101話 手記と変貌
◇◇◇
■月■日
今回の依頼は、かなりの遠方に向かうようだ。
まったく、ギルドの奴ら、こき使いやがって。
だが、《協会》の依頼は金払いが良いからな。
この依頼が終わったら、冒険者の仕事も一旦休むか。
アメリにはガキの世話で苦労をかけたからな。
これで、ちっとは楽させてやれるだろう。
■月■日
ようやく、《侵食樹海》に辿り着いた。
しかし……、なんだか気持ち悪い森だな。
誰かにずっと見られてる気がする。
聞いたところでは、この森は魔鳥が出るらしい。
魔物とか、勘弁してくれ。
同行してきた《協会》の魔法士、フレッチて言ったか、コイツもイマイチ頼りにならねぇし。
いつもの仲間たちは、ただ球を嵌めるだけの仕事だってんで、気楽に構えてやがる。
全く、そうだといいんだがな。
■月■日
《樹海》の中をひたすら進む。
行けども行けども木ばっかりで、気が狂いそうだ。
魔鳥は二、三匹ほど見かけたが、慎重に行動して、なんとかやり過ごせた。
そんな苦労もあったが、ようやく一つ目の魔道具に着いた。
そういや、この森では他の生き物を見かけねぇな。
ほんと……、なんだよここは。
■月■日
やべぇ、やべぇやべぇ。
なんだよ、アレは。
あんなの聞いてねぇ。
突然、ヒトみてぇな魔獣が現れやがった!
二つ目の魔道具がすぐそこだってのに!
俺も冒険者やって長いが、あんなの知らねぇ!
魔法まで使うとか、ありえねぇ!
……ジェイプがアレに腕を噛まれた。
なんとか皆でアレを引き剥がして、急いで逃げてきた。
正直、この森から逃げ出してぇ。
破格の報酬だからって、こんな裏があったのかよ、チクショウ!
■月■日
アレがうろついてる所を避けて、二つ目の魔道具を起動できた。
こうなったら、アレに出くわさないうちに、さっさと済ませるに限る。
……それから、ジェイプがやべぇことになってる。
噛まれた傷口から蔦が生えてきやがった。
ジェイプはもう、こっちの言葉に反応しねぇ。
このままだと、どうなるんだよ……。
■月■日
三つ目の魔道具まで来たところで、例の魔獣に囲まれた。
フレッチがギリギリまで魔法を使って、なんとか追っ払うことが出来た。
《協会》のいけ好かねぇ奴と思ってたが、悪かった。
だけど、そのせいでフレッチは倒れちまった。
魔力の使いすぎか。
くそっ!
今度、同じように囲まれたら終わりだ。
それから、残酷だが、ジェイプとフレッチは置いていくしかねぇ……。
残りのメンバーで、最後の一つまで行ってすぐに帰ってくれば、問題ねぇはずだ。
そう、問題は無い、そのはずだ……。
■月■日
最後の魔道具の場所まで来た。
俺を含めて三人、なんとか力を合わせて辿り着いた。
だけどよ、女神さま、それはあんまりだ、ひでぇなんてもんじゃねぇ。
いきなり現れた、あの猿みてぇな奴に、オーランとペンズがやられた。
一瞬だった。
木の槍で、あぁ、駄目だ!
思い出しちまった。
くそっ、くそっ!
《協会》から貰ったペンダントも落としちまった。
魔道具のところは猿が見張ってやがる。
俺は、どうしたらいいんだ……。
■月■日
魔獣どもが俺を探してやがる……。
おちおち寝ていられねぇ……。
魔獣と一緒に行動してるジェイプとフレッチの姿もあった……。
二人が無言でこっちを見つめてたときは、心臓が止まるかと思った……。
もう身体の半分以上が蔦に覆われて、俺のことも分からねぇみたいだ……。
休みも取れないせいか、身体が妙に熱い……。
死にたくねぇ……。
俺ひとりでも、生き延びる……。
まだ、シェーンは俺の顔も覚えちゃいねぇ。
アメリにだって、ようやくこれから楽させてやれるんだ。
■月■日
ジェイプは、もうダメだ……。
さっきみたとき、めのあなからきのえだがつきだしてた。
それでも、こっちをみてわらってた。
フレッチもくちからツタがはえてうめいてた。
……ふたりとも、もう、ニンゲンじゃねぇ。
それから、オレも……、か?
あしがあつくて、かゆくて、ガリガリとかいたら。
かわがめくれた。
木みたいになってやがった……。
もう、あしが、まるたにしかみえねぇ……。
これでぜんぜん、いたみさえかんじねぇ。
おわってる。
ははははは、くそがっ!
■月■日
だ めだ……。
お、おれ は ……。
こんな、から、からだ じゃ……。
かえれ ねぇ……。
あ め り……。
し ぇ ー ん……。
■月■日
(何か書かれているが判読できない)
◇◇◇
手記はここで終わっている。
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