49話 チームと追跡
エリィから半ば脅しに近い形で依頼を受けたウェッジは、その翌日、《協会》の共同捜索チームに組み込まれることとなった。
アリスとフィオも一緒である。
《協会》からの参加者は二名。
エリィいわく、どちらも戦闘経験を持つ魔法士とのことだ。
そのうちの一人が、ウェッジに話しかけてきた。
「ども、ウェッジさんですよね? 魔法大会、観てたッス!」
黒髪を短く刈り上げた、がっしりした体格の青年である。
「自分、パィロ・バーンズって言うッス! ヨロシクッス!!」
気安い態度であるが、ウェッジにはどうやら好印象を持っているようだ。
「私は、シェリンガムだ……」
もう一人も名乗ったが、フードを目深に被っていて、あまりこちらとの会話に興味は無さそうだった。
各自の顔合わせも済んだところで、目的に向けて出発した。
目的、すなわちオリキスとジュノの確保。
二人の抵抗が予想されるため、戦闘力のある魔法士とその護衛としてウェッジが当てられた。
確保は秘密裡に行われる必要があるため、少人数で夜に二人の住処を強襲する手筈となっている。
オリキスたちとの戦闘経験があり、《斥候》でもあるウェッジが先導して、二人が生活しているとされる民家にたどり着いた。
(何事もなければ良いのですが……)
ウェッジが静かに窓を破り、屋内に潜入する。
状況を確認し、他のメンバーを引き入れた。
皆で屋内を捜索する。
しかし、オリキスとジュノの姿が見当たらない。
捜索で散った皆を一度、居間に招集する。
「もぬけの殻……? まさか、作戦のことが漏れていた?」
シェリンガムが疑問を投げかける。
「いえ、直前までは確かにここに居たようです」
ウェッジは屋内を物色して、生活の痕跡を認めていた。
「ならよォ、まだ近くにいるッスよね!?」
パィロが声を張る。
「フィオ、魔力感知で分かりませんか?」
「この家の裏から離れていく魔力が二つ……。おそらく、その二人だろうな」
「追い掛けましょう」
ウェッジが駆け出そうとした。
「待て! すぐそこに魔力反応、今さっき生成されたようだ!」
フィオが警告を放ったと同時に、窓が破られる。
ズシンと音を立てて侵入してきたのは、オリキスの《氷魔像》だった。
獅子型の像が唸り声を上げて、こちらに敵意を向けてくる。
「時間稼ぎ、のようですね……」
ウェッジは戦闘態勢に入った。
「きゃあぁ!」
《氷魔像》がアリスに向かって突進してきた。
「うぉおおお!!」
パィロが叫び声を上げて、アリスとの間に割って入る。
そのまま、《氷魔像》の横っ面に殴りかかった。
彼の拳は炎に包まれており、明々とした光を放っている。
「ここは俺に任せて、オリキスたちを追ってくれッス!!」
どうやら、パィロの魔法は炎と格闘術を組み合わせたもののようだ。
《氷魔像》を相手に、狭い室内でも上手く攻撃しながら立ち回っている。
「助かります! ですが、無理をしないように!」
「ありがとう!」
ウェッジとアリスは一言添えると、窓から飛び出していく。
シェリンガムも、パィロを見て頷くと、ウェッジに続いた。
「彼らは一体どこまで行く気なのでしょう……」
走りながらウェッジはシェリンガムに聞いてみた。
「このまま行けば、街の郊外の森だが……。そこで撒く気なのか?」
(彼らの狙いが分からない以上、早めに追いつくしかない)
ウェッジは疑問を押し殺し、走る速度を上げた。
森に入り、数刻が経った。
フィオの案内のおかげで、確実にオリキスたちには近付いている。
そして、
「いました!!」
夜目の利くウェッジがオリキスたちを発見した。
すかさず、ナイフを放ち、機動力を削ごうとする。
「ぐっ!?」
オリキスの肩にナイフが命中した。
「奴ら、もうこんな所まで来たか……」
オリキスが苦々しげに言葉を吐く。
「このナイフ……、まさかあのナイフの女か!?」
ジュノはウェッジのナイフを見て、狼狽しているようだ。
「ジュノ……、お前は逃げろ」
オリキスがジュノを庇い、前に出てきた。
「あのお方のところへ、無事にたどり着け……」
「オリキス、お前……」
ジュノはそのまま森の奥に向かって駆け出した。
ウェッジたちがオリキスを囲む。
オリキスと対面したウェッジは、ナイフを突き出し、彼に問い質した。
「ひとつ、聞きます。貴方が、モダン卿を殺害したのですか?」
「そうだ。俺とジュノが殺した……」
「何故、殺したのです」
「《転生者》は死なねばならん。それが、あのお方より賜った我らの使命だからだ」
「あのお方……?」
「お前たちにも、直に分かる……」
それきり、オリキスは口を閉じた。
あまり、ここで尋問じみた真似も出来ない。
それに、先程逃げたジュノも追いかけなければならない。
ウェッジたちはシェリンガムにオリキスの拘束と監視を頼むと、ジュノを追跡することにした。
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