表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/118

27話 蒼銅協会と二つ名

宿で疲れを取った次の日、ウェッジたちは《蒼銅協会ブロンヅ》の本部に向かうことにした。


グロリアは別行動ということで、フィオを隠してウェッジとアリスで《協会ブロンヅ》本部の建物までやってきた。

尖塔がいくつも連なる複雑かつ重厚な建物。

重く固い木の扉を開ける。

中は薄暗く、受付も見当たらない。

通りすがりの人を捕まえては道を聞き、を繰り返して、ようやく事務局の受付までたどり着いた。

ウェッジはここで気合いを入れた。

ここからは、交渉ごとになる。

コネも伝手ツテもなく、いきなり飛び込んできたのだ。

アリスに対してどんな反応をするかも分からない。

行き当たりばったりでも、出来るだけ良い条件を引き出さなければ、ここに来た意味が無いのだ。

受付の女性に、今日は相談事で訪ねてきた旨を伝える。

すると、年配の男性が奥から出てきた。

おそらく、事務的な対応になるだろうとウェッジは予想していたが、まさにその通りだった。

事務員風の男性に、同伴している女性は転生者であり、狙われているので、《協会ブロンヅ》に保護を求めたいと伝えた。

事務員はこめかみに筆記具を当て、渋い顔をする。

「いきなり、そんなことを言われましても……、こちらとしては、保護出来る出来ないではなくて、あまりそういったことは前例が無いことでして……」

なんともはっきりしない玉虫色の回答である。

だが、ウェッジもここで引いては無駄足になると、意気込んで事務員を説得しようとした。


その時である。

ウェッジの目の前に梟が飛んで来た。

驚く両者。

だが、事務員は驚いた後、すぐに苦い顔になった。

「その話、私が聞こう」

梟から声がする。

やや低いが、女性の声だ。

「局長……。ですが……」

事務員が梟に対して何か言いたげであった。

「私の所に連れてきなさい」

続く梟の声に、分かりました、と不承不承で応じる事務員。

「では、こちらでお話を聞くということです……」

ウェッジは、とりあえず成り行きに任せることにした。

梟の声の主は、かなりの権限を持っていることが分かる。

アリスの交渉をするのに妥当な相手である可能性が高い。

梟が飛び立って、奥の通路に抜けていく。

どうやら道案内も兼ねているようだ。

ウェッジとアリスは後を付いていく。


「わぁ、なんか、これ、魔法都市って感じがしてきました……!」

アリスは今の状況にえらく感動している様子だ。

ウェッジたちは何度も階段を上り降りし、いくつもの通路を経て、重厚な扉の前までやって来た。

ひとりでに扉が開く。

梟はすい、と吸い込まれるようにして入っていった。

ウェッジたちも意を決して部屋に入る。

部屋の中は、梟や鷲、その他の様々な鳥で溢れていた。

鳥の止まり木があちこちから生えている。

部屋の中心に机と椅子があり、一人の女性が机に腰掛けていた。

「よく来たね」

女性が自身の肉声で話しかけてくる。

見た目は二十代後半から三十代前半、黒のローブをタイトに着こなしている妙齢の美女だ。

カールがかかった黒髪で片目が隠れている。

「まずは、自己紹介といこうか。私の名は、エリィ・クライン。この《蒼銅協会ブロンヅ》の事務局長を務めている」

「私はウェッジ・モルガ。こちらは、アリス・ワーグ・アリスです」

「ふふ、ありがとう。だが、もう一柱、いるんじゃないかな?」

「!?」

アリスはウェッジの方を見た。

フィオのことを言っているのだ。

説明が面倒になるので隠していたが、把握されているのなら隠し立てする必要はない。

フィオを解放して、侵食精霊であることを伝えた。

「侵食精霊……。この私ですら、実際に見たのは二柱目だ」

エリィは少し驚いた様子だ。

「さて、ここに呼んだのは、その子のことだったね。《転生者リライヴ》であり、保護して欲しい、と」

そうです、とウェッジは答える。

しかし、ここに来て、エリィと顔を合わせてみると、果たしてアリスを保護してもらっても良いのか、と不安を感じ始めていた。

エリィという人物の底知れなさがウェッジの判断を迷わせていた。

「いいだろう」

あっさりと、エリィは承諾した。

「え?」

ウェッジは拍子抜けした。

もっと、事情の説明などを迫られると思っていたからだ。

「転生者で、しかも侵食精霊とセットだ。どこかしこから狙われるのも当然だろう。我ら《蒼銅協会ブロンヅ》の間では転生者を《世界の法(・・・・)を紐解く(・・・・)得難き者(・・・・)》として認識している。積極的に我らの手で保護すべきだとね」

「そう、……ですか。ありがとうございます」

ウェッジは口では礼を言った。

しかし、まだ心の中では警戒を解くことを許さない何かを感じていた。

「だが、試験・・は受けてもらおうかな」

エリィがそう告げると、彼女の周りに蒼白い光が生じ、《契約書》が複数現れた。

(魔法!? ここで仕掛けてくるのか!)

ウェッジは驚き、アリスの方へ振り向いた。

すると、アリスの足元から突然木の芽が現れ、太く成長したかと思うと彼女を包み込んだ。

「きゃあぁ!」

太い幹がアリスの華奢な身体をぎちりと締め上げる。

ウェッジは樹に大振りのナイフを振り下ろすが、幹は堅く切り倒すには骨が折れそうだ。

フィオが炎を放とうとしているのに気付き、ウェッジは制止する。

フィオも焦ったのか、アリスにまで火が及んでしまうことを失念しているようだ。

「さぁ、どうする?彼女の魔法で窮地を脱することは出来るかな?」

試すというよりはもてあそび愉しんでいるように見えるエリィ。

「アリス、大丈夫ですか!?」

ウェッジが呼びかける。

アリスは喉や胸に巻きつかれ苦しそうだが、

「大丈夫……」

と答えた。

「くそっ!」

ウェッジがナイフを何度も振るう。

次第に樹の幹が削れてきたが、まだ時間がかかりそうである。

「ウェッジさん……、離れて……」

アリスがかろうじて声を出す。

そして、アリスの周りに魔法の光が生じ始めた。

「アリス! いったい、何を!?」

「……精霊よ! 我が魔力の、鍵をもって、生命の錠を開き給え!!」

アリスが魔法契約を実行した。

樹が蒼白い光に包まれる。

すると、急速に樹の色が変わり細くなっていった。

樹が異常な速度で枯れていく。

ウェッジはここでアリスが何をしたのか理解した。

(これは、アリスの《治療魔法ヒーリング》!)

アリスは《治療魔法ヒーリング》を応用した。

樹に過剰な生命力を与え、成長サイクルを異常促進することで、樹を枯らしたのだった。

アリスは樹から解放されると、地面に倒れ込んだ。

「アリス!!」

ウェッジとフィオが近寄る。

アリスは疲労と首などに痣が出来ているが、他は大事ない様子だった。

アリスはなんとか立ち上がると、エリィに向かってはっきりと言った。

「これで、試験は合格ですか!?」

エリィは口の端を大きく吊り上げて笑うと、パンパンと手を叩く。

拍手のつもりだろう。

「そうだ。よくやった、《転生者リライヴ》の少女!」

確かに、アリスの力量はこれで十分に伝わっただろう。

しかし、一歩間違えば、アリスに重大な事故が生じていたかもしれない。

ウェッジは、エリィの試験には納得出来なかった。

フィオも怒り心頭の様子である。

この部屋全てを燃やし尽くそうと、炎を吐こうとする一歩手前だ。

当のエリィは彼らの怒りの視線を受け流し、アリスに向かって歩み寄った。

「アリス・ワーグ・アリス。魔力型の《転生者リライヴ》にして、《白銀教会シルヴァリ》のシスターよ。君には我ら《協会ブロンヅ》の庇護と支援、そして二つ名を授けよう」

「二つ名?」

アリスが聞き返す。

「そうだ。《転生者リライヴ》に我らは二つ名を授け、それを名誉として讃えている」

「それって、何か凄そう……」

「あぁ、確かに称賛に値するだろう。アリス・ワーグ・アリスよ、君に贈る名は《白銀の鍵》だ」

「《白銀の鍵》……」

芝居がかった仕草で、エリィは手を広げると、恭しく礼をした。

「そして、ようこそ。我らの《蒼銅協会ブロンヅ》へ。同朋として歓迎しよう」

数ある作品の中から本作品をお読み頂いて、ありがとうございます。


もし、気に入って頂けたら、評価ptの入力やブックマーク登録を是非お願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ