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20話 待ち伏せと干渉

ウェッジたちは村を出た後、街道を進んだ。

次の町までは、平坦な街道をほぼ道なりに進んでいけばよい。

途中、魔獣や野犬などに襲われたりはしたが、ウェッジが対処した。

旅は順調に見えた。

しかし、ウェッジは進むにつれて警戒を強めていった。

追っ手の傭兵団に対する警戒である。

(そろそろ、こちらに追い付いてもおかしくはない)

ならば、いつ、どこで仕掛けてくるのか。

ウェッジたちが森の入口まで進んだときである。

ウェッジはそのまま森に入ろうとするアリスを手で制した。

注意深く森を観察する。

(……居る)

森の中で息を潜め、こちらを窺っている人間が。

ウェッジは森を睨んだ。

この森を抜ければ次の町に着く。

なのに、ここで足止めとは。

しかし、下手に動くことはできない。

そのまま、しばらく膠着状態となった。

どちらが先に痺れを切らすのか。

すると、ガサリ、と森から物音がした。

「ふぅ、こりゃ参ったな」

この年になると、ずっと待ち伏せの姿勢はこたえるんだよ、とぼやきながら一人の男が茂みから現れた。

「仕事には締め切りってもんがあるから、いつまでも、ここで睨み合いしてるわけにはいかねぇのよ」

男はそう言うと、腰に差した細身の小剣を抜いた。

「俺は傭兵団兵長のグラントンだ」

(やはり、傭兵団……!)

ウェッジは警戒心を強める。

「女子供が相手ってのは、気が進まないんだがな」

頭をかきながら、グラントンはとぼけた風に言った。

気の抜けそうな言動。

だが、ウェッジはこの男の動き、その背後の森に潜む仲間の動きに最大限の注意を払った。

「だが……、済まないが、これも仕事でな」

グラントンが少し困ったように笑い、言った。

「その嬢ちゃん、こっちに渡してもらえるかい?」

「当然、却下です」

ウェッジが即座に断る。

「じゃあ、面倒になるが……」

グラントンは声を低くする。

「力ずくだ」

グラントンがそう言うと、茂みから数人、樹の上にも数人の傭兵が現れた。

情報屋のツォラは傭兵団の人数を十数人と言っていた。

今見えている人数がグラントンを含めて十人ほど。

ならば、周りに残りの傭兵も潜んでいると見てよさそうだ。

「ウェッジ、森ごと焼き払うか?」

フィオがウェッジに確認する。

(止めてください。町に類焼しかねません)

ウェッジが声を落として返答する。

フィオであれば、目の前の森を焼き払うことも容易だろう。

だが、加減を知らない。

フィオには、周囲の被害も考えて対応するよう求めた。

ウェッジはグラントンや傭兵たちを観察する。

相手の力量や装備を見極めようとしたときだった。

「いたぜ、あの時の!」

「よくもやってくれたな!」

「「怪力女!」」

樹の上にいる二人の男が声を重ねて叫ぶ。

「……?」

ウェッジは小首をかしげる。

あんな失礼なことを言われる心当たりが全く無かった。

「って、何で『さて、覚えがありませんが?』みたいな顔してるんだよ!」

「人を石畳にぶん投げといて、よくそんな顔が出来るなぁ!」

男たちはさらに叫ぶ。

ウェッジは手をポンと叩く。

「……あぁ、あの時の」

あの夜、街を出るときに出口のところに居た二人組だった。

彼らはアリスが街を出たという情報を傭兵団に伝えた。

ある意味ウェッジたちが追いかけられる原因を作った二人、とも言えた。

「その口、封じとけば良かったですかね……」

「さらっと怖いこと言ってんじゃねぇよ!」

気を取り直し、ウェッジが敵の武装を確認する。

弓使い八人に魔法士一人。

まずは、遠距離で攻めてくるようだ。

樹の上の傭兵たちが弓を構える。

茂みに控えている魔法士の周りに蒼白い光が見える。

小さい方の娘(・・・・・・)を狙っていけ!」

グラントンの号令がかかる。

(狙いはアリス!)

アリスに傭兵団の矢と魔法の矢が迫る。

「きゃあ!」

アリスが短く悲鳴をあげる。

「フィオ!」

「ウェッジ!」

ウェッジが矢を撃ち落とし、フィオが魔法の矢を焼き払った。

第一波をしのいだ所に、続けて次の矢が放たれる。

フィオに矢の処理を任せ、ウェッジは射手の方へナイフを放つ。

樹の上に居た者も含め、弓使いの肩や太股にナイフが突き刺さる。

魔法士は先の攻撃魔法を実行した後、すぐに防御魔法を展開していたようだ。

ナイフが弾かれてしまった。

しかし、これでアリスを狙う者は概ね排除できた。

魔法士一人の攻撃程度なら十分に対応が可能だ。

ここで、ウェッジはフィオの異変に気付いた。

フィオから肌を焼くほどの熱が吹き出ているのを感じる。

「よりによって、アリスを狙うとはな」

怒気をはらんだフィオの声。

フィオの尻尾の炎が大きく燃え上がる。

「アリスに仇なす人間どもよ」

どうやら、彼らはフィオの逆鱗に触れたようだ。

「灰すら残さぬ、塵すら許さぬぞ」

「フィオ……、あたしは大丈夫だから……。あんまり怖いことしないで」

アリスが訴える。

確かに、このままでは辺り一帯が火の海になりかねない。

フン、と鼻を鳴らすと、フィオがアリスの顔を見た。

「全く、我に意見するとは……」

フィオも少しは落ち着いたようだ。

「だが、我の腹の虫は収まらん。おい、そこの魔法士」

傭兵の魔法士がたじろぐ。

怒り狂う炎が向かってくるような恐怖を感じたのだろう。

「貴様に教えてやろう。精霊の怒りを買った者の末路をな」

気圧されているものの、魔法士は手を広げ、蒼白い光をまとう。

再び攻撃魔法の契約を準備しているのだ。

魔法士の目の前に《契約書》が浮かび上がる。

だが、魔法士が《合意文アグリメンツ》を唱えようとしたその時、《契約書》が弾け飛ぶように消えた。

何が起きたか分からず、愕然とした表情の魔法士。

「ヒヒヒ、何を驚いておる?」

フィオが心底楽しそうにわらう。

「精霊が契約に対して何も応えんのだろう」

魔法士は、精霊よ!と必死に呼び掛けているが、やはり契約書はすんでの所で消えてしまう。

「これが《精霊干渉・・・・》だ、人間」

フィオが言い放った。

──《精霊干渉》。

侵食精霊であるフィオがこの場にいる精霊に干渉し、他の魔法士からの働きかけを阻害するという、魔法士殺しの能力。

フィオが話す水車の例えでは、魔力の水流を受けて回るはずの精霊の水車を、力業で回らないように止めているのだと言う。

世界の摂理に干渉し、ルールを侵食する。

これが侵食精霊と呼ばれる所以ゆえんなのだろう。

「ヒヒヒ、今まで精霊をほしいままに動かしていたのだろう?どうだ、精霊に裏切られた気分は?」

フィオが嗜虐的に問い掛ける。

対する魔法士は、もはや何も出来ず、ただ震えているだけだった。

「フム、もう十分か」

フィオが炎の矢を魔法士に撃ち込む。

溜飲が下がったのか、フィオの尻尾の炎も収まってきた。

「《精霊干渉》も解いた。死なん程度に治すがよい」

炎の矢を受けて燃えている魔法士に、フィオが告げた。


◇◇◇


新しいステータスが公開オープンされました。


フィオ・デ・フィラム

スキル:精霊干渉……Aランク

数ある作品の中から本作品をお読み頂いて、ありがとうございます。


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