは、さすがの私も驚いた」
エリィは真面目な顔つきで語る。
「オリキスたちの所属していた《汎魔導教団》もどうやって魔族と接触したのか、魔族が転生者の殺害にどう関わっていたのか。この事件、徹底的に解明しなければならないものになった」
ウェッジもテルモアとの会話で得た情報をエリィに還元することにした。
「当の魔族が言っていたことですが……。『《転生者》を抹消することが魔族の至上命題だ』と」
「ならば、今後も《転生者》に対して、魔族が干渉してくる恐れがある……、ということかい?」
エリィはこめかみに指を当て、深刻な口調だ。
「可能性は高いでしょう。あと、少なくとも二、三体の魔族が存在します」
「《四獣遣い》か……」
かつて魔族をそう呼んでいたという。
テルモアの場合、使役していたのは巨大な蛇だった。
フィオの攻撃で上手く倒したが、あれだけでも並みの魔獣より遥かに手強い。
「《汎魔導教団》への調査で、その辺りの情報が少しでも手に入ると良いがね。憲兵隊と連携して、まずはオリキスとジュノ、両名への尋問だ。そして、時期を見て《教団》への捜索となるだろう」
「期待してます」
依頼のきっかけは半ば強制的だったが、終わってみれば、思った以上に根の深い出来事だった。
特に、魔族関連の情報はウェッジにとっても重要だ。
「そういえば、アリスの様子はどうだい?」
恐らく、本筋の話はこれで終わったのだろう。
エリィが軽い口調で訊いてきた。
「えぇ、昨日は心配しましたが、元気になりました」
「それは良かった。彼女に何かあったら、私も心苦しい」
エリィの口許が少しほころぶ。
この発言は本心かどうか分からない。
だが、何となく、エリィもアリスに肩入れしているのではないかと、ウェッジは感じた。
「では、私はこれで失礼します」
エリィとの情報共有を終えて、ウェッジは《協会》を後にした。
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