46話 大金と訃報
祝勝会の翌日。
宿屋の自室にて。
アリスがごくりとつばを飲む。
「ウェッジさん……、どうしよ……。あたし、修道院暮らしだったから、こんな大金、見たことないよ……」
ウェッジが魔法大会の賞金を受け取り、大金の入った小包みを抱えて返ってきたのだ。
「そこまで言うほどの額では……。ただ、そうですね……、私も一度にこれだけの金額を報酬として受け取ったことはありませんでしたね」
ちなみに、グロリアには、最初は賞金の半分を渡そうとしたが、
「わたくし、本当にそこまで役に立っておりませんわ……」
と言って受け取りを固辞するので、ウェッジが折れて三割の金額を引き渡した。
それでも、かなりの金額が手許に残っている。
「そもそも、このお金は私たちがこの都市で、魔族や追っ手との戦いに備えるためのお金なのですから、このまま少しずつ使っていく形が一番では?」
「そ、そうよね。なんか、こんな大金見ると、金銭感覚おかしくなっちゃうよね」
「ですが、まとまった資金であれば活用する方法が生まれてくるのも事実ですね。ふむ、宿屋の長期滞在費を一括前払でする代わりに値引き交渉をしたり、いっそ安い空き部屋を買い上げるという手も……」
「うぅ、あたし、そういうの苦手だから、ウェッジさんに任せるよ……」
そのとき、窓を叩く音がした。
見慣れた梟が一羽。
エリィの使い魔だ。
窓を開けるなり、部屋に飛び込んできた。
「どうしたんですか、急に」
部屋のテーブルに乗ると、梟は羽を広げた。
そして、厳かに告げる。
「……良くない報せだ。《検閲図書館》キーロフ・モダンが殺害された」
「えっ!?」
アリスが驚き、ウェッジも息を呑んだ。
「殺されたのですか……?」
ウェッジが梟を問い詰める。
「間違いなく、他殺だ」
「いつ、どこで、誰に」
「まだ、分かっていることは少ない」
「なぜ、私たちに知らせてくれるのですか?」
「彼は君たちも知らぬ仲ではあるまい。それに……」
「それに……?」
「いや、私の勘だと言っておこう」
「?」
「詳しいことが聞きたければ、彼の館まで足を運ぶといい。私の部下に調査をさせているのでな」
「つまり、現場はあの館ですか?」
「そうだ」
「……分かりました」
ウェッジは身支度を始める。
「……行くんですか、ウェッジさん?」
「はい」
「あたしも、行きます」
「そうですか。危険は少ないと思いますが、気を付けてくださいね」
「はい。でも、あたし……、モダン卿に、祈りたいんです……」
アリスは目を伏せて、銀の腕輪を握っていた。
「そう、ですね……」
ひとが、ひとり死んだのだ。
ウェッジは、アリスの哀しそうな瞳を見て、ようやくそのことを実感した。
ウェッジはキーロフのことを思い出した。
記憶型の転生者であるため、見た目は幼い子供であるが、貫禄や威厳のある振舞いがしっくりときた不思議な人物。
そして、彼の館で起きた殺人事件。
ウェッジには妙な胸騒ぎがあった。
この事件は、アリスにも何か魔の手が迫る前兆ではないか、と。
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